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一話 接触

ついに河原恵美と接触した俺。そこで、〈かまってちゃん〉の真実を知ることはできるのか・・・!?

 さて、対策室の担当になって三日たったわけだが、まだ河原恵美に会えていない。ダラダラしやがって、と思うかもしれないが、断じて俺のせいではない。少しやる気になっていたのに、次の日から土日だったのだ。

いよいよ河原恵美と会う月曜日になったが、問題が何点かあり、屋上で思案していた(この時点で放課後なので、もう会うつもりはないが)。

問題① そもそも彼女は学校に来ているのだろうか?

これは彼女の言ういじめが本当だった場合だ。河原が〈かまってちゃん〉ではなかった場合、親に泣きつくのは相当深刻だからではないだろうか。岡本先生の情報は信ぴょう性が割とあると思うが、簡単には決められない。

問題② いじめている側との接触

河原恵美の相談がどうあれ、誰がいじめているのか、その特定は避けようがない。その生徒にも気を使わなければならないのではないか。しんどいなあ。

とにもかくにも、本人に会わなければならないのは確定している。俺がこんな目に合っているのはどう考えても岡本先生のせいだ。腹立たしいことだ。今度彼自身の悪いうわさを流してやろうか。


俺が黒い感情を渦巻かせていると、

「桐生先生!!!」 

びっくりした。西條先生か。

「どうしたの、そんなに大声出して。」

「あなたは対策室の担当になったんでしょう!?こんなところでサボらないでください!!」

俺が担当になったのに、俺以上にやる気を持ってるのが、この西條先生だ。このやる気があれば文化祭実行委員会の担当と併行してできたんではないだろうか。

「私は来月の文化祭の準備が多くて、毎日は行けないんですから、おとなしく対策室に戻ってください!!河原さん以外にも、困ってる人は来るかもしれないんですよ!?」

この人は心を読めるんだろうか。それにしても無茶苦茶怒ってるな・・・

「西條先生、怒らないで教えてほしいことがあるんだが・・・河原恵美は学校に来てるのか?」

「え・・・?まだ会ってないんですか!?」

怒らないでといったのに・・・・・・ん?

「会ったのか?河原恵美と?つーか学校来てんのかよ。」

これは決まりじゃないだろうか?いじめっていうのがよくわからないんだが、いろいろ相談して、親に泣きついて、結局普通に登校?〈かまってちゃん〉に印象が近づいてきたような気がする・・・

「今日話したんですけど、何も話してくれないんです。対策室の先生が変わったって言ったら、放課後に行くって言ってました。あ!!!だからはやくもどってください!!!」


 と、いうわけで、対策室としてあてがわれた空き教室に初めて入った。そこには普通の机が二つ。俺の席と生徒の席だろう、向かい合っている。小さい教室なので、大した備品はないようだが。

多分、この生徒の席に座っているショートカットの少女こそが、件の河原恵美だろうな。話しかけなきゃな・・・はあ・・・

「河原か?」

こんなことしかいえなかったのは、断じて口下手だからではない。

「先生が、新しい担当?」

けっこうかわいらしい声と見た目だな。もっと陰鬱な感じだと思っていた。

「私がいじめられてること、知ってる?」

手に持っているピンクのシャーペンをいじりながら言う。そっちから話してくれるのか。こちらとしては都合がいい。

「ああ、担任の先生や前任の豊田先生にも相談したんだってな。大変だったろ。」無難な返答だ。

「大変なんてもんじゃないよ、誰も助けてくれなくてさ、学校来るのもつらいんだよ。」

結構ペラペラしゃべっているが、時折顔をゆがめながらだ。本当につらそうな印象を受ける。

「だからさあ、豊田みたいなことはしないでほしいんだよ。桐生先生にはさ・・・」

「豊田《先生》な。先生がなんかしたのか?」

俺は気持ちはわかるので弱めにいさめながら聞いた。

すると河原はシャーペンを置き、

「いじめられてるほうも悪いかもしれないんだってさ。」

そういった。

「だからいじめてる人の特定もしないし、私も早く忘れたほうがいいんだってさ。」 

あのジジイ・・・・ 何つーことを子供に言いやがるんだ。もみ消そうとしたってのか。いじめの事実を。許されることじゃねえぞ・・・

「わかった。俺は俺なりにこの件について調べるよ。相手にも話を聞かねえとな。」

「助けてくれるの?ほんとに?」

河原の表情はいまだ苦しそうだ。

「ああ、俺が今から調べることがそれにつながるといいな。」

彼女の表情を見て、多少いじめを信じる気になってきた。が、最も懸念していることを聞いておかなければ。

「いじめている子について聞かせてくれないか?」

まあ当然の質問だな。

やはり自分をいじめている加害者は言いにくいのか、思いのほか時間をかけながら、ぽつり、とつぶやいた

「藤堂みゆき・・・」 

もちろんのことだが、俺はその子を知らん。2組しか受け持ってねえし。

「一年3組の藤堂さん・・・が、わたしをいじめるの・・・。無視したり、物を隠したり、叩かれたり・・」

ザ・いじめといえるラインナップだな・・・

「もういいよ、ありがとな。」

5時を回っていたので、俺はそれだけ言って河原を帰らそうとした。

が、やはり岡本先生情報が頭に引っかかる。その情報をもはや信じてなどいなかったが、一応聞いておかなければ。

「なあ河原。おまえは藤堂にずっといじめられていたんだな?」

割と気を使った質問だったのだが、河原の反応は違った。俺はもちろんですよ!といった返しを想定していた。それだけいじめの事実を信じきっていたのかもしれない。河原の答えは俺の想定とは少し違った。

「う・・・ん。」

とだけ、河原は言った。まるで嘘をついているかのように。その日俺は、河原がただの〈かまってちゃん〉ではないことを確証した。しかし、それ以外の何かがあるような気がしたのだった。

少し短めですが、ここで切りました。次回、大きく話が動き出す予定です。予定は未定ですが・・・

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