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ユウナは遊園地をナメていた。いつ不測の事態が起きるかわからない登山などとは違い遊園地はいくらスリルのあるものでも基本的に安全に作られていると思っていた。
しかし、ここは異世界の一人遊園地。今までは食事も豪華ですごく楽しかったけど、これからもこの状態が続くとは限らない。例え今までと同じだとしてもずっと毎日こんな生活が続くのかと思うと闇に飲み込まれたような気分だった。あたりの静けさを痛いほど感じる。
高い塀は登れそうにない。最悪、海を泳いで行けば、元の世界に帰ることができるだろうか?
そんなことを考えながら海の方まで歩いて来た。
(もう疲れた。あのイスの所で休もう)
そう思いながらイスの近くまで来ると、その隣のテーブルにはビンが載っていた。そう、あの砂浜で金のチケットを手に入れた時と同じビンだ。
ユウナはバッグからメモ帳とボールペンを取り出し、メモ帳に今までのいきさつを書いて海に流そうと思いついた。
ところが、いきさつを書いたメモ帳の紙をビンに入れようとしても見えない力が働くのかビンに入れることは不可能だった。
その時、ユウナはひらめいた。遊園地の入場で使った金のチケットをビンに入れてみる。すっと入って行った。
ユウナはこれは掛けだと思いながらビンの蓋をしめ、海に向かって思い切り投げた。
するとビンが遠ざかるにつれ周囲がどんどん騒がしくなってきて、子供達や家族連れで賑わう普通の遊園地になった。
観覧車が全てのゴンドラに人を複数乗せて、ゆっくりと回っているのを見たら目頭がジィーンと熱くなった。涙は出なかったけど。
帰りの出口はあっけなく見つかった。