家族
あの人は帰ってこない
もう何時間たったのだろう
ココは寒くて、騒がしくて、窮屈で嫌いだ。
いつもボクを拾ぃあげて、微笑んでくれたあの人はどこに行ったのだろう
もう晩御飯時なんてとっくに過ぎてる
早くあの人の作った物が食べたい
風がビュンビュン吹いて近くの木を揺らせてる
寒い
冷たい
寂しい
怖い
いつもなら今頃、ボクの大好きなソファでゴロゴロしていたはずなのに
どうしてこんな事になったの?
ボクが何をした?
そんなに嫌われるようなこと、した覚えない
会いたい
会いたいよ
帰ってきてよ
変な女の人達が近づいてきた
ねぇ、ボクの大好きなあの人を知らない?
女の人はニコニコしながら何か一言呟いてボクの頭を撫で、去っていった
ボクの毛並の冷たさに気づいてるくせに…
人間なんて、みんな、最初だけなんだ
最初だけ優しい顔して頭を撫でたり耳の後ろをかいてくれたりするくせに、飽きたらすぐほるんだ
ボクも、ほられたんだ
ボクが愛した、あの人達に…
どうして…?
ボク、信じてたのに…
あの人達は、ボクのママであってパパであって、兄弟なんだって
形なんか違ったって構わないって
大事なのは心なんだって…
ねぇ、
ボクは、違うの?
ボクは…
家族なんかじゃ、なかったの?
その時、男の子が近づいてきた。
きっと、この人間も他の人間と同じように結局ボクを捨てるんだ。
憎い、人間が、憎い
ボクはボクの頭を撫でようとした幼い手に勢い良く噛みついた。
男の子はとっさに手を引っ込めて痛そうに顔を歪める。
だまされないぞ
ボクがまた牙を向けようと顔を近づけると、男の子と目があった。
直後、ボクは固まってしまった。
今まで優しい目や楽しそうな目なら見てきたことはたくさんあるけれど、こんなにも、悲しく寂しい目を見たのは初めてだった
ボクは、ボクが噛みついた男の子の手を見た
傷だらけだった
ボクは噛みつくことをやめて、男の子の手を舐め膝にすりよった。
男の子はボクを優しく抱き上げた。
ボクは抵抗しなかった
この人間は違う
ボクと同類だと思ったんだ
この人となら…きっと…
きっと