第九話「詠唱はたこ焼き、技名は普通」
俺たちはギルドに戻る。
「すごいです! まさか二週間もたたずにFランク最強のゴーレムを倒してしまうなんて!」
受付嬢はそういって驚いている。
「これでレージさまたちはEクラスへと昇格しました。 おめでとうございます」
そういうと、周りから声が聞こえる。
「あいつら二週間でEランクだと!」
「早すぎる! 何者なの!?」
「二人は美少女、一人は普通の男。 一体なんなんだ......」
そう周囲の声を感嘆の聞きながら、俺たちはギルドをでた。
(二人とも聞こえないふりしてるが、鼻がひくついてる...... めちゃくちゃ意識してるな)
それから三日後。
俺は宿で魔法の練習をしていた。
「よし、なんとか回復魔法も安定して使えるようになった。 これであいつらに命を預けるバクチをはらなくてよくなった。 ん? そういえば」
二人がいないことにきづいた。
(たしかあの時、ギルドからでたら興奮していて......)
「よし! 新しい鞘をつくるで!! ごっつい細工のある金のやつ!」
「私はドレスがほしいです! この服ではすごさがわかりづらい!!」
そういってうっとおしいから、小遣いを渡したことを思い出した。
「どうせろくなことに使ってないだろうが......」
宿のドアを開けると、そこには二体の人型モンスターがいた。 俺は剣をぬいた。
「モンスター!!」
「誰がモンスターですか!」
「失礼なやつやでほんまに!」
モンスターかと思ったら、よくみるとティティたちだった。
「ああ、お前らか。 なんだその派手な服とまっ白い顔は」
「ええ、私たちはEクラスにふさわしいようにドレスアップしたのです」
「せや、これで周囲を驚かすんや」
「なるほど、モンスターを威嚇して不意を突くってのか。 確かにそれで四つん這いで奇声をあげて迫ったら、モンスターも逃げるな」
「ちがいます!」
「そうや! 誰が魔除けや! ようみてみい!」
信じられないぐらいの厚化粧で顔を近づけてきた。
(こ、こいつら、まさかマジでいってるのか...... そうか! かたや天界で一人でいたアホのぼっち。 かたや世の中などしらんアホの刀の精霊、二人ともおしゃれとは無縁の生活だったはず......)
「えっ...... これおかしいですか。 えっ......」
「そうなん...... 店の人がお似合いですいうてはったんよ」
二人が泣きそうになっている。
(まずい!! このままだとテンションがたださがる! そして確実にめんどくさくなる!)
「あ、ああ、うん、いいね」
(なんとか、これで乗りきる!!)
「どんな風にですか?」
「なにがええんや?」
(嘘だろ! 詰めてきやがった! どうする! この二人、誉めると絶対に調子に乗る。 しかし、けなすと落ち込む上にやけになる。 究極の選択だ! なんとかこの場を......)
「ああ、うん...... 個性的で面白いな!」
俺は土壇場でこの言葉を絞り出した。
「個性的......」
「面白い......」
(だ、ダメか)
「そうです個性的でしょお! 常人とは違うのです!」
「そやで! 面白いんやで!!」
二人は上機嫌になった。
(はふぅ! なんとかバカだから助かった......)
「あー! モンスターがいる!」
その時、通りががかった母親につれられた小さな男の子がそういった。
一瞬でその場の空気が凍る。
「そんなこと言っちゃいけません!」
「でもいるもん! モンスターだもん! 嘘じゃないもん!」
「いいからこっちにきなさい!」
「いるもん! モンスターだもん! 変だもん!!」
男の子は母親につれられ泣きながらさった。
恐る恐る二人をみると、信じられないぐらい下を向いて表情が見えない。
「............」
地獄のような沈黙が続く。
「あ、あの...... あーー」
二人は無言で宿から走り去っていった。
それから夜になると元の姿で戻ってきた。
「いやー ほんとはわかっていたんですよ! 何か違うなって! でもほら店員さんがおすすめするから、やらないわけには、ね、ね」
「そやな! やっぱ人の好意は素直にうけやなな! うん! しゃーない! あれはしゃーなかった!!」
「そうだな! ははは......」
「ははは......」
「ははは......」
そして俺たちは二度とこの話題を口にすることはなかった。
「ここが、【エンシェントシェル】のいる湖か」
俺たちは依頼をうけ、大きな湖へと来ていた。 湖面にはモヤがかかり、幻想的な雰囲気をかもしだしていた。
「ええ、Eクラス最強のモンスター。 これを倒せば私たちもDクラス昇格は確定。 さらなる名声をえられるはず」
そのとき、湖面から、島のような巨大な貝があらわれた。
「あれか!」
「ならば、ウチらにまかせてもらうで!」
「また、ぶっとばされるんじゃないだろうな」
「心配ご無用。 私たちは二人で新たな力をえたのです!」
「そや! ここはウチらにまかしとき!」
自信満々に二人は言う。
(まあいいか。 ダメでもいつものことだからな)
二人は走りだし、リヴァルガが刀となりそれをティティがにぎる。
「ではいきますよ! 炎よ! まとえ、踊れ、舞え、揺さぶれ、ふるえろ、ゆれろ、狂い盛れ、中はふわふわ、外はカリカリ......」
「なげーな! それでなんで最後たこ焼きなんだよ!」
「いくで! サイコパシー、マキャベリズム、ナルシズム、ダークトライアド、中はふわふわ、外はカリカリ」
「ワードがこえーし、そして結局たこ焼きかよ!」
「「ファイアブレイド!!」」
「技名はごく普通!!」
ティティが高くまいあがり、炎をまとった刀を振り下ろすと、貝は両断され湖面へと沈んでいった。
「おお!! 本当に倒した! なんで炎をまとったかは意味はわからないが...... 確かにすごい!!」
「ふふっ、この程度女神ならば当然のこと」
「そや、ウチは刀の精霊、容易きことや」
そういうと二人はチリチリになったアフロヘアで、颯爽と歩きながら言った。




