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雨上がりの君

雨があがったのだろうか?

窓を打つ音が止んだ。

雨音はすっかり勢いをなくしている。

空は暗雲としていて気分が暗くなる。

今日は学園の入学式だと言うのに。

春なのにうすら寒い講堂で待たされている。




俺、藤代修介はこの春から天世国際学園に通うことになった。

天世国際学園、略して天学。

天学ではアビリティー保有者の育成に力を入れている。

アビリティー保有者とは不思議な力、ウィザードアビリティーを持つ者のことだ。

アビリティー保有者には通常固有の超能力が備わっている。その超能力を剣に変える技術を開発したのが天学の学園長、魔技野祥子。

アビリティー保有者が疎まれもせずに生きてこれたのはこの人のおかげだ。

その昔、世界各地に謎の怪物が現れた。

なす術なくやられていく人たち。

そんな中、学園長率いるアビリティー保有者たちが怪物をサクッと倒して平和になってめでたしめでたしってわけだ。

で、今に至る。




前の生徒が少しずつだが減っていく。

今は俺たちのアビリティーを先生が確かめている。

保有者言っても俺たちは適性ありと判断されただけでまだどんな力があるのかは分からない。

また、剣の形状もこれからわかる。

まあ、いろいろと楽しみではあるな。

自分の番号が呼ばれるまで少しぶらぶらすることにした。

講堂を抜け出し適当に歩き回る。

「おい、お前!」

後ろから女の子の声がした。

振り向くと赤いロングの髪をポニーテールにした少女が腰に手を当ててこちらを見ていた。

「濡れた靴で歩き回るなっ、ちゃんと出口に雑巾があっただろ!」

そう言えばあったような気もする。

後ろを振り返ると足跡が綺麗な床を蹂躙していた。

「あっと、悪い。気がつかなかった」

素直に謝る。

「いいからさっさと靴をふけっ」

少女が雑巾を差し出してくれる。

「ありがとう、使わせてもらう」

雑巾を受け取り靴を拭う。

「君も一年生?」

「うん、茜原紅葉だ」

少女は手を差し出してくる。

「俺は藤代修介、よろしく頼む」

握手をしようとすると手を引っ込められた。

「ぞ、雑巾を返せっ!」

ああなに手を握ろうとしたわけじゃないのね……

やだ、俺バカみたい。

「まったくっ!手を握ろうとするなんて不健全だ!破廉恥だ!」

「ええー、そこまで言わなくても……」

「それはともかく、お前はもうアビリティーの確認終わったのか?」

「ああ、俺はまだなんだ」

「なんでぶらぶらしてるんだっ、不真面目だなっ」

「いや、結構時間があるんだよ」

「そうなのか? わたしはもう終えだぞ」

茜原は胸を張る。

「どんなのだった?」

「ふふん、聞いて驚け!なんと炎を操る能力だ!」

バーンっと効果音が見えた気がした。

炎といえば中々レアな力だ。

剣との相性も抜群だし、最前線で戦える。

「茜原が最前線で戦うのはよしたほうが……

茜原は女の子なんだし危ないことはやめておいた方がいいと思う」

「お前、わたしを誰だと思ってる!」

何をおっしゃっているのかこのアマは。

「か弱い女の子なんだからさ」

「わたしは戦闘スキルBランクだ!」

「マジかよ⁉」

ちなみに俺はN。

比べるのも笑える差だ。

「まったく、失礼な奴め」

「ははあ、すみませんでした」

「おいおい、頭を下げるな」

慌てたように言う。

「一緒のクラスになれたらいいな」

「ふぇっ⁉ そ、そうだな。お前は見所がある」

しかしまだ俺の番号は呼ばれないのか。

「うん? 騒がしいな」

茜原が雨上がりの校庭を見る。

そこではケンカが行われていた。

一人の男子を数人の男子が取り囲んでいる。

「ケンカだとー! 入学式から何をやっているんだ!」

茜原が憤慨している。

「ええい、止めてやる!」

「まあ、待て」

飛び出そうとする茜原を手で制する。

「修介! お前見過ごす気か!」

この娘は責任感が強いようだ。

「女の子はケンカなんかするもんじゃありません!」

俺はそう言い残しケンカの仲裁に入った。




三分くらいでやられた。

痛い……痛いよママ……

だが、俺が入っていったことで奴らは一気に冷めたらしく俺に唾を吐いて帰っていった。

俺はその場にへたり込んだ。

「はぁはぁ……なんだお前」

俺が助けた破天荒ボーイはなかなかの男前だった。

「困っている君を助けにきたエンジェルさ」

「うぜえ」

「余計なこと、しちゃった?」

「そうだな、余計だ」

なんか殴られ損だなあ……

「今度は手出ししないよ」

「そうしてくれ」

破天荒ボーイはぶっきらぼうに答える。

「俺は藤代修介、お前は?」

「零崎彼方……」

零崎はそう言うと立ち上がった。

「ありがとな……」

そして去っていった。

「シャイボーイだねえ」

なんだか笑えた。

「修介!大丈夫か?」

「おう、茜原。これくらい大丈夫だ」

俺を心配してくれているのか絆創膏を怪我した腕に貼ってくれた。

「わたしも助太刀しようと思ったんだがお前がすぐにやられてしまってな。あいつらもその後帰っていったからお前を助けることができなかった!すまない!」

「いや、気にするなよ」

「さっきの奴らはわたしが燃やしといたから安心しろ」

「……そうなんだ、良かったよ、本当」

これ、僕泣いていい?

「お、そろそろ俺の番号呼ばれる。行くわ」

「そうか、頑張れよ!」

手を振って別れる。




番号が呼ばれたので一人で教室に入る。

「君が生徒番号563番藤代修介君?」

「はい、そうです」

メガネを掛けた先生が俺の番号を確認する。

「君、泥ついてるよ。何したの?」

「あ、あはは、ちょっと転んじゃいまして」

「そう、気をつけてね。じゃあ、この機械に腕を置いて。

ビュンビュンいいながら回転する機械に腕を置く。

「それじゃ、開始しまーす」

先生がスイッチを押す。

俺の腕を通り抜けスクリーンに文字を出す。

「君のアビリティーはー、アイスキューブを作る力だね」

「え? 今なんて言いました」

「だから、アイスキューブを作る能力」

何それ!アイスキューブ作ってなんの意味があるのよ⁉

「いやいや、それ何かの間違いですよ」

そんなショボい、いやショボい以前の問題だ。

「えー、もう一回やろうか?」

「お願いします!」

もう一度機械に腕を置く。

スクリーンが文字を出していく。

「何かの間違いだ。何かの間違いだ。何かの間違いだ。何かの間違いだ。何かの間違いだ。何かの間違いだ」

「静かに」

「頼むから!」

「あっ、すごい!君、力が二つあるよ!」

「おおっ、やっぱり!」

先生が素っ頓狂な声を出す。

しかも俺に力が二つあるという衝撃の展開。

「もう一つの力はねー、雨を激しくすることだよ」

「は?」

「雨が降っている時に強い雨にできるよ」

あ、そうですか。アイスキューブ作って雨強くして何がしたいんだろう。

「はあ……」

「次は剣の形状を確認しようね」

「はい……お願いします」

「これを握って」

「はい、こうですか」

スライムみたいな棒状のものを渡される。

「ぐっと力いれてみて」

スライムがみるみる内に変化していく。

「おおっ」

「できたね」

その形はまるで……棒のようで。

「え、ひのきぼう?」

「それが君の剣だよ、大事にしようね」

剣なの? これ。

「あんまりだ」

「はい、次の人来て」

俺は失意の中クラス分けの教室まで行った。




「うおっ!」

「きゃあっ!」

下を向いて歩いていたら人にぶつかってしまった。

「大丈夫? ごめん、前見てなくて」

「平気……」

尻餅をついているのは黒い髪の少女だった。

長い髪を縛らずそのままにしている。

「どこか擦りむいてない?」

「うん、なんともない」

良かった。

「じゃあ、俺行くから」

「ばいばい」

クラス分けの教室はすぐそこだ。

というかあの娘は行かないのだろうか。

振り向くとボーッと立っている。

「ひょっとして道わかんない?」

「え……? クラス分けの?」

「うん、教室までの道筋」

「……わからない」

「やっぱり」

「やっぱり?」

首を傾げる。

「いや、なんでもない。俺も今から行くからさ、一緒に行こう」

「いいの……?」

「いいっていいって」

「ありがとう……甘えることにする」

「俺は藤代修介、君の名前は」

「岡倉茉弥子」

「よし、行こうぜ」

俺たちは歩き出した。

クラス分けの教室でプリントを貰い、そこからそれぞれのクラスへ行き終わりだ。




「ここだな」

「着いた……」

「よーし、入ろう」

教室に入ると、かなりの人数の生徒がいた。

「人、多い」

岡倉が憂鬱そうに言う。

「適当に座るか」

手近な席に二人で座る。

「あ、お前、零崎」

「おう、藤代か」

「知り合い?」

「ああ、さっき俺が助けた破天荒ボーイさ」

「二分でのされた奴が何言ってんだ」

「三分は粘ったはずだ」

「……?」

たまたま偶然、零崎がいた。

「これで何人くらいいるんだ?」

「八割近くだな」

クラスの中は人でごった返している。

それでも座れるほど広いクラスだ。

「修介、ここにいたのか」

向こうから茜原がやってきた。

「随分遅かったな」

「うん、いろいろね……」

「む、そちらの方は?」

「さっき知り合った岡倉茉弥子さんだ」

「……よろしく」

「茜原紅葉だ。よろしく頼む」

「ところでまだ始まらないのか」

「もうすぐ始まるはずだぞ」

その言葉通りに先生が奥から現れた。

「やあ、こんにちは。僕の名前は石田誠一」

雅に礼をする男性。

「君たちは今日この日から天学の生徒です」

「節度ある学生らしい振る舞いを期待する」

腹に一物もってそうな人だな。

「なんか怪しい感じだな」

「ああ、キレたら怖そうだ」

零崎と話す。

「静かに話を聞けっ」

「へい」

「それではクラス分けをしたいと思います」

石田先生はプリントを用意し、配り始めた。

「俺はどこだっと」

「わたしは何組だ?」

「お、俺たちは全員同じだぞ」

「……これは運命」

「けっ」

零崎と茜原と岡倉、俺と同じC組だ。

「それでは教室に移動してください」

ぞろぞろと等速直線運動を始める俺たち。




「はい、私がみんなの担任の絢蔵綾子です」

さっき能力確認をしていた先生だ。

ほんわかしていてやりやすそう。

「今日はみんな委員長を決めてね」

誰もがやりたくない委員長。

そんな役職を進んでやりたがる奴がいた。

「はいっ、わたしにやらせてほしい!」

茜原だ。責任感が強いとは思っていたが委員長もやるとは。世の中には変わった奴もいるものだ。物好きだなあ。

「じゃあ、一人は茜原さんね、あと一人必要なんだけど、誰かいないかな」

名乗り出る人なんていやしない。

「いないのならわたしが指名したい」

「え、当てがあるのかな」

「ああ、ピッタリの者がいる」

ほう、それは興味深い。

俺は欠伸を噛み殺しながら見守る。

「藤代修介だ!」

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