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ラインスナイプ! 世界を驚かせた高校生テニス少女の物語  作者: ヨーヨー
第二章 体育連盟テニス大会編

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第23話 エースメーカー

準々決勝。会場に立つと、そこにはこれまでとは次元の違う熱気が渦巻いていた。観客の視線の先には、無数のサービスエースを量産することで名を馳せた選手――“エースメーカー”。圧倒的なサーブの前に翻弄されながらも、紗菜の瞳は消えることなく燃え続ける。彼女は、ただ逃げるのではなく、勝つために“読む”ことを選んだ。

準々決勝。

四回戦を勝ち抜いた紗菜がコートに足を踏み入れると、これまでとは比べものにならない熱気に包まれた。観客席はびっしりと埋まり、フェンスの外にまで人が群がっている。ざわめきは波のように押し寄せ、空気が震える。紗菜は思わず小さく息をのんだ。


「……ひ、人が多い……」

自分にしか聞こえない声。頬が赤く染まり、ラケットを握る手のひらに汗がじっとりと滲む。


観客のざわめきの中には、自分の名前がはっきり混ざっていた。

「三浦紗菜、ここまで来たぞ」

「二回戦も三回戦も圧勝だったよな」

「でも次は“エースメーカー”だ。さすがに厳しいんじゃないか」


(……エースメーカー?)

聞き慣れない呼び名に、小首を傾げる。だが次の瞬間、彼女はその意味を理解することになる。


相手がコートに現れた瞬間、場の空気が一変した。

背の高い女子選手。鍛え抜かれた脚と腕、迷いのない堂々とした歩み。その姿に合わせるように、観客席のざわめきはさらに大きくなる。ラケットを軽く振ると、風を切る鋭い音が響き、近くの子どもが思わず肩をすくめるほどだった。


「出た……これが“エースメーカー”」

「サービスエースを量産するからそう呼ばれてるんだ」

「この大会じゃ知らない人はいないよ」


観客の声が重なり、紗菜の鼓動が早まる。

(この人が……エースメーカー……!)


審判のコールが響き、試合開始。

相手が高くトスを上げる。振り下ろされたラケットが風を裂き、ボールは閃光のように走った。


――バンッ!


「っ……!」

紗菜が反応する間もなく、ボールはフェンス近くで大きく跳ね上がっていた。


「サービスエース! 15-0!」


観客席から大きなどよめき。

「はやっ……!」「見えなかった!」

「これだよ、エースメーカーのサーブ!」


二球目。今度は外角いっぱい。ボールは鋭く曲がり、紗菜が必死にラケットを伸ばしても触れることすらできなかった。


「サービスエース! 30-0!」


観客から拍手とため息が入り混じる。

「まただ!」「返せない……」

「どう攻略するんだ、あの速さ」


三球目はセンターへ。一直線に突き刺さる。紗菜は反応して一歩踏み出したが、ラケットは空を切った。


「サービスエース! 40-0!」


「止められない……」「これは完封だ」

そんな声があちこちで上がる。


四球目。再び閃光のようなボールがコートに突き刺さる。


「ゲーム! サーバー!」


審判の声。スコアは1-0。

会場の空気には「やはり一方的か」という重苦しい色が漂った。


だが、ベンチに戻った紗菜の瞳は曇っていなかった。

(今の数本……見えた。外角に打つときは肩が早く開く。センターは体を残して振る……)


タオルで汗を拭き、小さく口を動かす。

「……返せる」


次は紗菜のサービスゲーム。

相手のリターンは力強く、鋭いショットが飛んでくる。だが、ラリーに持ち込めば紗菜の真価が出る。小さな体をフルに動かし、細かいステップでボールを追いかける。左右に振り、深いショットで押し返す。観客がざわめいた。

「走り負けてない!」

「いや、逆に押してる!」


最後は高く弾んだボールを待ち構え、渾身のスマッシュを叩き込んだ。


「ゲーム! 三浦!」


スコア1-1。会場から大きな拍手と歓声が広がった。

「やるじゃないか!」「本当に互角にやれてるぞ!」


再び相手のサーブ。

高く上がるトス。紗菜の瞳が鋭く光る。

(外角……!)

踏み込みと同時にラケットを振り抜いた。


――パシンッ!


ポールがネットを越え、相手コートに突き刺さった。


「返した!」

「今のリターン、完璧だ!」


観客が総立ちになりそうな勢いで声を上げる。

「本当に返し始めたぞ!」

「もしかしたら……!」


さっきまでの諦めムードは跡形もなく消え、会場全体が期待と興奮に包まれていく。


ベンチに戻った紗菜はタオルで汗を拭きながら、自分の胸の鼓動を確かめた。

頬は赤く染まり、目はまっすぐ相手を見据えている。


(できる……絶対に、この人のサーブを攻略できる!)


小さな体に宿る炎は、これまで以上に大きく、力強く燃え上がっていた。

サービスエースを連発され、会場の誰もが「完封される」と思ったその瞬間、紗菜はわずかな体の動きから相手の狙いを見抜き、リターンを返し始めた。観客の空気が一変し、期待と熱狂が渦を巻く。小さな体で巨大な壁に挑む紗菜。その姿は、会場にいる誰よりも眩しく輝いていた。次回――勝負はさらに熱を帯びる。


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