第12話 迷宮へ
お願いとお詫び
11話ですが、制作の途中で保存しようと予約掲載にしたら、日にちが間違っていたらしく、中途半端の状態で3時間ほど掲載していました。すでに完成したのですが、中途半端の状態で読んでいる場合もありますので、4月12日の19時頃~23時頃までに読んでしまった方は、もう一度確認の方よろしくお願いします。
このような不手際、大変申し訳御座いませんでした。
兵舎で迷宮探索の準備をしていると、煌びやかな鎧を纏った貴族風の騎士が入って来た。
「私の名前はペヴァー・ルシュレイ、お初にお目にかかるロレッツォ殿!!」
そして恭しくお辞儀をしながら名乗られたその名前に、俺は覚えがあった。
コイツが!?
有り得ねぇ~よマジで!!
英雄ペヴァーがコイツ?
有り得ねぇ~よマジで!!
まぁ見た感じ、それなりに強いかもしれないような気がしないでもねぇ。
しかし、それはあくまで“人間”としての範囲内であって『ケベレスの邪竜』や『エルザイアの鬼』その他様々なモンスターを倒した英雄の中の英雄ペヴァー・・・・・には、どう贔屓目に見ても見えねぇ~。
外見じゃない、マナの保有量の問題だ。
俺は自分のマナで相手のマナに触れるだけで、そいつの情報を読み取る事ができる能力を持っている。
この能力は、たとえ神や魔王であろうと決して真似することのできない、完全な固有能力だ。
と、言いつつ、この世界にはあと1人使えるヤツがいるハズなんだが・・・・・ソイツは今、アーテスタ山脈の氷の中でお眠り中のハズだ。
まぁそれはいいとしてだ、その能力でペヴァー・ルシュレイを読み取ったところ ・・・・・カスだ。
マナ保有量は、宮廷魔術師カーレン・ブックスの10分の1にも満たない・・・・そのカーレンを倒したエルザイアの鬼や、ましてやドラゴンなんかに、こんなクズが勝てるワケがねぇ!!
つまりコイツは・・・・・・張子の虎・・・・・
と、ここでペヴァーが背にしてるドアが開き、見覚えのあるヤツが入って来た。
「ご機嫌いかがかな?ロレッツォ殿・・・今日鬼退治に出かけると聞きましてな。」
狸大臣ガーヴァッソ・ムニエル・・・・
「あぁ、その予定だが・・・・・・何か用でもあるのか?」
「はい、できればでいいのですが、社会勉強にと思いましてね・・・・私の部下である、このペヴァーを鬼退治にご同行させてはもらえないだろうか。」
ペヴァーがこの狸の部下って事は、この狸がペヴァーの英雄伝説に何か関係あると見て間違いねぇ~だろ。
何か仕掛けてくるつもりか・・・暗殺?この張子に俺が殺せると?それとも手柄の横取りか?
どっちも決定打不足だな・・・・・・だが
「あぁ~いいぜぇ~~英雄誕生のその瞬間を拝ませてやんぜぇ~~ペヴァーさんよ。」
これで狸の尻尾が掴めて、お人形チャンにも近づける・・・かも知れん。
脅しがきいた、まさかこんなに早く食いつくとはなぁ~~
ククク・・・・これでまた一歩、野望実現に近付いたってこった。
「そんじゃぁ~行きますかペヴァーさんよ・・・・鬼退治へ」
「悪いが、証を持ってない者を通すワケにはいかん!」
『エルザイアの迷宮』手前で見張りをしているらしい兵士2人組に止められた。
どうやら冒険者としての証が通行証になっているらしく、ギルドでの登録を面倒だと言いしていなかったレステアが入る事を止められた。
「なんだ、1人持ってればいいだろう?」
レステアは不機嫌そうに兵士2人を睨みつけながら言う。
「い、いや・・・・そう言うワケにもい・・・いかんのだ・・・」
殺気による脅しにも屈せず気丈に任務を遂行する兵士さんに敬礼をしたい、俺なら入れてるよ・・・・
「そうか・・・・なら死ね」
瞬時に俺は兵士の腰あたりにタックルを決める
兵士が倒れた事により、レステアの手先より伸びた氷の刃は空を斬った
レステアの手に集まる異常な冷気に気付くのが遅れていたら・・・・
「何をしている光秀・・・」
「ちょ!!俺のセリフだからソレ!!何も殺す事ないと思いますよレステアさん!!」
「甘いな光秀は・・・・敵対されたのだぞ?面倒な事になる前に処分した方がいい。」
「ヒ・・・・ヒィィィィイイイ!!」
1人は押し倒した事により昏倒したが、もう1人は逃げ出した。
「チッ・・・・」
「俺が行くからッ!!ここにいて!!殺すなよ!?」
「ほら、逃げて行くぞ」
フルメイルで森の中を逃げ惑う兵士の足は遅く、あっという間に追いつき背中にタックルをお見舞いすると、兵士はそのまま眠ってくれた。
「光秀、こんな甘いことしてると死ぬぞ?」
「わかってる。でも、コイツらは別に俺達を殺すつもりじゃなかったから・・・」
殺すつもりできている奴等なら、殺す事も仕方ないと思える。
それは相手も覚悟している事だろうし、だが、さすがに見張りをしているだけの兵士を殺すのは・・・・
「光秀、ここはお前のいた世界とは違う・・・・・そこは理解しているな?」
「あぁ、その時がきたら殺さないといけないという事も分かっている。」
「・・・・・・・そうか、ならいい・・・行くぞ。」
でも、分かってはいても、躊躇せずに兵士を殺そうとしたレステアに強烈な違和感を感じた。
まるで虫でも潰すかのようだった・・・・
「予想以上に多いな・・・ここからは止まらずに蹴散らしていく、邪魔はするなよ。」
一寸先も見えない迷宮を真っ直ぐ見据えるとレステアは両手から氷の刃を出した。
「分かった。」
「はぐれるな、付いて来い。」
そう言うと、突然走り出したレステアの後ろを慌てて追従する。
速い・・・・しかもよくこんな暗闇を走れるものだ。
「ギャァァァァアアアアアア!!」「ギョェェェエエエエエエエ!!」
前の方から次々に断末魔があがる、どうやらレステアと“何か”が戦っているらしい。
戦闘によりスピードの落ちたレステアに追いつくと、そこは血の海になっていた。
「光秀!!1匹抜けたぞ!!」
つまり・・・・ヤレと・・・。
前から人間の半分ほどの大きさの小鬼のようなヤツが駆け抜けてきた、手には折れた剣が握られている。
醜悪な面と言えど二足歩行の生物、初めての戦闘・・・・クソ!!
“ソレ”は見かけからは想像できないほどの跳躍を見せ、俺の頭めがけて剣を振り下ろす
が、遅い!!レステアの剣戟からするとスローモーションにすら見える
剣を振り上げ、無防備となった小鬼のワキ下から斬り上げる
嫌な感触が剣から手に伝わる
空中を舞う胴体から斬り離された小鬼の頭と腕
剣を汚す血
俺が・・・・・・殺ったのだ。
「光秀ッ!!2匹行ったぞ!!」
レステアがそんなに敵を逃すワケがない・・・・つまり。
考える間もなく2匹の小鬼がやってくる
重心を落とし、足と腕を意識する
「ギ!!」
松明の有効範囲内に入ったと同時に下から斬り上げ1匹を殺すと、次に現れた小鬼に剣を振り下ろす
さらにもう1匹、レステアの声が聞こえなかったので反応が遅れたが、攻撃を難なくかわし背中に剣を叩き込む
「まぁまぁ、ギリギリ及第点ってところか・・・・」
暗闇からレステアが出てきた。
「やっぱりわざとだったか・・・・」
「ヌルイ事言ってたからな。」
「悪いな、気を使わせて」
「気などつかっておらん・・・・それにしてもゴブリンが多いな。」
「そう言えば、最近あまり冒険者が入らないからモンスターが増えてるって言ってたな。」
昨晩一緒に飲んだ・・・・・・・・・・名前忘れてしまった。
ゴブリンを蹴散らしながらしばらく行くと、地下へと伸びる階段が見つかった。
下からゴーーーーー、ゴーーーーーと規則的に吹き上がって来る風が、まるで息をしているように感じられた。
「光秀、ここからは迷宮自体が生きているかのように形を変える。私から離れるなよ。」
「分かった、じゃぁ~走らないのか?」
「そうだな、時間は掛かるが歩いていこう。」
「了解」
2階層は1階層とさほど変化にない石レンガ造りだった。
これでどう迷宮が形を変えるのか、実に興味がある。
ゴゴゴゴゴ・・・・
と、壁と地面が動き出す。
「おっとっと・・・・これは凄いな、まるで軟体動物の・・・・レステア?」
「光秀ッ!!どこだ!!どこに行った!!」
油断していた、わらわとした事が、まさか目の前で見失うとは・・・
「光秀ッ!!」
「ムギッ!?迷宮に小さな女の子がいるなんて・・・」
目の前から2人組みの冒険者が出てきた。
「なんじゃ、わらわに用か?」
面倒だな・・・・殺しておくか?
「まさか鬼!?」
大きな弓を持った女が訝しげにこちらを伺っている。
「ムギュ!!ルーアちゃんと話聞いてた?鬼は黄色の角が生えてるって言ってたでしょ?」
小さい方はファールー族の雌か・・・それなりのマナを宿しているな。
「仲間とはぐれたのだ、間抜け面をした黒髪の人間族なのだが見かけなかったか?」
「あーあれじゃないレンネット、さっきの男2人組!!」
「ム~黒髪って言ってたでしょ?人間族の黒髪なんてめずらしいわね、見てないわ。」
「そうか、見かけたら私の事はいいから外に出ておけと言っておいてくれ。」
「アナタ1人で大丈夫なの?アタシ達が一緒に探そうか?」
「レンネット!!早くブラニッツ見つけなきゃいけないのに!!」
「ムギィ!!でも、こんな小さな女の子放っておけないでしょ?」
そうだな、できるだけ無駄なマナは使いたくないし、ここは着いて行くのも手だ。
「そうしてもらうと都合がいい、一緒に探せ。」
すみません、アップ遅れたお・・・