13 デート①
冬休みってのは、やはり最高だ。
いつになってもそう思う。小学生の頃も、中学生の頃も、高校生になった今も──夏休みみたいな宿題地獄というわけでもない"冬休み"は最高だと、考えている。
学生に与えられた長期休暇の中じゃトップレベルにパーフェクトなのではないかと。
完璧でパーフェクトなのではないか、と。
そのはずだったのだが。まあ人生、そう上手くはいかない。
「ふぅ〜、やっと着きましたねえ。タッキー、舞さん」
まさか冬休みの"初日"から──付き合ってない女の子たちとデートがあるなんて思いもしないじゃないか。
いやね、今回の場合は事前に分かってたことだが。
だって終業式の昨日。
荒木田先生と話し終わった後に、今日にデートを急遽セッティングしたのは僕自身なのだから。
でも。
にしたって気が重かった。
冬休みの最高さが消し飛ぶぐらいには。
汐留瀧はデート童貞である。
「……うん」
僕たちの住む街にある駅から、数駅離れた先にある──大型ショッピングモール『マジカ』は、常にお客さんがいて混んでいるながらも、店の質が良く満足度が高い事で有名である。
ショッピングモールの入り口で立つ。
僕たちというは、
汐留瀧と絢辻結衣と橋本舞。
「にしてもタッキーの私服ってそんな感じなんだなあって!」
「そんな感じ、というと?」
「意外とファッションセンスがあるっていうかぁ──えへへ、これ褒め言葉だよ」
全く褒め言葉には聞こえないけどな。
今日の自分のファッションはいつもよりは気合を入れた感じで──白シャツの上にミルク色のロングコートに、ジーパン。
ネット通販で衝動買いしてしまったキラキラした銀色のブレスレットを右腕に付けている。
「舞さんはどう思いますかあ、タッキーのファッション」
「ん」
ここで。
微笑しながら、絢辻ちゃんは黙っていた舞に話を振る。
視線がバチバチと音を鳴らしている。
「いやまあ、タッキーの私服とかいつも見てるし慣れてるからな。普段通りだなーってぐらい」
「む!」
そんな事はないはずなのだが……。
此処にきて舞も対抗心を燃やしてきたのか、妙なマウントを取ってやがる!
「へ、へえ。そうなんですか。でもお、私はタッキーのクラスメイトなので──学校でどれぐらい真面目に何事にも頑張っているのか、見てきているんですよ!」
「ふーん。残念だけど……私も陸上部でタッキーの活躍は見てきたし、それにコイツは何事にも全力で取り組むタイプじゃねぇから。本気のフリして、途中で手を抜く奴だぞ?」
"それぐらい知ってて当然だよな。
でもまあ、ごめん。私は幼馴染だから知っているのかもしれないね。
普通の人なら知らなくても仕方がないのかもな、ごめんね。"
と、舞は幼馴染をアピールした。
うーん。
なんだこの戦い。
「じゃ、じゃあ! タッキーは私がバレーで頑張ってる姿を見にきてくれた事があるんですよ!」
もはや何のマウントだよ。
「私は元々同じ部活だったからなあ。一緒に切磋琢磨しているだけだったわ」
「ぐぬぬぬぅ」
対する舞の方は舞で、幼馴染という地位をうまく利用していてズルい感じがしてならない。
つーか、肝心の僕を差し置いてマウント合戦するなよな……。
「ごほん。今日はまだ始まったばかりなんだ。仲良くしようぜ、互いにさ。同じ陸上部メンバーなわけだし」
取り敢えず仲裁させてもらった。
ここら辺で終わりにしておかないと、それだけで日が暮れる勢いだったからな。
因みにだが、絢辻ちゃんと舞の服装についても説明しておいた方が良いだろう。
絢辻ちゃんは、実に女の子らしいってのが適切だろう……薄紫のテーラードルーズコートに、紺のロングスカートだった。
舞は、うん。
スティーブ・ジョブズさながらな、黒のタートルネック姿だった。
下はズボンである。詳しい種類は分からない。僕はファッションに疎い。ごめんなさい。
ともかく、そんな感じである。
今日の僕らのコーデはね。
「……えーっと」
一応、ショルダーバッグを持ってきてはいるが……ポケットに入れていたスマホを取り出して、
「9時半か」
時間を確認する。
「『プレイアクション』の予約は10時半だから、あと一時間ある」
「プレイアクション?」
「ほら、昨日、口頭でも電話でも説明したろ? 遊園地兼、運動場みたいな室内アミューズメントパークだよ」
プレイアクションは事前予約制で、急遽、僕が昨日予約を取ったわけである。流石は冬休み初日なだけあってか普通の予約は全部埋まっていたのだが……。
なんと、特別予約招待券なるものをうちの妹が持っていて「どーせなら使いなよ、変態お兄ちゃん」と、譲ってくれたのだ。
だからありがたく、それで予約させてもらったわけである。
「ぁあ、あれのことか!」
そんな大人気繁盛アミューズメントパーク『プレイアクション』。
サイトによるとバレーにバスケ、ゴーカート、eスポーツ……カラオケ、その他にも様々なことが出来ると説明されている。
とても楽しそうである。
それに規模が大きい。
ショッピングモールの中に『プレイアクション』はあるのだが、まあ元々の敷地が広いからこそ出来るタイプの店だよな。
田舎の利点だ。
土地がいっぱいあるのは。
「舞さん、知ってますか」
「なに」
──僕がこの場を和ませようとしたのに、絢辻ちゃんは再び仕掛ける。
「プレイアクションは──戦えるんですよ」
「???」
「タッキーはもちろん、スポーツの強い女子は好きですよね?」
突然、コッチを見られた。
スポーツの強い女子か……。スパッツが一番なのには変わりはないが、
「まあ、うん」
好きかと言えば、
どちらかといえば好きだろう。
スポーツが強いとカッコいいしさ。
「ほら、タッキーもそう言ってますよ」
「絢辻さんは何が言いたい?」
共感を求める絢辻結衣に、
受け止め切れていない橋本舞。
「つーまーり。これは勝負しかないんですよ! 舞さん、前に話しましたよね? ──このデートはどちらがタッキーの恋人に相応しいか決める戦いなんですよ」
つまり、と。
ドドンと効果音を鳴らして、仁王立ちで彼女は言い放った。
「スポーツで勝負して決めましょうよ、舞さん。どちらが強いか。どちらの方がタッキーにとって魅力あるかを!」




