第38話 ターニングポイント
1年も経たないうちに昇進の話が来たのだが、その時僕は26歳になる年だった。
「26になるまでに資格が取れていなければ教育の道に行く」
と決めていたこともあり、僕は選択を迫られた。
このまま今の仕事を続けるか、教育の道に進むか。
資格試験はここ数年受けていなかった。
就職してからは忙しく、勉強する暇がなかった。
少し余裕ができた2年目には通信教育で自宅学習をしていたが、現役の頃と比べて劣っていることを感じていたので試験は受けなかった。
そして仕事と勉強を両立することが上手くできないままの生活が常態化した。
転職して仕事を覚えて、今までより勉強する時間を増やすことができる環境にあった。
が、僕は本当に資格を取って独立したいのだろうか。
今まではキャリアプランに沿ってただ行動していたが(しきれていなかったのだが)、キャリアプランを疑い始めた。
結局は「やってみないとわからない」からキャリアプランに沿うことにした。
結果僕は資格を取れなかったので教育の道に行くことにしたのだ。
一応もうひとつ考えたことがあり、
「今の仕事を続ける」か「教育業界に入る」か。
今の仕事は楽しいし楽だ。
が、薄給だ。昇進しても給料はさして上がらない。
この時の僕の年収は300万にも満たなかった。
前職では300万はあったので下がっていた。
そしてこの先上がる見込みもない。
営業なので歩合だと聞いていたのだが、達成したら1000円、〇〇したら1000円など、いちいち単価が低いのだ。競合他社に行くともっといい給料体系になるだろうし、成果も出せる自信はある。
が、転職してまでこの業界にいる理由はもはや僕にはなかった。
そして僕は昇進を断り、教育業界への転職を決意して行動した。
リクルート系が全部そうかはわからないが、元々独立志向が強い人間が集まる。
そのため、離職自体を咎める風潮はなかったのだが、僕の場合は少し違っていた。
引継ぎが上手くいかなかったのだ。
ありがたいことに、「僕だからやっている」という顧客が多く、「僕じゃなくなるならいいや」という人たちが多かったのだ。
最初は僕もそれでもこの会社と続けてくれるように動いていたが、ある日「お前は害だけ与えて出ていく最低なやつだ」というようなことを会社から言われ、情が失せた。
そこからは僕から積極的に引継ぎをすることはなかった。
そうして最終的には社長室で正座をさせられ、如何に自分が会社に害を与えてやめていくのかについての説教を聞かされてこの会社での社会人生活は幕を閉じたのだった。
34歳の僕は社長の言っていることがよくわかるようになっていた。
彼は僕のためにいったわけではないのだろうが、たとえキャラ営業で取っていた顧客であっても引継ぎが上手くできないのであればどこかに問題があったはずなのだ。
そしてそれは僕が会社としてではなく個人として付き合いをしていたからだろう。
僕には帰属意識がなかったのだ。別にそれで構わないと思っているが、帰属意識がないと思われることは会社員としてはデメリットになる。
そのことを再認識した上で、僕の教育業界での社会人生活のスタートを切ろうと思ったのだった。




