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ニクのカタマリ  作者: 丹空 舞


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19/20

チャッピー ソノ9

※先攻:チャッピー



「六人兄弟と、わたしの選ばない結末」


――冒頭・1500字版――


 この家に来た初日、

 私は六人のイケメンに囲まれて、逃げ場を失った。


 最初に声をかけてきたのは、縁側で死にそうな顔をしていた長男だった。


「……あ、君が噂の」


 笑っているはずなのに、目がまったく笑っていない。


「ご愁傷さま。ここに来た時点で、もう人生、詰みかけてるよ」


 冗談なのか本気なのか分からないまま、

 背後から、静かな声が重なった。


「兄さん、脅すな。……怯えてる」


 振り返ると、本を抱えた細身の青年が立っていた。

 切れ長の目が、私をまっすぐに射抜く。


「大丈夫。壊させない」


 その一言の重さが、なぜか怖かった。


「えー? もう保護者気取り?」


 廊下の壁にもたれていた三男が、くすっと笑う。


 裸足。

 足首には、視線を奪うほど艶めいた刺青。


「ねえ、君。まず靴、脱いで?」


 理由も言わずに、しゃがみこんで、私の足元を見つめる。


「……ああ、やっぱり。

 綺麗。思った通りのかたち」


 触れられてもいないのに、

 足の存在を“所有された”感覚に、背筋がぞっとした。


「それ以上近づくと、星がびっくりするよ」


 間の抜けた声が割り込む。


 ラッコの絵がついた上着を着た青年が、

 ポケットから小石を取り出して、私の手のひらに乗せた。


「ここに来た人には、最初に石をあげるんだ」


「……なんで?」


「迷子にならないように」


 意味は分からなかったのに、

 その言葉だけが、妙に胸に残った。


「……お茶が冷めます」


 静かな声。


 キッチンの奥から、背の高い青年が現れる。

 笑顔はやさしいのに、瞳の奥が、妙に冷たい。


「まずは、温かいものを。

 君は――震えていますから」


 その言い方は、気遣いというより、

 囲い込みに近かった。


 最後に、全員の視線をまとめて支配するように、

 もう一人の青年が、ゆっくりと前に出た。


 姿勢がよすぎる。

 声が、よく通る。


「はじめまして」


 完璧な笑顔で、頭を下げる。


「私はこの家の六男です。

 あなたの“安全”は、責任をもって保証します」


 一秒だけ、目が細くなった。


「……逃がすつもりは、ありませんが」


 その瞬間、私は悟った。


 ここは――

 優しさと狂気が、完全に同居している家だ。


 そして私は、もうすでに――

 六人全員の“視界の中心”に立たされている。


 誰かのものになる前提で、

 この場所に連れてこられたのだと。


「えっと……」


 喉がひくりと鳴る。


「私は、しばらくここでお世話になるだけで……」


「しばらく?」


 長男が、小さく笑った。


「そうやって、人は“永遠”に変わっていくんだよ」


 次男が、ぎゅっと本を抱きしめる。


「……出ていくつもりなら、 最初に言って」


 三男は、私の足元から視線を上げ、甘くささやく。


「でもさ。

 出ていけると思ってる時点で、甘いよ?」


 四男は、私の手のひらの石を見つめて言った。


「もう印、ついてるから」


 五男は、食器を置く音を止めずに告げる。


「外は、危険です。

 君は、ここで守られるべき人ですから」


 六男が、静かに締めくくった。


「決まりですね。

 あなたは、今夜から――この家の“中心”です」


 その言葉に、六つの視線が重なる。


 私はそのとき、ようやく実感した。


 ここは、

 選ばれる家ではない。


 選ばされ続ける家なのだ、と。


この状態で だいたい1500字前後(±50字以内) に収まっています。

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