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第2話

「だ、大丈夫ですか?」


「は、はい。大丈夫です。ありがとうございます」


ジークはフィーナが尻もちをついたのは自業自得と判断したため、彼女とぶつかった少女に手を伸ばすと少女はジークの行動に少し驚いたような表情をして彼の手を握って立ち上がる。


「どうかしました?」


「い、いえ、何でもないです」


少女は立ち上がると慌てた様子で彼の手を直ぐに放す。ジークは彼女の様子に何かあったかと思ったようで首を傾げると少女は顔を赤らめながら大きく首を横に振った。


「すいません。急いでいたものでケガは無いですか?」


「わたしは大丈夫です。あの、あなたもケガはないですか? わたし、治癒魔法は少しは使えますのでケガをしていたら言ってください」


は自分を優先してくれないジークにフィーナは不満げな視線を向ける。しかし、自分の前方不注意が原因のため、文句を言う事もできないようで1度、深呼吸をして気持ちを落ち着けると少女に頭を下げた。少女は自分は明らかな被害者のはずなのだがフィーナの身体を心配しているようで聞き返すと地面に落していたのか小さな杖を拾い上げた。


「私は大丈夫です。これでも鍛えていますから」


「そうなんですか? それは良かったです」


フィーナは魔族を倒して一攫千金を狙っているため、身体は鍛えていると腕まくりをして見せた。その様子に少女は安心したのか柔和な笑みを浮かべる。


ジークは2人にケガがない事に一先ずは安心したようで小さく息を漏らすと改めて、フィーナとぶつかった少女に視線を移した。少女の顔にはジークは見覚えもないようで、彼女がこの村の人間ではないと気づく。


「……村の人間じゃないって事は冒険者だな? となるとかねづる


ジークは少女を村のわずかな収入源でもある冒険者だと判断すると彼の目は商売人の目に変わると少女に聞こえないようにつぶやくと接客に移ろうとするが彼女の綺麗な赤色の髪の間からは人族にはあり得ない2本の小さな角が頭を覗かせている。


「……赤い髪に角が2つ? えーと、目は金色? ……えーと、落ち着け、俺、ドレイクがこんな小さな村にくるわけがないじゃないか。獣人の類の人だよな。そうだよな」


ジークは目から伝わった少女の姿に何かが引っかかったようで彼の頭にある知識を呼び戻して行く。

その中で少女の『赤い髪』、『2つの角』、『金色こんじきの瞳』と言った特徴が人族に敵対する竜の血を引いていて魔族でも上位の力を秘めており、人族を喰らい、残忍で暴力や殺戮の限りを尽くすと言う『ドレイク』だと最悪の結果しか導き出せなかったようで顔を引きつらせる。

しかし、フィーナと話す少女の様子は柔らかく、ジークは彼女がまとっている柔らかな雰囲気にそんなわけないと思いたいようで大きく首を振った。


「どうかしましたか?」


「な、何でもないです」


「ジーク、どうしたのよ? 女の子をそんな風に見たら失礼よ」


ジークの挙動不審な様子に少女は小さく首を傾げる。自分の目の前に人族にとって最凶の魔族であるドレイクが立っている事に頭がついて行けていないようでジークは声を裏返すだけではなく、恐怖を感じているようで口からは敬語が飛び出た。

そんな彼の様子にフィーナは怪訝そうな表情をして聞き返す。


「す、すいません。少しの間、お時間をいただいてもよろしいでしょうか?」


「はい。わたしはかまいませんけど」


「ちょっと、ジーク、何なのよ? お客様に失礼でしょ」


ジークは少女に断りを入れるとフィーナを店のなかに引っ張り込み、少女の頭を指差す。


「……フィーナ、失礼って言う前に彼女をもう1度、しっかりと見てみろよ」


「何? 女の子をそんな風に見るのは失礼よ。まったく、それともあの娘が可愛いから照れてるの? ……あんた、最低ね」


「良いから見ろ」


ジークはフィーナに少女がドレイクかと確認して貰いたいようで少女を見て欲しいと言うが、しっかりとした説明があるわけでもないため、フィーナは彼の言葉にジークが少女に一目ぼれでもしたと思ったようで不機嫌そうな表情をして彼を睨みつけた。しかし、今のジークにフィーナの事を気にする余裕はない。


「まったく、何なのよ? まさに美少女って感じよね。『キレイな赤い髪』に『金色こんじきの瞳』に赤い髪に映える『2つの小さな角』? あれ? 角? ……えーと、ちょっと待ってね。状況を理解するから……あれよね? きっと獣人の類よね?」


「そうだよな? そうだと良いな……あんな凶悪な存在ものが大きな国ならまだしもこんな小さな村になんか立ち寄るわけがないよな?」


フィーナはため息を吐いた後に少女に視線を向けるとジークと同じく彼女の頭に生える角で視線を止めた。そして、自分の頭が導き出した答えを否定したいようで希望的な答えでジークに同意を求める。

ジークは最悪の答えを否定したいようで大きく頷いた。


「あの。どうかしましたか?」


「ひゃう!?」


2人の様子に何か感じたようで少女は店のドアを遠慮がちに開ける。予想していなかった少女の行動にフィーナは声を裏返した。


「あ、あのですね。1つ、お聞きしてもよろしいでしょうか?」


「はい。わたしに応えられる事でしたら」


「……」


少女が仮に自分とフィーナの考えた通りにドレイクだった場合は絶対に逃げきれないと判断したジークは、知る権利があると考え、決意したようで表情を引き締めて少女に声をかける。

しかし、少女はジークの決意を知らないせいか、笑顔で頷く。そんな少女の表情に恐怖より恥ずかしさが勝ったようでジークは彼女から1度、視線を逸らす。


「……ジーク、聞いちゃうの?」


「き、聞かないとどうしようもないだろ」


「だ、だとしてもよ。答えが最悪だったら、どうするのよ?」


フィーナはジークの様子に彼が決意を決めた事は理解したようだが彼女自身がまだ覚悟はできていないようであり、ジークの腕を肘で突く。


「で、でも、逃げられる状況じゃないだろ……出口は塞がれている上にドレイクって言ったら人間を一瞬で消し炭にできるような魔法を無詠唱で使ったりするんだぞ。死ぬなら死ぬで真実くらいは知りたい」


「確かにそうだけど……」


ドレイクと戦う場合、ジークは人族では相手にすらならないため、真実を知りたいと言い切った。


「……あのさ。君って、ひょっとして、ドレイクだったりする?」


「はい。生まれて16年、ドレイクをやらせていただいています」


緊張で鼓動が速くなっているため、自分を落ち着かせるようにジークは大きく深呼吸をするが鼓動は治まるわけはない。それでも、少女に向かい真実を確かめる。

少女ジークの質問の意味がわからないようだが、隠す事なく頷いた。


「……そ、そうですか。ドレイクですか」


「やっぱり、そうなんだ」


「はい。そうですけど、どうかしましたか?」


少女の口から、知らされた最悪の結果にジークとフィーナの顔からは血の気が引き、その顔は真っ青になって行く。

それに対して、ドレイクの少女は2人が何を聞きたかったのか理解できていないのか首を傾げている。


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