第三話「吊るされた女神と冒険者ギルド」
「ふぅ、結構腰がいたいな」
おれたちはこの町の富豪の庭の草むしりのバイトをしていた。
「よっ!」
楽しそうにティティは草を引き抜いている。
「楽しそうだな」
「ええ、人のためになりますからね。 最近力がなくなり神殿で下界をみるだけでしたので、実際に人のためになるのは楽しいのです」
そう顔に土をつけて微笑んでいる。
(さすがにそこは女神らしいな...... そうだ思い出した!)
「なあ俺に与えた力ってなんだ!? お前のことだからあてにならんと思って記憶から抹消してた」
「どういう意味ですか! あなたに与えたのは確か...... 【ヴァリアブル】ですね」
「ヴァリアブル...... 変数?」
「ええ指定した変数で最適化できる...... だっけ?」
「あやふやだな!」
「使ったことないんです! でもかなりの力を使ってますから、とりあえずやってみてください」
「とうやって使うんだ」
「ヴァリアブルって叫んでポーズをつけます」
そういってティティは両腕をクロスさせ、片足をあげた。
「ダセェ! もう使わない!」
「やってください! 私の残った大半の力を使ったんだから!」
「はぁ、しかたない...... ヴァリアブル!」
同じポーズを取る。
「ああ、別にポーズはいらないかも...... ぷぷっ、変な格好」
「ふっざけんなよ!」
『【ヴァリアブル】を設定してください』
「うおっ! なんか聞こえる」
「ああ、音声マニュアルですね」
「そんなのあるのかよ。 設定とは」
『設定された行動を最適化します』
「わかった【草むしり】」
『草むしりを設定します』
「うおっ! からだが勝手に動く」
勝手にからだが動き草むしりを始めた。
「なるほど、簡単に動くな。 これは楽かも、マニュアルどうやって止める」
「私に聞いて! 私に!」
そうバタバタと腕を振りティティが騒ぐ。
「うるせえな。 じゃあどうやって止めるんだ」
「わかりません!」
「二度としゃべんな! マニュアルどうやって止める」
『解除と念じれば止まります。 もし解除しない場合、体力の続く限り行動を取りますのでご注意ください』
「それはひとつだけの指定なのか」
『脳への負担からひとつ以上は危険です。 過負荷で脳の神経が焼ききれる可能性があります。 魔力が得られれば増やすことも可能です』
「魔力ってなんだ」
「はーい、はーい! 魔力とはこの世界のエネルギーのことです!」
ティティが手を上げてピョンピョン飛んでいる。 無視しようかともおもったが、面倒だから聞くことにする。
「エネルギー?」
「はい、自然や生物など万物にあり、それを用いて魔法などがつかえます」
「そうか、それはおれももってるんだな」
「ええ、ですが、あなたの世界ではほとんどの人間は使っておらず、とても微弱です。 まあ使いたいならお教えしないこともありませんが......」
ふふん、とおれを見下すようにティティはいった。
「あっ、けっこうです。 マニュアルさんに聞くので」
「まってください! 教えます! 教えさせてください!」
「じゃあさっさといえやポンコツ」
「ひどい...... お腹の少し上に貯められます。 そこに意識を集中するのです。 まあもちろんすぐにはわからないですがね...... ふふん」
「ああ、これか」
「フェ!?」
「この暖かいのだろ」
「嘘でしょ!」
魔力を集めながら、夕方には草むしりをおえた。
「くはっ! やはり効率がいいとはいえ、体にものすごい負担があるな」
「ええ、つかれましたね。 ただ二日の予定を一日でこなしたため、喜んで200ゴールドのところを500ゴールドも包んでくれましたよ!」
そう袋に入った硬貨をみせた。
「しかも、すごい誉めてくれましたね!」
そうくねくねしている。
(そんなうれしいか)
「まあ取りあえず宿に泊まって、あした武具を手に入れよう」
宿に泊まり、次の日武具屋へとむかう。
「さて、何を買うか」
武具が整然とおかれている店にはいる。
「お客さん今日はなにかようですか?」
太った中年の店主が声をかけてきた。
「目立つ派手な武具がほしいです!」
「ああ、こいつは無視して結構です。 冒険者の登録に必要なロングイヤーってモンスターを倒さないといけないんだけど...... 300程度で防具も込みでない?」
「ええっと、それならこの銅剣と皮鎧ぐらいですね。 魔法もかかっていて、ロングイヤー程度の弱いモンスターなら十分使えますよ」
手に取ってみると予想以上に軽い。
(なるほど魔法がかかってるってこういうことか)
「じゃあこれ、いくら?」
「これなら200ですね」
「あと100か......」
物欲しそうな顔で口を開けてティティがみている。
「えーと、このアホ面に100ゴールドでなにか見繕ってくれる?」
「だれがアホ面ですか!」
「100では......」
「ああ、この子ちょっと頭がせつないんでお願いします」
おれはそう困り顔の店主にいった。
「なんとなくそう思ってましたが、それはかわいそうに...... わかりました。 この杖とローブを200のところ100でお譲りしましょう!」
「ありがとう!」
そうやって武装を手に入れた。
「誰が頭がせつないんですか! それに店主も何となく思ってたって! 失礼にもほどがあるでしょう」
「でも装備が手に入ったろ。 よく似合ってるよ」
「ええ? そうですか。 まあそうですよね!」
そうティティはくるくると回っている。
(アホで助かる)
「さていくか。 それでロングイヤーってなんだ」
「ウサギですね。 長い耳をもち作物を荒らす害獣です。 たいしたモンスターではないです」
「うーん、生き物を殺すのはな」
「モンスターはただの生き物ではありませんよ。 魔力により、無理やり命を変容させた、本来の理より外れたもの。 魂が破壊と憎しみに染められてるから倒せば、その苦しみから解放されます」
「つまり救えるってことか、ならいいか」
おれたちはモンスターが見つかるという畑に向かった。




