施療神官の特技
ここに〈施療神官〉の使用する特技群より一部を抜粋して掲載する。名前のとおり癒しを専門とするクラスだけに回復・治療魔法のラインナップは他の追随を許さない充実振り。また守りだけではなく、強力な範囲魔法や接近戦用の特技もあり、攻防に活躍が期待できる。一方で素直な性能の特技がほとんどのため、一部の局地的な状況や、トリッキーな戦法を取るエネミーに対しては後手に回ってしまうことも。
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〈リアクティブヒール〉
回復魔法・反応起動回復_施療神官が初期から取得している回復魔法。〈ヒール〉のように即座にHPを回復するのではなく、ダメージを受けたことをトリガーとして発動するHP回復効果を付与するもので、反応起動回復と呼ばれ、施療神官の看板特技ともなっている。有効な回数やHP回復量は施療神官のレベルとスキルの熟練位階に依存するため、前線キャラにこれをあらかじめかけておき、それでもさらにHPが減るのならば〈ヒール〉などで集中的に追加回復する、といった動き(ヒールワーク)が基本である。HP回復時には、暖かな橙色の光のエフェクトが対象を包み込む。
〈ヒール〉
回復魔法_全ての回復職が初期取得している最も基本的なHP回復魔法。HP回復量そのものは多いが、詠唱時間がそこそこには長くMP消費効率も悪いため再生、障壁、反応起動といった職固有の回復魔法とくらべ、優先順位は低い。見た目の回復量の多さから初心者ほどこの魔法に頼りがちで、多用するヒーラーは二流三流と評されやすい。かといって全く使わないヒーラーもまた論外であり、的確な使い所を見極められるかどうかがヒーラーの技量の目安となる。使用時には自分の周囲にうっすらと暖かい光が浮かび、それが光の粒子となって対象に降り注ぐ。
〈キュア〉
回復魔法_味方1人の状態異常を解除する基本的な治癒魔法。消費MPが低いことと、状態異常であれば種類を問わずまとめて解除できることに利点があり、また特技の習熟段階を高めることで詠唱時間を短縮できるため、この魔法を鍛えて主力とするプレイヤーもそれなりにいる。薄青の光でヒールと同様のエフェクトが発生する。状態異常には個別にレベルが設定されており、その多くは状態異常の原因(それを仕掛けてきたモンスター)のレベルと等しい。〈キュア〉の等級が十分に上がっていない場合、自分のレベル-3程度までの状態異常しかなおせないため、パーティーでの戦闘などではお粗末な結果になってしまう。
〈ヒーリングライト〉
回復魔法_指先から発する六芒星状の白い光が傷を癒す。回復量は通常のヒール呪文に比べ小さいが、極少のヘイト、消費MPの少なさ、詠唱および再使用時間の短さから軽い傷の応急処置や、メインの回復手段との併用で回復量を補うためなど使用される場面は多い。また大規模戦闘など施療神官が複数いるような構成では、ヘイトを稼がずに盾役を回復させる手段として〈ヒーリングライト〉のシャワーが降り注ぐ場面も見られる。また高レベルのPCが、低レベルのPCへ通りがかりの応援として使用することもある。通称、ガンバレヒール、辻ヒールとも。
〈リアクティブエリアヒール〉
回復魔法・反応起動回復_広範囲を対象として、複数の味方にまとめて反応起動回復をかける上位魔法。一度に複数にかけられるため範囲攻撃のある敵との戦闘などで安定性が増す。便利な魔法だけに再使用時間は長く、連発できるものではない。エフェクトは〈リアクティブヒール〉と同様のものが表示される。
〈ヒーリングフォージ〉
攻撃技・回復技_癒しの力を解放しつつ、敵を攻撃する特技。武器での攻撃がヒットするとそこを中心に薄緑の光のリング(波紋)が広がり、それに触れた味方のHPを少量回復する。殴りビルドの施療神官は通常鎧を着込んで前衛で戦うため、他の戦士系職・武器攻撃職が近くにいることが多く、攻撃の手を緩めず戦線の維持も行うことのできるこの特技は使いやすいと評判である。ソロ殴り施療神官にも自己回復と攻撃が同時に行えるため人気。ただし攻撃そのものの威力には変化が無いため、(攻撃職などと比べれば)ダメージソースとしては心許ない。またヒール量も専用呪文に比べれば微々たるものである。ただし、攻撃速度上昇(=攻撃回数増加)で単位時間当たりのヒール量は増える。振り速度が速い武器が一時期大捜索された。ヒット時にハンマーで金属を殴ったような澄んだ音が響く。
〈ディバインマイト〉
攻撃補助技_癒しの力を破壊の力に変換する自己強化特技。ごく短時間、攻撃の威力が上昇する。上昇率は、特技の使用者が回復魔法を使用した際の回復量に比例する。武器や掌に回復魔法エフェクトと同色の輝きが収束する演出は人気がある。
〈ホーリーシールド〉
白兵攻撃技・盾専用技_盾専用技。手にした盾を太陽を思わせる輝きで包み、敵を殴打する。攻撃力自体は低めだが、相手の防御力を無視して貫通ダメージを与える特性があり、どんな強敵にも一定のダメージを与えることができるのが強み。また、基礎ダメージが盾の魔法防御力に比例しており、レイドなどで強力なレア盾を手にした場合には、下手に剣やメイスを持つよりも盾が武器として有効になってしまうこともある。弱点は、いうまでもないが白兵距離で敵に密接しなければ使用できないことだろう。
〈フェイスフルブレード〉
攻撃技・剣専用技_剣専用技。聖句を唱えて斬撃を繰り出す特技。使用時に特技アイコンを押し続けることで攻撃準備モーションのまま力を溜めることができ、剣が溜め時間に応じて白銀の輝きを帯びる。溜め時間の長さに応じて、ダメージと消費MPが増加する。最高段階まで溜めた場合のダメージは、武器攻撃職の一撃に迫るが、溜め時間と消費MPの関係から実戦でそうそう使えるものではなく、現実的には状況に合わせて調節しながら使うことになる。一般的には、ダメージの調節ができる利便性に評価の高い特技だが、その一方で、一撃必殺の夢に賭けるロマン派プレイヤーからの人気も高い。〈エルダー・テイル〉時代、溜めモーション中は腰をかがめて一切の身動きが出来なかったが、〈大災害〉後は僅かながら移動できるようになったため、練習する〈施療神官〉も多いようだ。
〈ホーリーヒット〉
攻撃補助魔法_武器に簡単な魔法をかけ、続く攻撃の命中率を高める。ごく簡単な詠唱と武器をかざす一動作で発動できるので、行動の合間合間にこまめに使用するタイプの特技。低コストで劇的な効果はないが、総合的な与ダメージには明確な差が出てくる。
〈ホーリーライト〉
攻撃魔法_かざした手(武器)から放たれる一条の白光で敵を討つ光輝属性の単体攻撃魔法。相手がアンデッドモンスターや邪毒属性のモンスターの場合、防御無視ダメージを与えられる。施療神官の最も基本的な攻撃魔法で、平均的でバランスの良い性能を持つ。
低レベルから使用可能だが順次高レベルなもの(〈ホーリーライトⅡ〉など)を習得できるので、高レベルでも利便性は低下しない。
高レベルアイテムの中には〈ホーリーライト〉の性能変化や強化するものも多く、〈ホーリーライト〉を中心にしたビルドの模索は盛んだった。
〈ジャッジメントレイ〉
攻撃魔法・必殺魔法_全身から発する聖なる光をかざした手に収束し、前方に撃ち出す光輝属性魔法。回復職としては破格のダメージに、白く輝く太いレーザー光線が敵を灼きつくすビジュアルもあいまって、施療神官の必殺魔法の一角を占める大技。光線発射時に向きを変えることで2~3体の敵を巻き込むことが可能で、プレイヤー間では「なぎ払い」というテクニックとして知られている。なお光線は敵にのみダメージを与えるので、範囲内に味方がいても問題ない。一方で消費MPは巨大で、レイドなどの実用性は皆無という評価もある。
〈リザレクション〉
回復魔法・蘇生_全ての回復職が低レベルで取得する基本的な蘇生魔法。HPが0となり倒れた味方が、完全に死亡して大神殿に送られる前であれば復活させることができる。とはいえ詠唱時間が長く、消費MPも多く、対象に接触しなければ使えないため、戦闘中での使用は非常に難易度が高い。さらにレベル16に達すると同時に3職固有の上位蘇生魔法を習得するのだが、それらの再使用時間とタイマーを共有しているため、実質的に使用する機会がなくなる。このため実際の使用期間は驚くほど短く、一度も使用したことがないプレイヤーも少なくないようだ。
〈ソウルリヴァイヴ〉
回復魔法・蘇生_施療神官固有の上位蘇生魔法。〈リザレクション〉と基本的な性能は似通っているが、詠唱が高速化され、射程も延長がされている。また、復活時に回復するHPが大幅に増加しており、戦闘中の蘇生がやりやすくなっている。崩れた戦線の建て直しには必須といってもよいだろう。習熟度上昇により再使用時間が短縮されるため、レイド参加者など蘇生機会の多い回復職からの〈熟練の巻物:奥伝〉の需要は高く、価格も高騰傾向にある。
〈オーロラヒール〉
回復魔法・必殺魔法_〈エリアヒール〉よりもさらに広い範囲を回復する極大回復魔法。周囲一帯が七色のオーロラに包まれる。特にレイドにおいて、数十人単位であってもHPをまとめて回復できるのは状況の建て直しに多大な効果を発揮するが、ヘイトの稼ぎ方も並ではないため、扱いには注意が必要。施療神官にのみ許された切り札だが、再使用規制時間も長く、連発は出来ない。また、位置取りで中心近くに行く必要があり、重装可能な施療神官でなければ使いこなせないとも言える。
〈サンクチュアリ〉
防御補助魔法_自身の周囲に方陣を展開し、聖域と化す防御魔法。方陣内にいる仲間の物理・魔法防御力を引き上げる。術者は方陣を維持している間は移動を一切行えないため、施療神官を中心とした隊形を組む形で運用される。
〈セイクリッドウォール〉
防御魔法・必殺魔法_指定した仲間に白い光のドーム状の防護壁が形成され、ごく短時間の間ではあるが、あらゆるダメージを軽減してくれる。軽減量は施療神官の魔力ステータスに依存するため、レベル上昇のほか、魔力をブーストする装備などで強化できる。再使用規制時間は長く乱発は出来ない決め技の一つ。
〈エナジープロテクション〉
防御魔法_周囲の味方に特定属性ダメージを軽減するオーラを付与する強力な支援魔法。オーラの色は属性によって変わる(火炎なら赤、冷気なら青など)。持続時間は5分のため、パーティー活動時は定期的に掛け替えることになる。特定属性の攻撃をしてくる敵との戦闘、属性ダメージを与える罠が設置された通路などの踏破など、用途も幅広い。
〈アージェントシャイン〉
攻撃魔法・状態異常攻撃_美しくも儚い白銀の輝きが敵を包み込んでダメージを与える光輝属性の単体攻撃魔法。妙に凝った攻撃エフェクトが特徴で、見た目重視のプレイヤーに人気。演出の派手さに反してダメージは低いが、敵を一時的に盲目状態とすることで攻撃の命中率を低下させられる。「神聖目つぶし」「女神様を見てしまって目がー目がー」などのネタも生み出した。
〈イセリアルチャント/天使のささやき〉
攻撃魔法・回復魔法・必殺魔法・上級特技_祈りをささげると、円形の範囲に天からきらきらと輝きながら無数の羽毛が舞い散る。この羽毛は使用者の敵にはダメージを与え、味方にはHPを回復する効果がある。攻撃と回復を兼用するきわめて強力な魔法で、乱戦を行っている前衛の援護には最適だが、効果相応にコストも重く、再使用規制時間は長い。
〈バグスライト〉
その他・補助魔法・召喚_全ての回復職が共通で習得できる照明魔法。蛍の幻獣バグスライトを召喚し、周囲を明るく照らす。幻獣を召喚するとはあるが効果はごくごく単純で、光量調節なども効かない。
〈ディバインフェイバー〉
回復魔法_自分に効果を及ぼしているバッドステータスを一時的に解除する特技。この一時的というのが曲者で、バッドステータスは消滅するわけではなく数十秒後に再び効果を発揮し始めるという、いわば「被害の先送り」を行なう特技。とはいえ回復役がバッドステータスを受けてしまえばそれを回復する手段はごく限られてしまううえ、行動を妨げられることはパーティ全体の危険度を上昇させることと同義である。そのため緊急回避手段としてこの特技を重視するヒーラーは少なくない。その時点で受けているバッドステータスのうち最新のもののエフェクトを逆回しにして消滅するような演出が表示される。
〈パラベラム〉
その他・補助魔法・必殺魔法・上級特技_対象を心身ともに最善の状態まで回復させる特技。対象の特技の再使用規制時間判定タイマーの速度を20%~100%加速する。非常に強力な効果だが、この特技そのものの再使用規制時間(24時間)には無効。発動時に橙色っぽい光の流れが使用者を中心に渦巻くようなエフェクト発生。
〈ヘヴンズロウ〉
防御魔法・必殺魔法・上級特技_天上から降り注ぐ光輝の力で敵の攻撃を相殺し、繰り出される攻撃のダメージを大幅にダウンさせる。敵の攻撃そのものを弱体化させることで範囲攻撃などの被害をまとめて軽減できるため、強力な範囲攻撃を持つボスモンスターとの戦いなどで劇的な効果を発揮する。とはいえ再使用時間は長く、またダメージを減少させる効果の時間も短い。使用時は対象に上空から光の柱が降りてきた後、拘束するように赤く明滅する光の鎖が敵に巻きつく。
〈シンボル・オブ・サクラメント〉
防御魔法・必殺魔法・上級特技_保護の奇跡を表わす複雑な光の紋様が自分を中心とした足元に浮かぶ。紋様は光の粒子となってすぐに消えるが、光の粒はそのまま自分と仲間たちにまとわりつき、降りかかるあらゆる災厄から仲間の心身を守る。効果時間3分に対して再使用時間は24時間と極めて長いが、一切の状態異常を受けなくなる強力な防御系の必殺魔法。
〈デボーション〉
防御魔法_あらかじめ指定した仲間がダメージを受けた際に、それを自分に移し変える。回復職の中でも重装可能で耐久力に優れる施療神官を予備の盾役として運用する手法を補助する特殊な防御魔法。移し替えるとき、本来効果を発揮するはずだった追加効果は無効化されるが、ダメージそのものは一切軽減されないため、うかつな使用は自身の危機に直結する。仲間がダメージを受けた瞬間、ダメージエフェクトなどが消滅し、かわりに施療神官に対してダメージエフェクトなどが現れる。
〈グレイスフルガーデン〉
回復補助魔法・トグル型・上級特技_自分を中心とした広い範囲に金色に輝く円形の結界を展開し、範囲内の仲間に対する〈リアクティブヒール〉の効果を上昇させる特技。そのブーストは凄まじく、展開しておけば〈リアクティブヒール〉だけで戦線を維持できる場面も数多い。結界のオン・オフは任意に切り替えられるが、展開中には〈リアクティブヒール〉の更新以外で、魔法や攻撃特技を使った場合、効果が自動的に終了してしまう(通常攻撃や移動は可能)。拡張パックで追加された特技で、当初はいま以上のブースト効果を誇り、難関クエストに誘われる回復職が施療神官ばかりになってしまうという現象が発生したこともあって弱体化されてしまった。当の施療神官プレイヤーからも(他の行動がとれないため)ヒールBOTガーデンと揶揄されており、効果の高さの割に好んで使用する者は少ない。