1.諦めた夢
俺は、霧島 拓哉35歳だ。
この世界はヒーローが1人いる。それは、俺のかつての友達、朱羽根 遥人。
遥人はとてもいい人間だった。正義感もあり、人を救いたいと行動をする。小さい頃からそんな感じだ。だからヒーローになれたのだろう。
だが、遥人は死んだ。見ず知らずの子供を助けトラックに轢かれたらしい。あいつは最期の最後までヒーローだった。あいつの死に悲しんでいる人がたくさんいる。あいつには俺もお世話になった。そして、この世界の貴重なヒーローがいなくなったのだ。
そう思っていると後ろから、
「やあ、君が霧島 拓哉くんかい?」
優しい声だ。
「はい、そうですけど…どちら様ですか?」
彼はニコッと笑いかけた。
「さて、問題です!僕は誰でしょうか!
1.ヒーローサポートカンパニーの社長!
2.デヴィルの親玉!
さあ、どっちでしょうか?」
デヴィルとはまあこの世界の悪というものだ。
まあ、デヴィルの親玉がわざわざ俺のところに来るわけないし、消去法で1しか無いな。
「1で…」
「ドゥルルル、ジャン!せいかーい!
そう、僕はHSCの社長!翡翠 凪颯!凪さんって呼んでねー!
あ、HSCはね、僕の会社の略称だよ!」
「てか、あの大企業の社長がなぜ俺の元に!?」
「遥人くんから君の事はたくさん聞いていてね。昔遥人くんと一緒にヒーローを目指したんだね。」
「はい…」
話を変えられた…
「どうだい、君もヒーローになってみないかい?」
「……………
すみません、ヒーローは夢のまた夢なので。
あと、俺仕事で手一杯で人助けなんて…」
「ほう、君の会社はなんて言う会社なんだい?」
「××会社です。」
「あー、あのブラック企業か、
さぞ、大変だろう。転職してみたいと思わないかい?」
「いえ、会社からは誰も逃げれないんです。
もう、俺のことなんかほっといてください!」
すると、「ドゴンッ!」
ビルの上からデヴィルの破壊音が聴こえた。
「デヴィル!?なんで今!ヒーローはもういないのに。」
凪さんの方を見るとすごく目を輝かせて俺の方を見ている。
「あの〜、何故そんなにキラキラしているんですか?」
俺が恐る恐る聞くと
「これ、ヒーロースーツ、遥人くんのおさがりだよ。改良はしてあるから安心してね。」と言って彼は無理矢理俺にヒーロースーツを着せてきた。
「あの!本当に大丈夫なんですよね!本当に俺死にませんよね。」
「あー、大丈夫、大丈夫。」
この人本当に大丈夫か?
凪さんは目をバッと開けて
「さあ、新たなヒーローよ、民達に君がヒーローだということを見せつけるのさ!
とりあえず今デヴィルがいる所に向かってジャンプしてみようか!」
「はい?ジャンプ?そんなジャンプで屋上まで届くわけ…」
俺は半信半疑の状態でジャンプをしてみた。
すると、下を見ると人が小さくなって、デヴィルが見えて。何故か空も近い。
「てか、俺、本当に飛んでるんだけどー!」
すると、胸ポケットから音が聞こえる。トランシーバーだ。
「ジジジ…あ、本当に飛んでるみたいだね。
じゃあ次は着地して攻撃してみようか。」
「はい?攻撃って…パンチとかでもいいんですか?」
「うんうん、結構本気でやっちゃってー」
本当にパンチなんかでこんな怪物やっつけれるのか?と心配になりながら言われた通りに攻撃をしてみた。
すると、「スッ…ドンッ!」
デヴィルがビルから道路に落ちてボロボロになり、消えていく様子が見えた。
「これ…本当に俺がやったんすか?」
またトランシーバーから音がした。
「おめでとう!初討伐だね!
それじゃあ、このまま降りてきてー。
大丈夫!ヒーロースーツを来ていたら雲の上から落ちても死なないからね!」
俺は死ぬ覚悟でそのまま飛び降りた。
俺は生きていた。
怪我もしていない。
「ほ、本当に生きてる…」
「フッフッフッ!すごいでしょーこのヒーロースーツは僕が提案して僕が作ったんだよ!」
俺は感心した。本当にHSCの社長なんだと。
俺は凪さんを信じてみることにした。
これは俺たちHEROの物語だ!