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第4話

「あの。信じていただけましたか?」


「えーと……」


敵意などないため、信じて欲しいと上目づかいでジークの顔を見上げるノエル。そんな彼女の様子にジークは迂闊にもときめいてしまったようで顔を赤くして視線を逸らした。


「信じるから、ジークから離れなさいよ」


「は、はい。すいません」


そんな彼の様子がフィーナは面白くないようで彼女は不機嫌な表情を隠す事なく、ノエルの腕を引っ張り、ジークと距離を取らせる。


「さっき、ジークが言ったけど、おじさんもおばさんもここになんて戻ってきた事はないわよ。この話はこれで終わり、用が済んだなら帰ってよ」


「そ、それなら、どこにいるかご存じありませんか? それに帰ってこないと言ってもお手紙くらいはきますよね?」


フィーナの頭の中からはノエルがドレイクだと言う事がすっかり抜け落ちてしまったようで彼女を恋敵ライバルと認識したのか威嚇する。しかし。ノエルはどうしてもジークの両親と話をしたいようで再度、ジークに詰め寄る。


「ちょっと、ノエル、落ち着いてくれるか? ち、近いと話しにくいし」


「あ、は、はい……すいませんでした」


ジークはノエルの顔が近くにあるのは精神衛生上良くないと判断したようでノエルをなだめる。ノエルはジークの顔がすぐそばにある事に気が付くと顔を真っ赤にして彼から飛びのいた。


「あ、あの。それで」


「ノエル、言い難いんだけどさ。俺は2人の居場所を知らないんだ。ばあちゃんが言ってたけど生まれた俺を置きに帰ってきた後は顔も見に来た事もないし、俺は2人の顔も知らないよ。村のみんなに聞いても同じ答えしか返ってこないと思うよ」


ジークとノエルは距離を取って息を整えるとノエルは、改めて彼の両親の居場所を聞こうとする。しかし、ジークの口から出る言葉は彼の両親との関係が冷え切っている事を知らされるだけであるが、そんな彼の表情はどこかさびしげに見えた。


「ジークさんが生まれてからって、そんな、酷いです……親子なのにどうしてですか?」


「ちょっと、何でノエルが泣くのさ!?」


「だ、だって、ジークさんが、ジークさんが」


ノエルはジークの表情になぜか感情移入をしてしまったのかボロボロと大粒の涙を流し泣き始め、ジークがかわいそうだと名前を連呼して行く。


「ちょっと、ノエル、名前を呼んで泣かないでくれ!? 俺が何かしたみたいじゃないか!?」


「……これはお客さんが来たら大変な事になるわね。」

 

泣き始めたノエルにジークはどのように対応して良いのかわからずに慌てふためき、フィーナは1度、ため息を吐くと営業中になったままのドアのプレートを準備中に替える。


「……えーと、一先ず、これでも飲んで落ち着いてくれるかな」


「ず、ずびまぜん」


ジークは一先ずはノエルを落ち着かせようと店頭に並んでいる心を落ち着かせる効果のある薬湯をカップに注ぎノエルに渡す。ノエルはそれを受け取るが、彼女の顔はすでに涙と鼻水でぐちゃぐちゃになっている。


「……涙脆いドレイク? なんか頭が痛いわ。ジーク、遊んでないで、タオルとかハンカチとか持って来られないの? 泣いている女の子の顔をいつまでも見ているなんてデリカシーにかけるわよ。ハンカチなんて気の利いたものをジークが持っているわけないからタオルとかノエルの顔を拭くものを持ってきなさいよ」


「そ、そうだな。ちょっと、行ってくる」


フィーナはどうして良いのかわかっていないジークの様子に肩を落とすと彼に指示を出し、ジークは逃げるように店から出て行く。


「ノエルが泣く事でもないでしょ。ジーク自身が気にしてないんだから」


「で、ですけど、そんなの悲しいです。さびしいです」


「困ったわね」


フィーナはノエルに泣きやむように笑いかける。しかし、ノエルは酷く涙脆いようでいくら手で涙を拭っても彼女の瞳からは止めどなく涙が溢れて行き、フィーナが諦めの表情をのぞかせた。


「……そう言う風に泣いてくれるのは嬉しいんだけどさ。実際はフィーナの言う通り気にしてないから泣きやんでくれないかな? こうやって泣かれている方が気不味いんだけど」


「でも、辛くないんですか?」


その時、奥からタオルをもって戻ってきたジークはタオルでノエルの顔を拭い、泣かないで欲しいと困ったような表情を見せた。ノエルは涙目のまま、ジークに寂しくないかと聞く。


「どうかな? さっきも話した通り、両親の顔は1度も見た事ないしね。知らないんだ。辛いと思った事はないよ。ばあちゃんから話は聞いているからどんな人なりをしているかは知っているけど、それに1人で生きて行くのに悲しんでいる暇はないよ。代金を踏み倒す迷惑な幼なじみもいるし」


「ちょっと、どうして、そこで話を折るのよ!?」


ジークはノエルの顔を直視できないようで視線を逸らすと場を和ませたいようで冗談交じりで辛くないと答える。引き合いにされたフィーナが面白いわけもなく頬を膨らませる。


「お1人なんですか? あ、あの、おばあ様は?」


「ちょっと、ジーク!? それを言ったら、ダメよ!?」


「あぁ。ばあちゃんは1年前に死んだよ」


ノエルはジークが自分の事を気づかってくれた事に気づき、笑顔を見せようとするが、この場に彼の祖母がいないため、疑問を口にする。フィーナは何かに気が付き声をあげるが、ジークはノエルの表情の変化に緊張の糸が緩んでしまったようで真実を話す。


「そ、そんな……」


「……バカジーク」


ノエルは彼の祖母が亡くなっている事を知り、彼女の瞳からは止まりかけていたはずの涙が再び溢れ出す。フィーナはそんな彼女の様子に原因を作ったジークを睨みつけた。


「し、仕方ないだろ!? こうなるなんて思わないだろ!? それより、フィーナ、どうにかしろよ。俺はこんな時にどうしたらいいかわからないぞ!?」


「……ジーク、あんたは少しの間、出て行って」


「お、おう。任せた」


ジークはノエルが泣きだしてしまった事に慌てるとノエルをフィーナに任せて逃げるように、店の裏にある小さな畑に向かって駆け出して行く。


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