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ALIVE  作者: 清 涼
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第一章(一の2)

タタタタ・・・


 数人が走り去って行く音を聞き終えると、二人は同時にホッと息を吐いた。

「行ったか?」

「みたいだな。 ・・・ 、にしてはすっげぇ真っ暗」

ようやく自分達が入り込んだ穴について考えると首を傾げてしまった。

 この穴は一体何だろうか?

コンクリートの壁に掘ってあったのだろうか。それとも門の一部だったのだろうか。

「 ・・・、にしては・・・、ん?」

司は穴から出ると体を伸ばして首を傾げた。晃一も続いたがやはり同じように首を傾げる。

「 ・・・。 なんか、ヤケに静か、だな」

高い木の塀に挟まれた路地に二人は立っていたが、辺りを見渡して、先程のコンクリートに囲まれた暗さとは全く別の暗さを感じていた事に気が付いた。

「何だ?」

 

 屋根?


夜空を見ようと見上げたが何かに阻まれている。余り見かけないが、明らかに屋根だ。それも木造で両側から伸びている。よくよく考えなければ何の違和感もない。

とにかく今は、自分達に降りかかった難から逃れたのだ。安心していい筈だ。気を取り直して通りに出ようと視線を何気に落とすと、再び首を傾げてしまった。


 ?


革靴にかかる感触が妙に柔らかい。少しためらったが、思い切って通りに出ようとした所で、思わず息を呑んで立ち止まってしまった。

「えっ!?」

「ちょっと」

後ろから晃一がぶつかりそうになって、片手で司の背中を押さえた。

「どうした?」

「あ・・・、いや・・・」

司は立ち止まったまま目の前の景色に理解出来ず、晃一に振り返った。

「あん?」

暗がりの中、余りに驚きを隠せずにいる司に不思議に思った晃一が、隣に立って通りに出ようと、司の肩に手を掛けながら一歩前に出た。

「はあっ!?」

言ったきり開いた口がふさがらない。思い切り息を飲み込んで目を見開いた。

「何だ、ここ?」

気を取り直した司が通りに出て辺りを見渡す。

 家屋かおくから漏れる灯りはあるものの、今までの色とりどりのネオンがすっかりなくなっている。それどころかコンクリートのビルは一つもなく、街灯さえない。

そして道路は、アスファルトではなく、剥き出しの地面になっていた。

それにしては何処どこかで見た事のあるような風景だ。

「なあ、司」

思い出そうと考えた時、隣に立っていた晃一が少し安心したような声を出した。

「ここって何かのドラマか映画のセットか?」

「え?」

「だってこれ、思い切り時代劇のセットだろ。しかもここ、京都だし」

「は? ・・・ 映画村?」

「にしか思えないけどな・・・」

「けどなって・・・、でも、まぁ、そう、だよな・・」

「うーーん・・・」

晃一は腕を組んで黙ってしまった。

 いつの間にこんな所に来てしまったのだろうか。先程まで自分達はビルに囲まれた繁華街に居たのだ。いくら風情のある街並と言えども、遠くには車の騒音が聞こえるし、さすがにこれだけの星が見られる程暗くはなく、恍々と電気は付いている。

それが妙な穴から出たとたん、まるで江戸時代にタイムスリップしてしまったかのような光景だ。

映画やテレビを通して見たところでここまで暗くはない。なぜなら、それなりに照明というもので照らされているからだ。

 しかし・・・。

どう考えても、ここにはいわゆる「電気」を使っての照明はなく、どう見ても提灯等の火の灯りしかない。確かにほんのりと妙に懐かしさや情緒を感じてしまう灯りだった。

「映画村までワープしたか?」

晃一にはそれくらいしか思い付かない。それか、まさかとは思うが・・・。

「それとも・・・、タイムスリップか?」

「は?」

さすがにこれには司も唖然としてしまった。

「まさかぁ・・・」

司は呟きながらはす向かいにぶら下がっている木の看板に視線を移した。

そしてそのまま何気に建物の二階へと目をやった。木の格子と障子の向方にはろうそくの灯りが揺れて数人の気配がある。

再び看板に目を落とした時、何か得体の知れない戦慄が走った。

そして、そこに書かれた文字を読んだ時、体中に電流でも走ったかのような悪寒が走り、息を呑んだ。

が、それと同時に、鋭く殺気立った人の気配を感じて二人は慌てて先程の路地に身を隠した。

 ・・・

つもりだった。


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