第2話 新たなる物語
遠く古の時代から語り継がれるEDDA
標となるSAGA
あらゆる伝説の、あらゆる竜は、あらゆる英雄に倒されて
それが運命だと
それが宿命だと・・・
どこかの世界のいつかの時間
英雄に倒される運命の竜がいた。
同属に穢された翼は腐って朽ちて
白銀の美しい鱗は黒くくすみ
臭気を放ち
毒を撒き散らし
呪いを吐き
そして英雄に屠られる。
それが彼女の宿命だった・・・
どこかの世界のいつかの時間
英雄伝説が嫌いな少年がいた。
なぜ竜がいつも倒されるのか
なぜ倒す事でしか解決できないのか納得できないまま
やがて少年は大人になり
幻想を捨て、夢を忘れた
しかし運命は狂った。
それは彼の宿命ではなかった・・・
「ッ・・・何だ?何が起きた?」
あぁ、分かってるさ、マヌケなセリフを吐いてる事は十分分かってる。
だが、他に何と言ったらいいんだ?
バリっとスーツに身を包み、今日も会社勤めご苦労さんと出勤中たんだ俺は・・・
まぁ、ただの派遣だけどよ?
でも、それなりに頑張ってたんだぜ? たまにサボタージュするけどな。
それなのに、なぜ俺はこんな寒々とした森の中にいるんだ?と、今自分に起こった現象を頭の中で整理してみる。
駅の改札出たとたんだった、軽い眩暈と視界を塞ぐ白い光、どこかに落下してくような浮遊感、そして、シブいオッサンの声で、どこか異国の言葉が頭の中に流れ込んできた。
初めて聞く言葉だが、なんとなく意味は理解できた。まるで脳ミソに直接語りかけられてるような不思議な感覚
「汝、我の呼びかけに答えし者よ、我の剣となり災いを退け、我の盾となり災いから守りたまえ」
もちろん嫌だ。
ってか、呼びかけに答えた覚えはないし、得体の知れない事には関わらない方がいいし、厄介ごとはゴメンだし、剣とか盾になれって、使い捨ての身代わりっぽいのも気に食わない・・・
だがしかし、そんな俺の意志などまったく尊重されていないから、こんな場所にいるのだろう。
つまり、アレだな。
ゲームや漫画とかでよくある“異世界召喚”ってヤツだな。
足の下で薄らと光っている奇妙な魔方陣。
その魔方陣を囲う、灰色のローブを纏った怪しい集団。
俺を召喚したであろう、この者達がカチコチの氷漬けにされている事を除けば、よくあるファンタジーの冒頭部分だ。
これで「魔王を倒して下さい勇者様」とくれば完璧だ。
いや、ホントか?いくらなんでも、あまりに突拍子もない事だ・・・
俺は遠野 光秀29歳、格闘技や剣術を習ってるわけでも、ましてや特殊な能力を持っているわけでもない、冴えない三十路間近のフリーターだ。
ゲームや漫画で俺に最も適している役は・・・・モブだ、または村人C、つまり、こんな事態になる事自体がありえない!!そんなキャラではないのだ!!
まぁいい、とりあえずだ、とりあえずは保留だ。
それよりも、この寒さをどうにかしたい、秋口の過ごしやすい気温から一変して真冬の森とかありえない。それと、ココにいるのは得策ではない、凍りついた人間の氷像が立ち並ぶこの光景は異常すぎる・・・・。
よし、そうと決まれば、一秒でも早く、ここから移動した方がいい。
この、申し訳程度の山道を下って行こう、氷像と化した者達の登ってきたのだろう足跡を追跡すれば、街にでも出られるかも知れない。
「よし、よし、やれる事からやる。パズルと一緒だ、端っこや分かりやすい絵柄から手をつけていくのがセオリーだ。」
自分に言い聞かせるように呟くと、氷像をすり抜けるように足を一歩前進させた。
そして、立ち去ろうとする俺に彼女が声をかけたのが始まり。
背骨から脳髄までズゾゾゾゾと、駆け上がっていくような蠱惑的な、それでいて気高い王、いや、女王のような威厳と自信に満ち溢れている、そんな声が頭の中に響いた。
分かるはずの無い異国の言葉
しかし、言葉とは別に流れ込んでくる伝えたい意志。
そう、駅の改札口から、ここに来る時、頭の中に響いた声の様に、伝えたい事はなんとなく伝わってくる。
『そこの者よ、お前は何者だ?』
どこかの世界のいつかの時間
起こるはずのない事が起き
出会うはずのない彼と彼女が出会った。
それがこの世界に
これからの歴史に
新たな物語を
新たな英雄伝説を紡ぐ
二本の糸となる。
MONSTERS
すいません、1話からずいぶん間が空いてしまいました;
これからはこまめにアップしていけるようにガンバリマス!!