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第7話

ジークは調合を終えると誰もいないはずの店から、声が聞こえている。


「……結局、2人はここで何をやっているんだ?」


「何って、見てわからない? 店番よ。ジークが調合している間にお客さんが来て大変だったのよ」


ジークはいやな予感がしたようで急いで店に移動すると、ノエルとフィーナが店を開けており、店の中には村のお年寄りが集まって世間話に花を咲かせている。


「……いや、その前にノエルに店番をさせるなよ。騒ぎになったらどうするつもりだよ」


「それくらい、私だって考えたわよ。だけど、みんながみんな冒険者ってわけじゃないでしょ。うちの村は特にお年寄りばかりだからドレイクなんて本物を見た事ない人間が多いから、あの角を装飾品くらいにしかみんな思ってないのよ。気づくとしたら、シルドさんやシルドさんのお店に泊まってる冒険者の人達、後は元冒険者の私のお父さんくらいよ」


ジークはノエルを人前に出す事に顔を青くするが、お年寄り達はノエルをドレイクだと思っていないようであり、フィーナは大きく肩を落とした。


「……今更だけど、平和な村だな」


「……えぇ、緊張感もあったもんじゃないわ」


ジークとフィーナは緩い空気の流れている様子に自分達のしていた心配がバカらしくなっているようで眉間にしわを寄せる。


「ジーク、いつの間にこんな良い子を捕まえたんだい? これであんたの将来を心配して死んで行ったばあさんも報われるね」


「フィーナちゃん、あたしはあんたを応援しているからね。いきなり現れた子にジークを取られるんじゃないよ」


「……違うからね。おかしな勘違いはいらないから」


その時、ジークに気が付いたお年寄り達はノエルとフィーナをジークの嫁候補と認識しているようで無責任に煽る。ジークはこの状況に頭が痛くなってきたようで頭を押さえて否定する。


「な、何を言っているんですか!? わ、わたしとジークさんはそんな関係じゃありません!? ジークさんにはフィーナさんがお似合いだと思います!!」


「もう、この子は可愛いね。そうやって顔を赤らめるなんてね。あたしはこっちの子の味方をさせて貰おうかな?」


ジークの対応とは真逆に顔を真っ赤にして否定するノエル。しかし、彼女の行動はお年寄り達に話の種を与えるだけでしかなく、お年寄り達はノエルの反応が面白いのか、完全に煽りに入っている。


「もう良いよ。悪いんだけど、俺、薬の材料探しに行きたいから、特に用がないなら店を閉めたいんだけど……」


「まったく、わざわざ、こんな村はずれまで歩いてきた年寄りを追い出すって言うのかい? この子はどうしてこんな冷たく育ってしまったのかね」


ジークはこれ以上、付き合っていられないと言いたげに、お年寄り達に帰るように言う。その言葉にお年寄り達は情に訴えたいようで泣き落としにかかった。


「……少なくとも世話にはなったけど育てて貰った記憶はないから、それにフィーナもそうだけど、ここにお茶を飲みに来られても困るんだよ。俺にだって俺の生活があるんだから、俺に稼ぎがなくなっても誰も養ってくれないだろ」


「さてと、ジークも忙しい良いみたいだし、あたし達も帰ろうか?」


しかし、ジークには泣き落としは聞かないようで、反撃に移ろうとするが、彼の言葉にお年寄り達は次々に撤退を開始する。


「……まったく……って、店の物を持ってくな!!」


「あの、フィーナさん、このお店って……」


「良いのよ。ここはそう言うお店だから」


お年寄り達は店を出て行く時に当たり前のように代金を払う事なく商品を持って行っており、ジークは慌ててお年寄り達を追いかけて店を出て行く。ノエルはその様子に顔を引きつらせるが、フィーナはジークの店では日常と言い切った。


「そんなわけないじゃないですか!? ジークさんはここのお店が大切だって言うのはおばあ様の事もありますし、わかるじゃないですか。お店を維持するのってお金がかかるんじゃないですか?」


「そうかもね。だけど、私もおばあちゃんもジークがここに縛られるのって望んじゃないから」


ノエルはジークの気持ちを考えて欲しいと声をあげる。しかし、フィーナはジークに取って、冒険者になるのが1番だと思っているため、自分の考えをジークの祖母の考えだと決めつけて言う。


「……まったく、フィーナもそうだけど、何なんだよ。と言うか自分達は年寄りだって言うなら、店の外から全力で走って居なくなるなよ」


「ジークさん、あの。お店って大丈夫なんですか?」


「ん? どうかした?」


ジークはお年寄り達を捕まえる事が出来なかったようで不機嫌そうな表情で店に戻ってくる。ノエルはジークの店を心配しているようで彼の顔を見るなり不安そうな表情で駆け寄る。


「お店って潰れたりしませんよね?」


「……ノエル、どうしてそんな不吉な事を言うんだ?」


ジークはノエルが何を言いたいのかわからないようで眉間にしわを寄せた。


「だ、だって、お金を払わないで商品を持って行く人もいますし」


「まぁ、確かにそれは困りものだけど、代わりに野菜とか食料も貰ったりしているからな……なかには代わりのもの1つ持ってこない奴もいるけど」


「何よ? かわいい幼なじみが顔を出してるのよ。それだけで充分にジークのためになってるでしょ」


ジークはノエルの疑問に苦笑いを浮かべて、物々交換が成り立っている事を話すが、フィーナだけは本当に何も置いて行かないようで彼女を非難するような視線を向ける。しかし、フィーナは気にする事などなく、自分は代金を踏み倒すと言い切った。


「1番厄介なのが幼なじみなんだからな。1人だけだし、どうにかなる……って、だから、泣かないでくれ!?」


「で、ですけど……このままだと、ジークさんが」


「だ、大丈夫だから、頼むから、これ以上、泣かれると……」


ノエルの想像の中では、ジークの店がつぶれ、彼が路頭に迷っている姿を思い浮かべたようでぼろぼろと大粒の涙を流し始め、ジークは慌てて彼女に泣き読むように言った時、ノエルはジークに抱きつく。


「そうそう、ジーク、うちの畑にできた野菜を後で取りに……これは修羅場? お邪魔したみたいだね」


「待て!? 勘違いだから!?」


「何も言わなくて良いんだよ」


その絶妙なタイミングをまるで見計らったかのようにお年寄りの1人がドアを開け、2人の様子を見て、そっと、ドアを閉めた。

ジークはこの状況を村に広められるわけにはいかないため、お年寄りを追いかけようとするがノエルを引き離す事もできないため追いかける事も出来ない。


「……今日は厄日だ」


「へぇ、可愛いノエルに抱きつかれて厄日? ジーク、あんた何様よ?」


この後に村中にしなければいけない弁明の事を考え、大きく肩を落とすジーク。フィーナにはジークがノエルに抱きつかれて鼻の下をのばしているようにしか見えないようで殺気を込めた視線を彼に送っている。


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