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MONSTERS~モンスターズ~  作者: RAI
銀の息は全てを止める
11/12

第11話 夜の街

 「ばばんばばんばんばん~♪あびばびば」


 おきまりの歌を歌いながら久しぶりの湯船を楽しむ。


 露天風呂なんていつ以来だろうか・・・

夜の帳がおりた夜空と、心もとないランタンの灯火、木の枝から絶え間なく舞い落ちてくる紫色の花弁


その情景があまりに和風で、もといた世界の事を否応なく考えさせられる。


 実家の家族は元気にしてるだろうか?心配してないだろうか?家賃や、部屋の私物はどうなったのだろうか・・・・・もう、帰れないのだろうか・・・・・・・そして


 「いざ、帰れるとなった時に、俺は・・・・」



 レステアの事が頭にちらつく・・・・


彼女は強く、聡明で気高く、とても美しい・・・なのに、どこか儚げでほおっておけない。


一度ケンカ(一方的暴力)して以来彼女は、感情が昂ぶったり機嫌がよかったりすると、子供が話すような、少し幼い話し方をするようになった・・・


彼女自身それを恥じているらしく、直そうと心がけている様子が伺えるのだが、なぜかその傾向は顕著になってきている。


 「まぁ、そこが可愛くもあるんだが・・・・」



 ザバァァーーーー



 身体を拭きながら考える。



 帰れるとなった時、もといた世界と、レステアがいるこの世界・・・・・どちらを俺は選ぶのだろう。



 「クゥ・・・・・・・クゥ・・・・・・・」


 静かな寝息をたてながら、レステアはベッドの上で丸くなっていた。


 そういえば、そろそろ寝る時間帯だな・・・・・


 山奥の洞窟で、焚き火の明かりしかない夜の世界で、できる事は話す位しかなく、日が暮れるとレステアと話ながら、夜の7時~8時位だろうか?その時間帯には眠りについていた。


 シーツをレステアにかけると、そっと部屋から出る。



 だがしかし!!ここは山奥ではない・・・・・寝るにはまだ早すぎるだろ。





 「あら、不思議な色の瞳と髪をしてるわね・・・・・どう?私と遊んでいかない?」


 「いやぁ~貧乏なもんで・・・ツケききますか?」


 「はぁ?貧乏人に用はないよ!」


 途端に豹変する娼婦。

我ながら、なかなか上手いこと考えたと褒めてやりたいところだ。


 なるだけマナが漏れ出さないよう注意しながら夜の街を歩く。

昼間見かけた、冒険者ギルド横の酒場、あそこなら何か面白い話や情報が聞けるかも知れない。



 カランカラン・・・・・カラン・・・・



 西部劇に出てくるような酒場、見るからにただ者ではない者達、アルコール臭充満する店内・・・


 見慣れない奴を観察するような視線を浴びながらカウンターに座る。


そして、どうしても言いたくなったセリフを衝動に負けて口にしてしまう。



 「マスター、ミルクをひとつ!」



 ギャハハハハハハハハ!!ミルクだってよ!!



 下品な笑い声が店内を覆いつくす。


 やった!!思ったとおりの反応だ!!こんなコテコテの反応、今時珍しい!!とくに日本では・・・


 小銅貨をカウンターに出すと、木製のジョッキに注がれたミルクがドンと目の前におかれる。


 「おいおい坊主!!ここはお子様の来る場所じゃね~んだぜ?」


 酒臭い息を吐きながら、毛むくじゃらの男が隣の席に座る。

腕の太さ、傷だらけの身体、使い古され、しかし手入れの行き届いたタバルジン(片手戦斧)、なかなかの(つわもの)らしい只ならぬ雰囲気を放っているが、レステアに比べればカワイイものだ。


 「いいタバルジンですね・・・まるでドラゴンの爪の様だ。」


 武器の良し悪しは分からない、が、この男が大切に使っているだろう事は分かる。兵が愛用している武器が、悪い武器なワケがない。

それに、自分の愛用品を褒められて嬉しくないワケがない・・・しかし、ドラゴンの爪は褒めすぎたか?


 「おぉ!!!相棒の素晴らしさが分かるか小僧!!」


 小僧って年齢ではないし、素晴らしさも分からないが、多少の人付き合いなら心得ている。


 「いや~ここが戦場じゃなくてよかったよ、じゃなきゃ逃げ出してたとこだ。」


 「ブハハハハハハ!!気に入ったぞ小僧!!おい、こんなシケたモンじゃなく、男の飲み物を俺様が特別にご馳走してやるぜ!!マスター!!ボム酒だ!!ガハハハハハハ!!」


 日本社会で鍛えたよいしょスキルが、こんなトコで役に立つとは・・・・





 「ほら、あそこで酒を飲んでいる女2人組み、あの2人が殺されたと言われてるブラニッツのパーティメンバーだった2人だ、あのチビっこいのも四英雄の1人で、かなりの腕前らしいぞ。」


 毛むくじゃらの男は、見かけによらず気のいいヤツで、最近起こった出来事を色々と話してくれた。


 「あ、ホグルードの塩漬け肉2人前追加で!ガルドさん、お酒追加します?はい、ボム酒1つ追加で・・・あと果実酒。」


 「なんか悪いな光秀、逆にご馳走してもらっちまって!」


 「いえいえ、それだけの価値がありますから“ガルドさんの”話には」


 「ガハハハハ!!そうかそうか!!ガハハハハ!!」


 嘘ではない、情報は時に金以上の価値を持つ、命に関わる情報ならなおさらだ。


 「で、その鬼とやらを見たって人は?」


 「あぁ、みんな病院行きさ・・・と言っても、そんなにいないがな、鬼の姿を見て帰って来た奴は。

結構な実力者も犠牲になってるからな、みんな鬼にブルっちまって迷宮に入りすらしない、入っても2階層まで、俺は最近3階層まで行ったがスグに引き返しちまったよ・・・入ったとたん肌で感じた・・・・・あそこはヤバイ。」


 そう言うと、ガルドは酒を煽る。


 「光秀、お前は行くなよ?俺はお前の事を気に入った!!気に入った奴が死ぬのは辛いからなぁ~」



 カランカラン・・・・・カラン・・・・・


 と、酒場に誰か入って来た。


 しんと静まる店内。


 まるで、息をするのさえ躊躇われるような緊迫感・・・・・渦巻く強大なマナ・・・・




 「光秀・・・・」



 静かな、しかし底冷えするほどの怒気が篭もった声・・・・


 誰も動けない、動いたら・・・・・殺される・・・・・。



 「主人を置き去りにして酒盛りとは、随分と偉くなったものだな・・・・光秀。」


 「その酒代はどこから出てると思っている?私の身体(鱗、甲殻)を売った金であろう?その金で酒盛りとはのぉ~」


 ガシャン!!


 首根っこを掴まれると椅子から引きずり落とされる。



 「一度、徹底的に躾なければならんのぉ~~~光秀。」



 ズル・・・・・ズルズル・・・・・・


 「た、たす・・・・・・・」


 カランカラン・・・・・カラン・・・・・




 「何者だあの娘?」

 「ありゃ人間じゃないな・・・・神や悪魔の類だ。」

 「あのミルクボーイ・・・・死んだな。」

 「しかし、あの男もヒドイ奴だな・・・・自業自得。」


 「マスター、光秀の・・・・弔いの酒をくれ・・・・」












 「光秀!!背中ばかりじゃなく、ちゃんと前の方も洗え!!」


 光秀のヤツめ!!わらわを置き去りにおって!!


 クソ、狼狽してしまった自分が恥ずかしい・・・


 「いえしかしお嬢様、そのような・・・」


 「なんじゃ?わらわに刃向かうのか?」


 「いえ、決してそのような・・・・」


 あたり前じゃ!!余計なことは考えず、わらわに言われたまま動いてればよいのだ!!


 「早くしろ!!」


 「でわ・・・・・」




 「・・・・・・・・・・・・・んっ・・・」



 「お、お嬢様!?」


 「な、なんじゃ!素っ頓狂な声をあげおってからに!!」


 「もう綺麗になったと思います・・・・よ?」


 「ひとなでしただけであろう!!ほら、黙って手を動かせ・・・」


 「はい・・・・・」



 「・・・・・・・っ・・・・・・っ・・・・・くっ・・・・・もうよい・・・」



 「・・・・・はい」


 「ん?光秀も洗ってほしいのか?」


 「そんな!!わたくしめは先程自分で洗いましたので!!」


 なんじゃ、つまらんヤツじゃ・・・



 紫色の花弁に彩られた湯に浸かる。


 妙に緊張した光秀は、わらわに背を向けて「俺はロリコンではない!!」と、頭の中で唱えている・・・・・ロリコンとは何であろうか・・・・


 「光秀・・・」


 「はひっ!!」



 「もといた世界に帰りたいか?」






 「・・・・・・・・・・・・・・・・・帰りたい・・・かな。」



 何やら迷っているようだが、よく分からない・・・・・・最近、光秀の心が読み辛くなっている。

わらわの与えたマナが、光秀のマナとして、わらわのマナとは少しずつ変化しているのが大きな要因であろう。


 「この世界は・・・・・好きか?」


 わらわは何を光秀から聞きたいのであろうか・・・・自分で分からない。


 「正直分からない・・・・俺はまだ、この世界の事をあまり知らないから。」




 「わらわの・・・・・・・・」


 「ん?」



 「・・・・・・・・・・なんでもない、あがるぞ。」


 ザバァーーーーーー







 寝る気満々で着替えをしている光秀に、少し腹が立つ。



 「光秀、おぬしはここで一晩中立っておれ!!」


 「え?マジで?」


 「マジじゃ・・・・・1人で出かけた罰じゃ!!」


 「はい、お嬢様・・・・・・・」


 「うむ、ではおやすみ」


 「・・・・・・・・・・・・おやすみ」






 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・・・・




 ・・・・・・・・・・・・・・・・





 「光秀・・・・・・・もうよい。」


 「は?」


 「わらわは慈悲深いのじゃ、わらわの横で寝る事を許そう・・・」


 「はぁ・・・・」


 


 「それに今日はまだ、話を聞いておらん・・・・」



 光秀が、ごそごそと横に入ってくる。



 「では・・・・・・・今日は、『シュレディンガーの猫』という話をしよう。」



 光秀の口から紡がれる異世界の話はどれも興味深く、知的好奇心を刺激される。



 「その猫ははたして生きているのか・・・・・それとも死んでいるのか・・・」




 本格的な迷宮探索は次の話からです。


 すいません!!この話、さっきまで中途半端な状態で投稿されてたみたいなんです!!


 ほんとすいません;;

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