悪夢の後で
殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる殺してやる……!
絶対に許さない絶対に許さない絶対に許さない……!
何年かかっても必ず復讐してやる!
あの人のことを虫けらとしか思ってないクズを地獄に送ってやる。
待っていろ……
「ぎゃあああああぁぁぁぁぁ!」
俺はベッドから跳ね起きた。
額に冷や汗が流れる。
息が上がり、心臓が激しく動いていた。
「なんだ……今の……?」
さっきまで見ていた夢の内容を思い出そうとするが、思い出せない。
誰かの悪意を感じた。それも生半可なものではなく、純粋なる悪意だ。
「どうした……?」
二段ベッドの上の階から栗壺が眠そうな声で訊いてくる。
時計を見ると、時刻は午前四時。
窓から見える空はまだ薄暗い。
「なあ、栗壺……すっげえ怖い夢みた……」
「へえー、そうかー、おやすみー」
「聞いてよ。 俺の話聞いてよ……」
「後二時間寝かせてくれ……」
「わかった! 二時間だぞ⁉ 二時間経ったら起こすからな!」
「おい、聞いてるのか⁉ 起きろよ⁉」
「栗壺⁉」
俺は必死に叫ぶがなかなか返事をしない。
「わかったから、静かにしてくれ」
その声に安心して俺も黙る。
結局、一人で起きてるのも恐ろしかったので布団に包まっていた。
(あの夢、本当になんだったんだ?)
覚えているのは恐怖だけ。
体が縮み上がる程の殺気。
思い出すだけで体が硬直する。
(そろそろ六時か……)
栗壺を起こそうと思い俺は立ち上がった。
「栗壺ー?」
揺さぶるも起きる様子がない。なんで?
「おい!」
耳元で叫んでも栗壺は目を開かない。
完全に寝ている。
「マジすか……」
そうだ、談話室に行けば誰かいるかもしれない。
外に出るのは怖いが誰かと会いたい。
俺は着替えて部屋を出た。
誰もいない。
今日は休日。
みんな今頃ベッドの中でスヤスヤだろうか。
だが、少し歩いたことで体が良い感じにほぐれた。恐怖も薄れた。
「はあー……」
ため息をつくと俺の声が誰もいない部屋に反響する。
「元気なさそうだな、どうした?」
「ぎゃあああ!」
後ろから突然声を掛けられ驚いてしまう。
「そ、そんなに大げさに反応するなっ!」
振り向くと茜原が困った様に笑っていた。
「あ、茜原か」
「修介、おはよう。 いい朝だな」
「おはよう、陰鬱な朝だな」
「む、なんだそれは。 清々しい朝だろう」
唇を尖らせ言ってくる。
「今日はちょっと夢見が悪くてな」
「対抗戦の疲れもあるのだろう。どうだ? 今日は気分転換にどこか行こうではないか」
「どこかって、どこ?」
「あ、遊びに行ったり……だな」
確かに遊べば怖い夢も忘れられるかもな。
「よし、行くか!」
「遊びに行くだと?」
零崎が不機嫌そうに俺に訊く。
「いや、お前どうせ暇だろ?」
「うるせえよ! 大体、遊ぶなんざくだんねえ」
「恐いのかい?」
「恐かねえよ!……いいか、テメェと俺はライバルだ。 馴れ合いはしねえ」
鋭く睨んでくる。
「ライバルって……」
「そういう訳だ。 他を当たれ」
そうして零崎は行ってしまった。
「なぜ零崎を誘ったのだ?」
「いや、人数多い方がいいかなーって」
「ふむ、だがまあ、二人で行く事になりそうだな」
「ま、いいか」
「ショッピングモールでも行くか」
「しょっぴんぐもーる? なんだそれは?」
「知らないのかよ! 天学の近くにあるでっかい店だよ」
「そうなのか…… あまりそういう知識はなくてな」
「茜原ってもしかしてお嬢様?」
「そんなことはないぞ?」
「回転寿司って知ってる?」
「寿司が回るのか?」
あ、お嬢様だわ。
「ま、いいや。案内する。さあ行こうぜ」
「すまない。 お願いする」
茜原はすまなさそうに言う。
二人でバスに乗って学園の外にでる。天学の周りには結構な広さの店が並んでいるがこれから行くところはかなり遠いながらも一番人気のショッピングモールだ。
学園の授業後に行くには時間がかかりすぎてしまうが休日の朝早くに行けば余裕だ。
「修介はこの学園に来るまでどこにいたんだ?」
バスの中で茜原が訊いてくる。
「じいちゃんの家にいたんだ。 アビリティー検査で適性ありの判断を受けたから天学を受験した」
「そうか、お祖父様からはなにも言われなかったのか?」
「あー、じいちゃんは俺のしたいように生きろって、遺言で」
「そうなのか……すまない」
「いや、気にしないでくれよ」
しばし沈黙が続きなんとも言えない空気だ。
「茜原はどの店に行きたい?」
「? もう行くところは決まったのではないのか?」
首を傾げながらそんなことを言う。
「いろんな店が集まってるところに行くんだ」
「そうなのか、それは凄いな」
そうこうしているうちにバスは着いた様だ。