【BL】空色暗号文。
【 まえがき 】
■あとがき含めてポケクリからの再掲です
■少しではありますが、性的な表現を含むのでご注意下さい
2012/10/1
「大きくなったらなりたい夢はなんですか?」
それは小学校二年生の時に言われた、担任の言葉。
「はいっ」
元気よく手を挙げたバカ。
「はい。じゃあ、椎くん」
バカは勢いよく立ち上がり、元気よく答えた。
「空のお嫁さんです!」
――自信満々。
どこからその自信が出てくるのか。
「叶うといいね」
担任は爽やかに笑う。
注意なんてものはなく、慌てる様子も皆無。
ただただニコニコと笑っていた。
これが――、おれ、椎葉和樹の黒歴史である。
「和樹」
教室のドアが開く。
視線を遣れば、そこには奴がいた。
当時被害を被ったであろう、空こと遊木空乃。
こんな名前だが、性別は男。
顔は美人さんで、身長はおれと四センチ違う。
「空……」
「暇? 暇じゃなくても、ちょっと面貸せや」
近付いてくる空は、その手に薬局の袋を提げている。
いつ買ってきたのか。
「空、なにそれ?」
「これ? 決まってんだろ、座薬とコンドウさんだ」
「は?」
「お前が痛い痛いっつっーから」
「言ってないっ」
「うっさ」
眉根を寄せて、片耳に指を突っ込む。
「あんまうっさいと舌入れるぞ」
「あ゛!?」
睨み付ければ、わざとらしく肩を竦める。
「おー、恐い恐い。まぁいいや。来いよ」
ネクタイを手に取られ、おれはそのまま引きずられる。
四センチも低いのに。
*
人気のない第二校舎。
三階の廊下で、迫ってくる。
「空、嫌だ」
「……うっせ。好きなくせに」
「好きじゃねぇ」
唇が重なる。
なにがどうなってこうなかったのか。
空は昔のおれの黒歴史を出して、おれを抱くようになった。
「嫁さんなんだからさ」
とか訳解らんことを言って。
「和樹……、取って」
長いキスをして、意識が朦朧となる。
「なに……を?」
「コンドウさん。生で挿れていいのかよ」
「生でもゴム付きでも痛いことには変わらんわ」
「ふーん。そんなこと言うなら、生でぶちこむぞ」
「……そんな顔でんなこと……言うなよ」
美人さんが台無しじゃねぇか。
「和樹、どっちがいい?」
今ぶちこむ云々言ったばっかだろうが。
「和樹」
また唇が重なる。
空の舌が口内を蠢き、離れる。
「言ってみ? 嫁さんだろ」
「……嫁じゃねー」
「強気なところも好きだぜ」
ニヤリと笑い、そうして袋からゴムを取り出した。
キスをされて、躯を弄くりまわされて、最後には突っ込まれて。
「バカ……野郎」
言ったら、嬉しそうに笑って。
コイツは――バカだ。
でも一番のバカは誰でもないおれだ。
流されて、それでもいいと思ってんだから――。
本当にバカだ。
「和樹、お前は俺だけ考えろ」
「うっせ……、バカ」
見透かされた。
そりゃそうか。
十年以上も一緒にいたら、見透かすようにはなるか。
くるくると廻る思考。
しかし考えなんて、快楽に飲まれてしまえばそれまでだ。
*
「人の考え読むなよ」
「読んでねぇし」
渡されたペットボトルに口を付け、中身を口内へと運ぶ。
「和樹、お前は嫁さん発言を黒歴史黒歴史言うけど、嬉しかったんだぞ」
「じゃあなんで脅して抱いてくんだよ」
空は右手に持つペットボトルを取り上げ、口を塞ぐ。
「抱けないからだし。お前がホイホイ抱かれるとは思えないから」
「――性欲が盛んなことで」
呆れた。
種馬になるんじゃね。
「和樹限定。種馬じゃないし」
「バカ野郎。あー、喉痛い」
考えが読まれたことを悟られないように、咳払いをする。
「薬、買う?」
「いらね」
「そ」
取り上げたペットボトルを渡され、また口に運ぶ。
「――嫁さん発言さ、忘れろよ」
「嫌だよ」
「空乃」
奴の名前を呼んで、今度はおれが唇を奪う。
「忘れなかったら、ヤらせねー」
「嘘だろ!?」
珍しく美人さんな顔が歪む。
「忘れた、今忘れた! 忘れたから!」
慌てる様子が面白い。
「ちゃんと記憶から消し去るまではヤらねぇ」
「か、和樹、冗談だよな?」
「さぁな」
ペットボトルを飲み干して、近くのゴミ箱へと投げ入れる。
ゴミ箱から鈍い音がした。
「空乃の夢」
「え?」
「空乃の夢を教えてくれたら、考え直してやる」
授業時間がなくて、聞けなかった。
「決まってる。俺の夢は――」
奴は、少しだけ恥ずかしそうに言った。
「和樹のお婿さん」
婿養子でもいいや、と一言足して。
《終わり》
【 あとがき 】
初めましてのり。です。
タイトルと中身が関係ないのは気にしないで下さい。
とだけ伝えたかったので、『あとがき。』を書いてみました。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
2009/1/22
---追記---
ポケクリ登録時は『のり。』というユーザーネームでした