第十九話「白きローブの剣士サクラス──魔法を纏う剣と女神の拳」
「やったわ! これで報酬金がはいるな! それに帰ったらあれがある。 ぐふふ」
リヴァがそう笑いを噛み締めている。
「いや、今回はゴーレムを倒すだけが依頼じゃない。 こいつらが集まる理由を探るのが目的だ」
「また無益な殺生をしてしまった......」
ティティがゴーレムの前で祈りをささげている。
「拝んでる場合じゃない。 ティティ魔力を感じるか」
「ふむ、あるな。 こやつの腹から感じる」
ゴーレムの胴体から青い宝石のようなものがでてきた。
「これか...... 邪神の宝玉ににているな」
「なんやこいつ食うとったんか? 餌か?」
「いや、消化器官とかはない。 やはり集めてるのかもしれないな」
「あのネルネストとかいう金もちのおっさんみたいにか?」
「わからん......」
「気を付けよ。 強者の気配がする......」
ティティが後ろを向き静かに構えた。
俺たちがきたほうから足音がする。 それは白いローブをまとった整った顔の人物だった。
(女、いや男か......)
「ゴーレムが...... 何者です......」
「そりゃ、こっちの台詞やで。 お前はなにもんや」
「......私は【サクラス】。 そのゴーレムを倒したということは遺物をもっていますね」
サクラスは異様なオーラをまとっている。
(丁寧な物言いなのに圧迫感がすごい...... 戦って勝てるかわからんな)
「......なぜこれを探しているんだ」
「それに答える義務はないでしょう。 それを渡してください」
「あほか! 渡したからって無事に見逃してくれるわけないやろ! そんなもん悪党の上等手段やろーが!」
「私は正しきことのため、その力を行使しています。 邪魔をしないでいただきたい」
サクラスがそういうと、ティティが前にでて手のひらを上に曲げて招いた。
「御託はいい...... かかってくるがよい」
(今のティティならやれるか......)
「......女性とて容赦はしませんよ。 特にあなたは......」
(どういうことだ? ティティを知っているのか)
サクラスは剣をぬき、距離をつめると、その華奢な体に似合わず凄まじい斬撃をくりだす。
それをティティは巧みにかわし、蹴りと拳による連撃を叩き込む。
「おお!!」
「やりおる!」
「くっ...... まさか、これほどの強さとは。 やはりあなたたちですね、ゴーレムを倒して回っているのは......」
「やはり貴様の仕業か。 何を企んいるのか話してもらう」
ティティがそういうと、サクラスが構えた剣が輝く。 それが振り下ろされるとかわしたティティの横の地面が裂け後ろの壁も切れた。
「なんだ! あの威力!! 当たったら死ぬぞ!」
「せやけどティティはかわしとる! いける!」
「う...... はれ? 私はなにを...... ええええ!!! なんか地面が裂けてるぅ!?」
ティティは驚いてきょろきょろしている。
「だめだ! こんなときに達人モードが切れたのか!!」
「あかん! ティティのやつ、なんかわたわたしとる! 次はまっぷたつにされる」
(ポンコツに戻ってしまった! しかたない! やれるかはわからんが、ぶっつけでやるしかない!)
「リヴァ! 刀になれ!」
「わ、わかった!」
俺はリヴァを刀にすると、ティティの前にたった。
「これで終わりです」
サクラスはかまえまた剣が輝く。
「ヴァリアブル【魔力をまとう】!!」
俺はふるわれた剣をそれではじいた。
「なっ!? 私の剣を弾いただと!!」
(なんとか一撃は防いだ...... ただ体がしびれる)
「ティティ! いまだ!!」
「は、はい!」
ティティはサクラスの隙をつきその拳を叩き込んだ。
「ぐっ!!」
サクラスは後ろに吹き飛ぶ。
「なかなかやりますね...... ここは引かせてもらいましょう。 【転移】《テレポート》」
ふらふらと立ち上がると、サクラスその体は光りに消えた。
「今のは......」
「転移魔法ですね。 かなり高位の魔法ですよ」
「せやけど、よう今の防いだな?」
「ああやつが光を放つまえに剣をはじいた。 あれは多分魔法を剣にまとわせたんだろう。 ティティが魔法を拳に纏わせたようにな」
「ああ、そういや。 ティティの拳が冷気をまとっとったっけな。 あれ魔法を拳に纏ってたんかい」
「えっ? 私そんなことしてましたか?」
ティティはポカンとしている。
「お前、ちょいちょい人格かわってるぞ」
「えっ? そんな!」
「いや、気づくやろ」
「そうなのですか。 じゃあ、夜中に気がついたら、みなさんの食べ物をむさぼってるのもそのせいか...... くっ!」
「くっ、じゃない。 それは普通のお前の欲望だ」
「己の食い意地をしかたないみたいにいうなや!」
手に入れた魔力の石をみる。
(しかし、あのサクラスという男...... 何者だ)
俺はやつにそこしれない怖さと不安を感じていた。




