エピローグ「帰る場所」
この物語は、無名の帰宅部の少女が、支えてくれる人々の声に背中を押され、世界の頂へ駆け上がる物語でした。
エピローグでは「勝利のその先」、帰る場所の温かさを描きました。
成田空港の到着ゲート。
ガラス扉が開くと同時に、押し寄せるような拍手と声援が紗菜を包み込んだ。
スーツケースのキャスター音すらかき消されるほどの熱。
「おかえり!」
「よくやったぞ!」
横断幕には手描きの文字――
「世界で戦った三浦紗菜、誇り!」
カメラのフラッシュが連続する中で、紗菜の目に最初に飛び込んできたのは母と兄の姿だった。
母はお守りを胸に、目元をぬぐいながら必死に笑顔を作っている。
兄はただ一言「おかえり」と口だけ動かした。その短さが、すべての思いを語っていた。
――商店街。
惣菜屋のおばちゃんは涙声で
「またいっぱい食べな!」と唐揚げを差し出し、
八百屋は「これでも飲め!」と野菜ジュースを渡す。
スポーツ店の店主は「次はスポンサー料を値上げしなきゃな」と冗談を飛ばし、みんなが笑った。
――学校。
クラスメイトは信じられないように口を開けながらも、
「ほんとに世界の舞台に立ったんだな!」と歓声を上げる。
同級生達がが目を輝かせて「私もテニスやりたい!」と笑った。
夜。
商店街の路地で、紗菜はひとり夜空を仰いだ。
胸の奥に、まだ熱を帯びた感触――白線を駆け抜けた「ラインスナイプ」の閃光が残っている。
(ここが帰る場所。そして、ここからまた出発する場所)
手にしたトロフィーは重かった。
でも、それ以上に背中を押してくれる声や、差し出された笑顔の数々が重なって、紗菜を支えている。
「ありがとう」
誰に向けたでもなく、夜空に呟いたその言葉は、確かに世界へと届いていくように思えた。
読んでくださった皆さん、ありがとうございました。
紗菜の挑戦はひとまず終わりましたが、彼女の物語はまだ続いていきます。
未来への期待を胸に、この章を締めくくります。
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『完璧侯爵様、恋するとお腹が痛いんです —恋すると腹がキリキリする侯爵様の100連敗— 』
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