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ラインスナイプ! 世界を驚かせた高校生テニス少女の物語  作者: ヨーヨー
第二章 体育連盟テニス大会編

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第19話 圧倒するラリー、揺るがぬ自信

大会二回戦。

先ほどまでの緊張はすでに消え、三浦紗菜の胸にはただ「勝つ」という強い確信だけが宿っていました。相手は背の高い女子選手――しかしその姿も紗菜にとっては、挑戦を燃やすための一つの炎にすぎません。ここから彼女の才能はさらに鮮烈に輝き始めます。

体育連盟テニス大会、二回戦。

 初戦で鮮烈な勝利を収めた紗菜は、コートの外に一度出て小さく深呼吸をした。冷たい風が頬をなでていく。だが心の奥は不思議と熱く、落ち着かない鼓動が胸を叩き続けている。


 観客席では、彼女を初めて目にした人々がざわめきを広げていた。

「さっきの子、信じられないくらい速かったな」

「まだ高校生くらいでしょ? 本当に天才なんじゃないか」

「いや、二回戦からが本番だよ」

 さまざまな声が交錯し、紗菜の耳に断片的に届く。自分が注目されているという事実に、胸の奥がじんわり温かくなる一方で、気を引き締めなければと強く思った。


 次の相手がコートに入ってくる。

 彼女は紗菜より頭一つ分背が高い。すらりとした長い脚、日焼けした肌に映える黒いユニフォーム、そして鋭い眼差し。髪は後ろでタイトに結ばれていて、揺れるポニーテールが緊張感を一層際立たせていた。

 手に持つラケットは最新モデル。フレームにはテープで補強された痕跡もなく、まるで雑誌の広告から抜け出してきたように完璧だ。


 紗菜はその姿を見て、心の中で小さくつぶやいた。

(強そう……。雰囲気からして一回戦の相手とは全然違う……)


 試合前の軽いラリーが始まる。

 相手は無駄な動きをほとんど見せず、淡々と打ち返してくる。角度も深さも安定していて、体の重心がぶれることは一度もなかった。その冷静さに、紗菜は逆にプレッシャーを感じる。

(感情を表に出さない……。まるで機械みたいに正確……)


 コートサイドでは、観客たちが再びざわついた。

「あの子、県大会でもよく名前を聞く子だ」

「体格もいいし、パワーだけじゃなくて安定感があるんだよ」

 どうやら相手は実績のある選手らしい。紗菜の胸が一瞬だけすくむが、次の瞬間には強い光を宿した。


 ――試合開始。


 相手のサーブが放たれる。

 鋭い音とともに、白いボールが稲妻のようにネットを越え、紗菜のコート奥へ突き刺さる。観客席から思わずどよめきが起こる。

 だが紗菜は微動だにせず、すぐに反応した。身体を低く沈め、ラケットを振り抜く。


 返球は低い弾道でネットすれすれを通り抜け、相手の足元を狙った。

 一瞬、相手の眉がわずかに動いた。だがその表情はすぐに無表情へ戻り、再びラリーを続ける。


 観客席からは「ナイスショット!」の声と拍手が響いた。

 紗菜は短く息を整え、心の奥で自分に語りかける。

(怖くなんてない。絶対に負けない。これは、私が夢へ近づくための一歩なんだ!)



コートに立つ三浦紗菜は、どこか落ち着いた面持ちをしていた。心臓は確かに早鐘を打っているのに、不思議と緊張はなかった。むしろ「勝てる」という確信が全身を支配していた。


 対する相手は背の高い女子選手。力強いサーブを武器にしているのだろう。だが紗菜の目には、その武器も「わかりやすいカード」のように見えていた。


 相手がトスを高く上げ、全身の力を込めて打ち下ろす。観客席が息をのむ――しかし紗菜はほんの半歩前に踏み込み、ラケットをすっと差し出した。次の瞬間、ボールは軽快な音を立てて返球され、相手コートの深い位置に突き刺さった。


「……ナイスリターン!」

「すごい、あの子、高校生だよな?」


 客席から小さなざわめきが起きる。


 ラリーが始まれば、差はもっとはっきりした。紗菜のショットは迷いがなく、一本一本が狙いすました矢のように正確だった。クロスに、ダウン・ザ・ラインに、時にはドロップショットさえ混ぜて、相手を走らせ、疲弊させていく。


 相手選手は長い腕をいっぱいに伸ばし、必死にボールを追いかけた。しかし返した先にはもう紗菜が待っていて、さらに角度の鋭い一打を突きつける。追いかけても追いかけても、ボールは遠ざかる。


 スコアボードが一方的に数字を積み上げていく。1ゲーム、2ゲーム、3ゲーム……観客席の視線は完全に紗菜へと釘付けになっていた。


「強すぎるだろ……」

「しかもあんなに楽しそうに打ってる」

「なんて子だ……」


 ざわめきが、驚きから尊敬へと変わっていく。


 そして迎えたマッチポイント。相手が渾身の力で打ち込んだボールを、紗菜は軽やかに拾い上げた。リズムを崩さぬまま、狙い澄ましたクロスショット。白い軌道が空気を切り裂き、無情にも相手コートのライン際へと突き刺さる。


「ゲームセット! 勝者、三浦紗菜!」


 審判の声が高らかに響き渡った。


 一瞬の静寂のあと、観客席は割れるような拍手に包まれる。紗菜は深呼吸し、軽くラケットを握り直した。胸の奥で小さな炎が、さらに大きく燃え上がるのを感じる。


 ――まだ、これは始まりにすぎない。


 そう心の中でつぶやきながら、紗菜は静かにコートを後にした。

試合の一瞬一瞬が、彼女の確信を裏づけるように展開されました。リズムを奪い、走らせ、翻弄する。観客が見守るなか、三浦紗菜の存在はただの挑戦者から「注目すべき選手」へと変わりつつあります。

次の試合、そして次の噂へ――物語はさらに熱を帯びていきます。


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