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マジック・デッド・サーヴァント  作者: 浅咲夏茶
序章 魔力と謎の少女
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春の初めに

 二〇一七年、四月三日。クラス発表と入学式が行われる日が来た。


 電車には、酔うほどではない揺れがあった。シートベルトなんて無い訳だが、倒れることはない。それほど乗客者数が多いわけでもなければ、少ない訳でもない、普通の電車。


『次は、新潟、新潟で御座います――』


 そんな中、アナウンスが入った。次の停車駅は『新潟駅』ということを知らせるアナウンスだ。犯行予告の場所になったり、駅舎が大きく建て替えられたり、この百年間の間で、多くのことがこの駅で起こってきた。他市町村他都道府県からすれば興味のない話だが、現在の新潟駅の駅舎は三代目である。これは新潟市のシンボルである萬代橋と同じだ。


 その新潟駅で電車を乗り換え、松葉奏汰まつばかなたは白山駅へと向かった。白山駅は、奏汰の通っている高校の最寄り駅だ。と言っても、奏汰の通う高校までは徒歩でそこから七分程度掛かる。と言っても、話たりしていれば微小ながら掛かる時間は変わる。

 

 越後線に乗り換え、奏汰は白山駅で降りた。最寄り駅で降りないと、無駄に乗車賃を払わなければならず、自費で電車代を叩いている奏汰の身からすれば、それは結構家計に響いてくるような、重大な損失であるのだ。


「よう!」


 奏汰は白山駅の駅舎から出て、目の前の信号を渡ったところで友人の八条帆人はちじょうかいとと出会った。帆人の容姿は気持ち悪かったりはしない。しかし、帆人の趣味は『アニメ鑑賞』だとか『ゲームプレイ』であり、一言で言えば彼はヲタクである。

 また彼は、上越新幹線で東京に出向き、コミックマーケットや、その帰りに秋葉原に寄るなど、積極的に活動をしている。


「――俺って格好いいのかな?」

「いきなり友人に何を聞いてくるかと思えば、『格好いい』とかなんて下らない話かよ」

「下らないとはなんだ。俺は、凛音様を愛しているのにお前は妹ということで――」

「ああ、言っていたな……」


 ふっ、と馬鹿にするような笑みを奏汰は浮かべた。勿論、その笑みは真剣に話をしている帆人の身からすれば、自身の趣味を否定されていることにすぎない為、当然反論を行う。


「わ、笑うとは何事だ!」

「いや、笑うだろ普通。まあ、確かに凛音りおんは可愛いとは思うが……」

「それがまさかお前の妹だとは、俺も最初はわからなかったな……。凄いよ、本当」


 そうなのだ。奏汰の妹こそ、彼が言う『凛音』である。勿論、学業に支障を来すという理由から、名前には実名を使ってはいないが、『名前』と言っているくせにそれは『苗字』のみであり、凛音という名前は同じである。考えてみたら結構難しい話だ。

 理解するのに少々の時間がかかると思うが、それも慣れである。人間は慣れれば基本的には何でも熟すことが出来るものである。


「で、奏汰。お前、今日入学式だが……遅れるぞ」

「うっせえ。お前みたいなイケメンオタクとは違うからな。俺はこういう人間だからな」

「だから……?」

「別に少しくらい遅れても大丈夫だっていうかな……」


 奏汰はそう言った。だが、奏汰にも少しながら『遅れないでいたい』という気持ちはあった。一年間学級委員長をした奏汰からすれば、少しぐらいグレていたいとでも思ったのだろう。奏汰の表情には少しの笑みが浮かぶ。


「まあ、ヲタクだとかイケメンだとか、そんなのは関係ないんだよ。例えイケメンだとしても、それは顔だけかもしれない。お前は、心を磨けばいい」

「なんかイケメンのお前に言われると凄い腹がたってくるんだよなあ……帆人……?」

「そうか……そうか……って、お、おい、何をし……!」


 そう言う奏汰は、帆人の右手を掴んで言った。


「何もしねえよ。まあ、こんなところでウロウロして学校に遅れて、教師に叱られるのは御免だ。少しくらいの遅刻なら俺は乗るが、十分とかの遅刻とか言いだしたら……」

「アホか、俺だって遅刻なんかしたくねえよ。内申下げたくないしな」

「内申のためだけに、お前は……お前ってやつは……」


 そうやって会話をした後、奏汰と帆人は共に高校へと向かっていった。道中、ニコニコ動画でランキング上位に君臨していたボーカロイドアーティストの曲を言い合ったり、それこそ好きなスマートフォンゲームで『俺TUEE』的なことを言い合ったりして、奏汰と帆人は高校へと足を進めた。



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