第六話「肉を守る女神と消える肉」
「ラッキーでしたね! 杖とローブまで手に入れられました! これ魔力軽減のローブですよ! こっちは魔力増幅の杖です!」
そう無邪気にティティは喜んでいる。 俺たちは【シルバービッグ】というモンスターを狩りに草原へとやってきていた。
「それはいいけど、これ本当に大丈夫だろうな。 呪われてないよな」
「ありえません。 私が言うんだから」
(それがすこぶる不安なんだよな。 まあ細工とか精巧だし、かなり高価な剣のようだけど...... というか日本刀だよな。 この世界に刀? 売り主がげっそり痩せ細って返してきたって話だが)
おれは刀を抜いて考える。 刀身が美しく輝く。
「そんなことより、ほらあそこ! あれじゃないですか!」
ティティは草原の奥を指差している。
「ん? あれか」
遠い草原の中に銀色の毛をもつ豚がいる。
「ええ、シルバーピッグです! やっと食べれるお肉ーーー!! 我々貧乏でお肉なんて久しぶりですよ!」
「まて! あの銀の体毛は鋼なみなんだぞ!」
そういって止めたがティティは走っていき、シルバービッグにぶつかられ宙をまった。
「た、助けてくださーい! 助けてくださーいレージさーん!」
お手玉のようにピッグたちにぶつかられて宙をまうティティを横目に、別のシルバーピッグに近寄ると俺は新しい刀をふるう。
「ヴァリアブル【切る】】
「ブヒィィ!」
刀はモンスターのその硬い毛皮を簡単に切り裂いた。
「すごいな! なんて切れ味だ!」
「た、助けてくださーい! 聞いてますレージさん!? 女神さまが助けてっていってますよー!!」
すこしだけ横目でその姿をみる。 そして他のモンスターをさがす。
「これならこいつらを狩るのは難しくないな」
「よし十匹狩れば十分だろ! 頼まれたのは八匹だしな」
「......ひどいです。 私が空中をまってたのに、笑いをかみころしてましたよね。 助けを求めてたのに、飛ばしているモンスターだけ狩りませんでしたよね......」
泥だらけになったティティが恨めしそうにいった。
「俺がまてといったのに突っ込むからだろ。 お前は攻撃方法がないんだから」
「だって、だって! 私もモンスター倒したかったんだもん!」
「そんなことはいいから、さっさと浄化と回復使えよ。 余った肉をさばくんだろ」
「そうでした! クリア、ヒール!」
きれいになったティティは早速豚の調理にはいった。
(お金がういた分、調理道具を無理やり買わされたからな...... 雑貨屋でじたばたと地面に寝転がってただこねられたし、本当に料理なんてできんのかよ。 嫌な予感しかしないな)
だが予想に反して手際よく豚を解体して、クリアを使い肉を取り出していく。
「さて、これからお肉を焼きますよ!」
そういって肉を焼くと、付け合わせの食材を盛り付けている。
「さあ、できましたよ!」
待っていると、きれいに盛り付けられた料理をだされた。
「さあ、どうぞ!」
「ああ、いただきます......」
(見た目はきれいだ。 それが逆に恐ろしい。 だがただ焼いて塩をかけただけ、まさかこの見た目で食べられないとかないよな)
「う~ん、おいしい!!」
ティティは山盛りの肉を頬張り美味しそうに食べている。
(こいつどんだけくうんだよ。 まあ自分で食べてるなら大丈夫か...... いやまて! こいつは頭が壊れている! 味覚や胃腸が壊れていてもおかしくない!)
「ほら! 遠慮しないで! おいしいですよ!」
期待の眼差しでこっちをみている。
(し、しかたない! 腹をくくるか! 最悪死んでもこの面倒なことからにげられるとポジティブに考えよう!)
目をつぶり口にはこぶ。
「!!!」
「うまい!! 予想に反してうまい!!」
「予想に反してってなんですか!」
「ま、まさか、こんな特技があったとは! フルポンコツだと思っていたが......」
「フルポンコツってなんですか!?」
俺はティティを見直した。
「さて、もう一口...... あれ?」
皿にはなにもなかった。
「あーー! 私のお肉が!!」
取り乱したティティがこちらをみた。
「......レージさん。 そこにお座りなさい」
そういってティティは正座してこちらをみる。
「なんだよ」
「このような殺伐とした世界でも、人としての道を失ってはなりませんよ」
「どういうことだ?」
「人のお肉をとるなど、人としてやってはならぬこと」
「取ってないわ!」
「私はあなたの守護者、つまり保護者のようなもの。 厳しくなるのもしかたなきこと、これはあなたのためなのですよ」
「だからとってないっての! 俺の肉もなくなったんだって!」
「はい、はい、もう一度作ります。 最初からつくってほしいといってください。 食いしん坊なんだから」
そうため息をつき、立ち上がった。
「ちがう! 俺じゃない!」
「......犯人はいつもそういう」
そういってティティは俺をじとっと横目でみて、肉を調理に向かう。
「ちがうのに! くそっ! これじゃ俺が意地汚いみたいだ!」
「あっ!」
そういうティティのほうに向かう。
「なんだ! 指でも切ったのか!」
「いえ、お肉が......」
そこにあった生肉がなくなっていた。
「......生肉は命に関わるぞ」
「食べてません! ここにおいといたんです! でも......」
ティティは首をかしげている。
「しかし、ここには俺とティティしかないしな」
「ですよね...... いえ何かの気配がします」
そうキョロキョロとティティは辺りをみまわした。
「気配? なんにもないけど」
「ふふふっ、私からお肉を奪うとは...... ふふふっ」
そうティティはバキバキの目で残りの肉を解体しはじめた。




