妖術師の特技
ここには〈妖術師〉の特技より特徴的なものを抜粋してみた。魔法火力職の代表ともいえるだけあり、その特技の多くが攻撃、もしくは攻撃補助を担っている。また、意外にも高性能な味方支援能力も備えており、パーティにおける火力を更に一枚も二枚も上乗せすることだろう。しかし、その高すぎる火力に相反するように防御力は低く、HPも決して高くはない。味方と連携し、思考を常に冷静に保ちここぞというときに徹底した火力を叩きこむのがクレバーな〈妖術師〉といえよう。
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◆妖術師の特技
〈オーブ・オブ・ラーヴァ〉
攻撃魔法_握りこぶし大の溶岩の塊を作り出し、敵集団に撃ち込む火炎属性の範囲攻撃魔法。溶岩塊は敵の間を自在に飛び回って次々にダメージを与える。高温の溶岩は火炎を弱点とする敵には特に効果が高い。範囲魔法だが、その特性上味方を避けるために使いやすく、人気が高い。
〈フレアアロー〉
攻撃魔法_炎の矢を撃ち込む火炎属性の単体攻撃魔法。対象がバッドステータスを受けていると、炎の矢から小さな矢が生まれ、追加ダメージを与えるようになる。複数種類のバッドステータスを受けているとそれだけたくさんの炎の矢が降り注ぐ仕様のため、他メンバーとの連携でかなりの火力を発揮できるようになる。習熟位階を上げることで追加ダメージを与える矢の発生数が増加する。
〈フロストスピア〉
攻撃魔法・状態異常_巨大な氷柱を生み出して敵単体に突き刺す冷気属性の単体攻撃魔法。命中した敵は低温による行動阻害のバッドステータスを受けるため、前衛の安全性も上がるという副次効果がある。妖術師の呪文の中では、ダメージ量、詠唱時間、再使用規制時間、敵の足止め効果などのバランスがよく主軸に据えるプレイヤーも多い。そのため、奥伝以上の巻物はかなりの値段をつける。
〈フリージングライナー〉
攻撃魔法・行動阻害_なだれうつ冷気の奔流を直線状に解き放ち、敵を押し流す冷気属性の範囲攻撃魔法。威力の高さと同時に特徴的なのが、直線的な効果範囲と「範囲内の敵を“下流”に押し流す」という特性である。これにより近寄ってきた敵を遠くへ追いやったり、前衛のいる方向に強制的に移動させたりと、応用範囲が広い。またバリエーションとして火炎属性の〈ブレイジングライナー〉が存在している。
狭い通路に誘い込んだ敵の集団を、複数の妖術師で何度も押し流し殲滅する戦法は通称「水洗トイレ」と呼ばれ(〈ブレイジングライナー〉が混ざる場合は温水便座とも)、色物的ながらも安定性は高い。
〈サーペントボルト〉
攻撃魔法_青紫の雷の束を撃ち出す電撃属性の攻撃魔法。単体攻撃魔法なのだが、標的の周囲に他の敵がいた場合は雷が分裂し、近隣の敵にもダメージを与える擬似的な範囲魔法ともいえる仕様となっている。再利用規制時間はいささか長いが詠唱時間は短く、いわゆる「出の早い」魔法であり、中級者の人気は高い。
〈ライトニングチャンバー〉
攻撃魔法_電撃属性の単体攻撃魔法。青紫色の輝きを放つまばゆい電光が五芒星を描き、敵を内部にとらえたのち、幾条にも分散した電撃が天地を往復して絶大なダメージを与える。〈妖術師〉の呪文の中でも威力はトップクラスであり、エフェクトにも相当に気合が入っている。再使用規制時間が長くヘイトも大きく稼いでしまうため、早く始末したい危険な敵をピンポイントで狙って倒すような使い方が主流。習熟位階を高めることで再使用規制時間を大幅に短縮できる(ヘイトやMPはまったく軽減されない)ため、鍛えて連発する超攻撃的スタイルの妖術師もいる。
〈ライトニングネビュラ〉
攻撃魔法_電撃属性の広範囲攻撃魔法。青紫色の輝きを放つまばゆい電光が、目標を中心とした広い範囲にのたうち、星雲を思わせる輝きで範囲内の敵を撃つ。広い範囲と高めの威力、敵を短時間麻痺させる追加効果と、面での制圧を得意とする〈妖術師〉の戦闘を体現するかのような特技で、見た目の派手さもあって人気があるが、〈妖術師〉最大の欠点であるMP消費の激しさも体現しており、連発できるような呪文ではない。
〈ディスインテグレイト〉
攻撃魔法_指先から白く輝く物質分解光線を放つ単体攻撃魔法。ダメージは皆無だが命中した相手のHP残量に応じて即死判定が行なわれる。これはレベル差を問わず発生するため、同格や格上の敵相手でも即死させる確率が存在する。とはいえそういった相手は相応に高いHPを持っているため、即死に持ち込むためには瀕死の状態まで追い込まなければならないだろう。また、物体に対する高い攻撃力も持ち、城壁などに照射すればガリガリと耐久力を削ってくれる。この際にも即死(?)判定は発生するため、構造物破壊が必要なコンテンツで重宝される魔法である。
〈デスクラウド〉
攻撃魔法_目標を中心とした広い範囲に、紫色がかった毒霧を発生させる。術者の仲間にはなんの害も及ぼさないが、敵のHPを徐々に失わせ、さらに攻撃の命中率を下げる。〈妖術師〉より著しくレベルの低い敵には即死判定があり、密集した所にこの特技を使うと毒霧の中でバタバタと敵が倒れる様から、日本人プレイヤーには「蚊取り線香」「バルサン」などの愛称で親しまれている。虫型のエネミーによく効くわけではない。
〈インフェルノストライク〉
白兵攻撃技_自分の武器に火炎魔法をかけ、炎をまとわせた武器で直接攻撃する魔法と武器攻撃の合わせ技。攻撃がヒットすると、対象を中心に小さな爆炎のエフェクトが発生し、これに触れた敵は一定時間、炎による継続ダメージを受ける。威力は高いが白兵攻撃に分類されるため、使用時は必然的に敵に密着することになる。装甲の薄い魔法攻撃職が近接攻撃を行うリスクは大きい。それだけに使いどころの見極めと、思い切りが要求される特技といえる。
魔法職には珍しいこれらの白兵戦用の特技を軸にした異色のビルドも存在し、「魔法剣士」「マジックナイト」などと呼ばれている。
〈アイシクルインペール〉
白兵攻撃技_自分の武器に冷気魔法をかけ、全身に青いエフェクトの冷気をまとって突撃する魔法と武器攻撃の合わせ技。攻撃命中後も冷気は一定時間使用者を包むように残り続け、攻撃回避率を上昇させる。〈インフェルノストライク〉や〈サンダーボルトクラッシュ〉と同じく白兵戦用の特技。回避率の上昇効果を生かし、敵の大技に備えて緊急回避的な使用をされることもある。
〈サンダーボルトクラッシュ〉
白兵攻撃技_自分の武器に電撃魔法をかけ、電光をまとわせた武器で直接攻撃する魔法と武器の合わせ技。火力はそこそこ止まりだが、ヒットさせた敵にも電光のエフェクトが走り、一定時間痺れさせることができる。痺れている間に攻撃するとクリティカル率が大幅に上昇する効果があり、味方の攻撃の直前に当てることで有効な援護となる。
〈ラティスシンタックス〉
攻撃補助魔法・必殺技_次に使う範囲魔法攻撃の効果範囲をさらに大きく広げる自己強化魔法。使用すると足元に浮かんだ魔法陣が術者の周囲に複製展開され、足元を含めて格子立体状に魔法陣が描かれる。系統上位特技になるにつれ、拡大される効果範囲は更に広がり、射程距離も徐々に延長される。再使用時間が15分以上あるので使うチャンスは少ないが、標的の数が多いレイドコンテンツなどで、複数の妖術師が魔法陣を同時展開し、周囲の雑魚を一気に焼き払う光景は壮観である。
〈ラミネーションシンタックス〉
攻撃補助魔法・必殺技_次に使う単体用の攻撃魔法の効果を拡大し、範囲攻撃化する積層魔法陣を展開する自己強化魔法。系統上位特技になるにつれ範囲が徐々に広がり、90レベル時には5体以上を巻き込むことが可能となる。範囲化することで20%ほどの威力減衰が発生するが、単体魔法は高威力なものが多いため減衰してもなお充分な威力を発揮する。さらに習熟位階の上昇で威力減衰は軽減されるため熟練の巻物を求める妖術師は多い。使用すると足元に浮かんだ魔法陣が縦方向に複製展開され、術者を中心にした柱状になったあと、青い光となって飛び散る。
〈スペルマキシマイズ〉
攻撃補助技・トグル式_呪文強化を行うトグル式の特技。有効にしている間は、攻撃魔法の消費MPが2倍になるかわりに威力が1.5倍程度に強化される。MPの使用効率を考えると、同じ魔法を2回使った方が良い計算だが、詠唱時間のロスを加味すると短時間での殲滅力はこの特技を用いたほうが高い。すべての職業の中で最大の魔法火力を有する〈妖術師〉ならではの特技だが、当然濫用するとすぐにMP切れに追い込まれる。
初心者の〈妖術師〉は、とにかくダメージを出そうとして常にこの特技を有効にしていた結果、戦闘の序盤でMPが足りなくなる、という事態が発生しがちなこともあり、先輩プレイヤーはまずこの特技の使いどころから教えることが多い。有効にしている間は、頭上にきらめく魔力を放つオーブのエフェクトが表示される。
そもそも妖術師は12職の中でも燃費はさほど良い方ではなく、本気で大型魔法を連打すれば、3~4分、〈スペルマキシマイズ〉を常時有効にした場合は2分足らずで全てのMPを使いきってしまう。戦闘終結までの時間と、MP残量を見極めながら使う必要がある繊細な特技であり、的確に使いこなせるかどうかに妖術師の技量の差が顕著に出る。
〈ロバストバッテリー〉
攻撃補助技_魔力を溜めることで自らの魔法威力を強化する補助特技。発動すると頭上にカウントが出現し、徐々に減少していく。このカウントが0になるまでに使用した呪文はカウントの残りに応じて威力が上昇する(少ないほど上昇率が高い)が、カウントがでている間に移動をした場合、特技はキャンセルされてしまう。
〈スペルマキシマイズ〉との併用も可能で、ダメージ増幅が二重に載った呪文の威力は他の追随を許さないが、敵の注意もその分多く引いてしまうため、移動できないところに敵が殺到する可能性をはらんだリスキーな特技でもある。カウントの数字は残り時間に応じて青→緑→黄→橙→赤と色が変化する。
〈エナジーウェポン〉
攻撃補助魔法_味方1人の武器に魔法をかけ、攻撃によるダメージに、火炎、冷気、電撃などの属性を付与する補助魔法。これによって、特定の属性が弱点になっている敵へのダメージが大幅に増す。効果時間中は、かけられた側がバフ表示アイコンをクリックすることで属性を変更することができ、臨機応変な対応も可能になっている。使用すると、武器が指定した属性のエフェクトをまとうようになる。弓に掛けた場合は放つ矢にもエフェクトがかかる。属性とかける武器によって、〈アイシクルブレイド〉〈フレイミングアックス〉などの異称がある。
〈エンハンスコード〉
攻撃補助魔法_自分自身の魔力を強化し、効果時間中に唱える魔法のダメージを増加させる魔法職の基本的な補助魔法。この特技の系統が上位になるとダメージ増加量が、熟練位階が上がると効果時間が伸びてゆく。火力を求められる魔法職には非常に良くかみ合った特技と言えるが、ダメージが上がるということは敵の注意が自分に向く可能性が高くなっているということでもあり、味方の戦士職との連携に注意を払う必要がある。出が早く詠唱時間は1秒、その後7秒程度はダメージ効率が+10%程度上昇。魔法詠唱のループにこの〈エンハンスコード〉を混ぜた独自のセットを構築するのが、中級妖術師のテーマとなる。効果時間中、銀色に輝くルーン文字が使用者の周りを旋回するエフェクトが発生する。
〈クローズバースト〉
攻撃補助技・トグル型_必要に応じてオン・オフを切り替えるトグル型特技。魔力を自分の目の前に一点集中させることで、射程距離を犠牲に威力を大幅に高める。有効にしている間は、魔法の射程が大きく減少し、白兵攻撃の届く程度の距離の目標しか狙えなくなってしまうが、ダメージが大幅に増加する。HPや防御力に劣る魔法職が敵の前に立たねばならないため、使いこなすのは非常に難しく、この特技を生かすためのビルドがプレイヤー間で考案され続けている。有効にしている間は、足元に複雑な紋様の刻まれた白い魔方陣が出現する。
〈フォースシールド〉
防御魔法_魔力で力場の盾を生成し、自分自身の防御力を一時的に高める魔法。物理・魔法双方に効果のある便利な特技で、特に盾や鎧を装備できない魔法職が防御力を上昇させる方法を考える時、最初の候補に挙がる。この特技の系統が上位になると防御力の上昇効果が、熟練位階が上がると持続時間が伸びてゆく。上昇する防御力は魔術職にとっては瞠目するほどだが、戦士職から見ればまったくささいでもある。使用すると、緑色に輝く力場の盾が使用者に重なるエフェクトが浮かび上がる。
〈マジックトーチ〉
その他の魔法_オレンジがかったゆらめく魔法の明かりを呼び出し、あたりを照らす魔法。ゲーム時代から一部のダンジョンには明度が設定されており、魔法またはアイテムで照らし出さないと隅々までMAPが表示されなかった。〈大災害〉後は昼夜ができたこともあり、このような照明魔法の需要は高まっている。
〈ブリンク〉
移動魔法_自分用の瞬間転移魔法。数m以内のランダムな場所に転移することができ、系統上位特技で移動限界距離が少しずつ伸びる。この移動により、ゲーム時代は視覚に頼ったモンスターのヘイトを引き下げられるという効果があった。移動先の方向はおおむね指示が出来るが習熟位階が低い場合はランダムで誤差が出てしまうため、拡張パックなどで新規導入されたばかりのゾーンなどで使うと、デバッグ不足により「壁や床にめりこんで動けなくなる」ような事故が多発することが知られており、〈大災害〉後は恐ろしくて使えないというプレイヤーもいる。
〈ドレッドウェポン〉
攻撃補助魔法_味方1人の武器に魔法をかけ、威力強化と邪毒属性の追加を行う補助魔法。これをかけた武器には、ブスブスと黒い瘴気を放つエフェクトが付与される。〈エナジーウェポン〉のように、途中で属性を変えるようなことはできないが、追加ダメージおよびヒットした敵を一定確率で毒状態にする効果があり、コストパフォーマンスの良さはこちらに軍配が上がる。
〈ルークスライダー〉
移動魔法_短距離を一瞬で移動できる転移呪文。ただし一直線にしか移動先を指定できない(間に壁や障害物がある場合は通過できない)。効果が不安定な〈ブリンク〉と違って指定した地点に確実に移動できるため、戦術に組み込みやすい。使用すると、自分を中心に回転・伸縮可能な地点指定カーソルが出現し、画面上で地点を指定してクリックすることで転移が行われる。ただし連射できるような呪文ではないので、戦闘時に使うのはなかなか度胸が必要だ。
〈シンギュラリティ〉
攻撃補助魔法・必殺技・上級特技_特異点を発生させ、事象やその発生確率を歪める魔法。直後に使用する攻撃魔法に対して敵の魔法防御力や無効化能力を無視して直撃させる強力な補助魔法。具体的には、敵はこの魔法に対して魔法的な防御能力を使用することが出来なくなる。レベルによるダメージ減少も無効化するため、レイドボスへの効果は大きい。使用時には自分の周囲の空間が歪むようなエフェクトが発生。その後の魔法攻撃でも、魔法のエフェクトが発生する直前に、目標を中心に空間が歪み収束するような演出が発生する。再使用時間は1時間と長大。
〈エナジーフラクション〉
攻撃補助魔法・上級特技_使用後30秒間、魔法攻撃の属性を対象の弱点(最もダメージが高くなる)属性に自動的に変更する補助特技。使用すると術者の周囲に炎、氷、雷の3つのアイコンが浮かび、グルグルと一つの円を描くように動く。どの魔法を使っても最大効率の属性に変化させてくれるため便利ではあるのだが、そもそも敵の弱点を知悉していれば恩恵は薄く、余計なヘイトを稼ぐ結果にもなりうる。だが、追加効果をメインに考えた場合、魔法の属性に関わらず必要なバッドステータスを付与させられるようになるこの特技の重要性は非常に高い。使い手のスタイルで用途ががらりと変わる特技といえるだろう。追加拡張パックで実装されたために、習得するためにはレベル80が必要となる。