ニンゲンドック イチ
人間ドックについて興味を持つのは三十代くらいではなかろうか。
バリウムだの胃カメラだの、マンモグラフィだのは、二十代ではほとんど馴染みがない。
それまでは、各種検査を行政は積極的に勧めてこない。
三十代半ばになってから、にわかに情勢が変わってくる。
早く人間ドックやら市区町村の検診へ行けという圧力を国が出してくる。
対象年齢に該当し、三十代が老いを初めて身近に意識するのは、初めて人間ドックを受けるその日である。
さて、
「人間ドックって実際どうスか?」
の後輩諸君の問いに答えていこう。
「バリウムって何スか? バナナに入ってるやつッスか?」
それはカリウムだ。
私は昨年初めて人間ドックデビューを果たしたので、完全に先輩面、いや、先輩である。
人間ドックはしなければならないか。
実際、自由である。
受けなくても罰則があるわけではない。
人間ドックは予防医療なのである。
病気になる前の兆候を見つけるというところに主眼をおいている。
ただ、最近息切れがする、白髪が出た、なかなか脂っこいものを受け付けないという二十代ではありえなかった変化に満ちた日常に生きる三十代。
自分の体に何が起こっているのか知るというのは価値がある。
「あれ? 自分、ヤバいんじゃないか?」
と思い始めたら人間ドックである。
さて、次に実際の人間ドックって何するンスか? の問いに答えていく。
病院によって変わるかもしれないが、まあだいたい似たりよったりであろう。
まず、人間ドックの受診を決めたらは、職場や行政のサイトから検査を申し込む。
すると、家にデカい封筒が届く。
なんだか厚みがある。
中に検尿の容器が入っているっぽいアレである。
ハイハイ、いつものあれでしょ、当日にとるやつね、まあ前日に問診票書いて、持ってけばいいよね、と思う。
そして、何時から絶食したらいいのかなーと確認しようと思いたち、封筒を前日に見て愕然とする。
『前日の22時以降は完全に絶飲食してください。』
おっと?
『朝の6時まで、コップ1杯のみの水は許可します。』
1杯だけ? コップの容量はどこまでいいの?
『また、検尿は当日おとりください。』
はいはいはいはい余裕ですこれは。全然大丈夫。想定内。
『検便は4日間のうちに採取し、冷蔵庫にて保管して下さい。』
想・定・外!!!!!
変なラノベのように、脳裏に「うわああああああああああああ!!!!!!!!!!!!」という文字の羅列が並ぶ。
検査説明は少なくとも1週間前にはきちんと読まないと、絶飲食した日の翌朝に、無から有を生み出し、不可能を可能にしなければならなくなる。
そう、私のようにーー。
(※どうしてものときは、朝6時までに摂取できるコップ1杯の水に総てを賭け、南極の湖の中くらいに冷やしたものを飲むことをおすすめする)
なんやかんやと検体を採取(※家だけどもう帰りたい)。
集合時間に病院へ行く。




