王女と孤独
この物語は、ボカロの曲「1000年生きてる」をモチーフに作りました。
額縁の中で人には想像のつかないほどの長い時間を過ごす王女に、空虚と孤独に襲われる王女に
どうか寄り添って読んであげて欲しいです。
或る所にに一つの絵画があった。
その絵画は無名の画家がおよそ五百年以上前に描いたとされる、一人の女性の絵だった。絵の女性はよくある王女の王冠とドレスを身につけて、額縁の中で微笑んでいた。
この物語は、額縁の中で微笑む王女の孤独な話。
私は、名もなき王女。
名前は誰もつけてくれない。だって存在を知られていないから。私は今、私を生み出した画家の書斎の額縁の中で過ごしている。
記憶もない。
額縁の中でしか動けない。
今日は、私を生み出した画家の子孫と思われる人が来ていた。眼鏡をつけている、聡明そうな人だった。彼は私を見て目を細めてため息をつき、帰っていった。
皆、私を見てため息をつく。あぁ、なんてことなのだろう。誰も私を見ていない。観ているだけ。
額縁の中で微笑んでいる王女を観ているだけ。
微笑みの奥で一人寂しく立ち尽くす私を誰も見ない。
500年もこの孤独と二人ぼっち。
もう友達を超えてしまったのだろう、慣れてしまったようだ。
けれど
もう私に注目する人はいない。
もう私を見つけだす人はいない。
あぁ、なんてこと。
この空虚と孤独から解放されたいと願ってしまう。
…おぉ、神よ。私をこの苦しみから救いたまえ。
聖歌のような美しい歌がどこかから流れてきた。
この時代にも、まだ聖歌は歌われているのだな。
美しいけど、歌い手はどのような気持ちで歌っているのだろうか。信心深い者なのだろうか。
いや、どちらでもいい。
どちらだとしても私には関係はない。
私は束縛されて動けずにいる不憫な王女。
外の世界のことなど、どうでもいい。
私は額縁の中でただひたすら、迎えを待つ。
どこにいるのかわからない、そもそも存在しているのかすらわからない、王子様と骨も残らぬ父親と母親のことを想像しながら。




