第9話 重ね得なかった想い
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僕が通っていたのは中高一貫の私立中学校だった。
そのため、やろうと思えば僕は高校受験ができた。
そしてそれは僕にとって順当で全うで正しく、受験という試練を乗り越えた先の公正な、
逃避だった。
僕は逃げたかった。
日々現実に押しつぶされそうになりながら、家族にもその素振りを見せず、中1の夏に迎え入れた愛犬だけに吐露し、慰めてもらう日々に。
愛犬は、僕が特別つらいことがあって誰もいない家で涙していると、僕のそばに寄ってきて涙を舐め、ずっとただそばにいてくれた。決して離れなかった。
それ故、僕が再び中1の夏に愛犬を迎え入れる瞬間が来たとき、どれほど嬉しかったことか。
他界してしまって、もう二度と会えないはずだった。
僕はあの子をすごく愛していた。
この件についてあの子は、あの頃の僕の唯一の理解者で、拠り所で、救いで、癒しだった。
中1の夏、あの子が家にやってきたときはただ楽しい生活を過ごしていた。
だが、中2の夏から僕の人生が「不」運に入っていってから、あの子は僕の本当に家族になった。
この経験から僕はやや異常なレベルで動物が好きになったのだった。
さて、僕の受験という公正な逃避が成功したのか、についてに話を戻そう。
実は結論は既に伝えている。
僕の地獄は4年半に渡り続いたのだ。
つまり、僕は逃避できなかったのだ。
能力がなかったわけではない。
例えその時点で能力がなかったとしても、僕はこの34歳までの人生で経験したことのないほどの努力をしたことだろう。いやした。絶対に。
目標を達成するには動機が必要だ。
その動機が強ければ強いほど、行動が伴って達成へと近づく。
僕にはこの上ない動機があった。
だが機会を与えてもらえなかったのだ。
15歳の未成年であった僕に、僕の人生のレールを敷く権利はなかった。
僕の父は厳格な人で、一度決めたことはやり抜く人だった。
僕は家族にも苛めのそれは言っていなかったし、受験したい理由をなんといったのかも今となっては覚えていないのだが、その理由が父を納得させられなかったのだろう。
当然である。本当の理由を決して言えない中、受験という大きな決断を取り繕った理由でしたいと言っているのだから。
当然僕は理不尽に感じたし、激怒した。
だが、父は絶対的な存在だった。
僕の深い怒りは不干渉という行動になっただけで、父へ直接モノを言うことはできなかった。
そしてこれは僕の大きな後悔の一つとなったのだ。
高校時代、僕は父を嫌っていた。
僕を地獄に居座らせ続けたからだ。
できる限りの干渉を避け、話をせずに済むように距離を取った。
大学を卒業し、卒業したら僕は割と遠くの県へ出ていくことになる。
話したくても話せなくなる。34歳の僕にとっての父もまだ健在であったが、高齢になってきており16歳の僕の父とはやはりできることに違いがあったことだろう。
34歳の僕は父との時間を取りたいと思っている。
あの頃避けてしまったことを悔いている。
きっとこれからもっと親孝行できただろう、するつもりだった。それなのに今僕はこうしてここにいる。
たぶん、恐らく、きっと、34歳の僕は父や母、兄、妻、子どもを悲しませてしまったことだろう。
それ故に僕は、ここで一度目の軌跡辿っていき35歳以降を取り戻す奇跡を起こさなければならない。
僕はこれから生じる父との確執と後悔を知りながら、同じ選択をしなければならない。
前回僕が選択を誤った際、確かにそこには「幸」運が拓かれたのだと思った。
だが結果はRe ariseだった。
もしかすると僕はifルートとでもいえる、父との確執がないルートに入って「幸」運を掴めるのかもしれない。だが、再びここに戻って来られる保証はない。
僕の目的は過去の未来を紡ぐことにある。
であればそれは本意ではないのだ。
父よ、僕はあなたともっと話したい。
一緒に時を過ごしたい。
重ね得なかった想いを、感情の歴史を紡いでいきたい。
尊敬する僕の愛しい父よ。
僕は再び父を憎むことを選んだ。