表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神と婚約破棄した最強のおっさん退魔師。~村と愛に縛り付けられて40年、全てから解放された中年は常識の外にいた~  作者: 八月 猫


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/37

第3話 月読命

 まるで昔の絵巻物に登場するような異形な姿。

 銃火器などの武器が全く通用しない敵。

 人を襲い、その血肉を貪る悪夢のような存在。


 政府はこれを「餓鬼(がき)」と名付けた。


 妖怪、という存在であるかどうかは別にして、少なくとも人類の科学の力では抗う事すら出来ない最悪の敵。

 その犠牲者は日を追うごとに増えていった。


 海外へと逃げ出した者も多くいた。

 近隣諸国から救助の為に飛行機や船を出してくれていた国もあった。

 しかしその全てが闇との境界付近で消息を絶っていた。


 このまま日本は滅んでしまうのか?

 全員が餓鬼どもの餌となってしまうのか?


 人々は絶望に暮れ、その祈りは神へと向けられた。

 普段信仰心など持たない人たちも、今となっては超常的な存在にすがるしか正気を保つことが出来ないほどに追い詰められていたのだ。


 そしてその祈りは奇跡を起こす。




『私の名は月読(つくよみ)。この国の夜の世界を司る神です』


 夜空のスクリーンに投影されたかのように現れた巨大な一人の女性の顔。

 見えているのは細く伸びた首筋から肩へのラインまで。

 その肩の辺りまでの短めの黒髪。眉の上辺りで真っすぐに切り揃えられた前髪。

 切れ長で見事なまでの一重の美しい瞳。

 整った鼻筋から小さめの唇へのセンターラインは若干の幼さを感じる。


「え……神様?」


「いやいや、そんなものいるはずないだろう……」


「神様!私たちをお救いください!!助けて!!」


「落ち着け!騒いだら餓鬼に気付かれる!」


 誰もが一目で美人だと感じるだろう容姿の女性は、落ち着いた口調で自らを神だと名乗った。


『まずは私から今の日本の状況について説明いたします』


 その声は直接頭の中に語りかけてくるように聞こえ、それまで家の中にいた者や、眠っていた者たちも慌てて屋外へと飛び出して空を見上げた。


『今この日本は一時的に神々の住まう高天原(たかまがはら)と繋がってしまっています』


「神々の住まう高天原?」


「なんか聞いた事あるような……」


「ほら、古事記や日本書紀に出てくる」


「そんなの読んだ事ねーよ!」


「陶器?」


「それは日本食器な」


『その原因は、この日本の昼の世界を、そして高天原を統べる私の姉神である天照(あまてらす)が天の岩戸へとお隠れになってしまったことに起因します。統治者を失った高天原は同じく統治者を失った日本の昼の世界へと浸食を開始してしまったのです』


岩戸隠(いわとかく)れ……」


「なんか聞いた事あるような……」


「ほら、古事記や日本書紀に出てくる」


「だからそんなの読んだ事ねーよ!」


有鱗目(ゆうりんもく)トカゲ科の?」


「えーと……多分それはイワトカゲな。そんなに近くねーよ?」


『その事が影響し、この世界にも黄泉の国より魑魅魍魎が流れ込んできております。すでに多くの方が犠牲になっておられること、これに関しては完全に私の手落ちです。亡くなられた方にはお詫びも兼ねて、チート能力付きで異世界へ転生していただきました』


「なんだって!?」


「はい!はい!はい!はい!俺も転生したいです!!」


「俺もハーレム作りたいです!!」


「私は悪役令嬢をやり直してヒロインに逆ザマァしたいです!!」


「スライムにしてください!!」


「ゴブリンでも良いです!!」


「ケモ耳ー!!もふもふー!!」


『残念ですが転生枠は私がここに来た時点で締め切らせていただきました』


「なん……だと……」


「あぁぁ……終わった……」


「この世には神も仏もいないんだ……」


『いや、皆さんの目の前に神がおりますが?』


「月読様!!お聞きしたいことがございます!!」


 全国の人たちが口々に話している全てを把握している月読。その声の中から一人の男の声に反応した。


『あなたは確か今の……』


「はい。私はこの国の総理を務めさせていただいております八咫(やた)と申します」


『分かりました。では貴方を国の代表として認めましょう』


「ありがとうございます。月読様。質問がございます。この日本は貴方様のお力で助けていただけるのでしょうか?」


『もちろんです。その為に私はここに来たのですから』


「マジか!?」


「月読様マジ有能!!」


「さすがは自称神様!!」


『ただ、元通りにする事は出来ません。私が司るのは夜の世界、そして月。天照のように太陽を戻す事は出来ないのです』


「それではどのように?」


『この国を完全に私の統治下におきます』


「月読様の統治下……つまり夜の世界であることには変わりないということでしょうか?」


『そうですね。形式上は夜の世界です。しかし月の力をもって昼夜を作る事は可能です。太陽の代わりに光を増した月の明かりで仮初の昼間を作りましょう。もちろんこれによって作物もこれまで通り育てる事が出来るでしょう』


「おお!それは助かります!では、今国民を襲っている餓鬼たちも月読様のお力で――」


『それは出来ないのです』


「え!?」


『私たち神が干渉出来るのは世界そのものであって、そこで起こったことを直接どうこうするわけにはいきません。それに黄泉の国は私の管轄ではありませんので、そこの者に手を出す事も出来ないのです』


「そんな……それでは遅かれ早かれ私たちは……」


『ですから、皆さんには魑魅魍魎と戦う事の出来る力を与えましょう。ここをそういう世界だと設定することは可能ですからね』




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ