第37話 プライドの着地点
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僕の顧客のほとんどは中小企業だった。
そして正社員案件ともなると人事のトップや社長と話す機会が多かった。
そして僕は企業人に好かれる方法をわかっていたようだった。
よく社長からゴルフやいろんなお店に誘われたのだが、そのすべてに僕は条件を付けていた。
「勤務中ならいいですよ」と。
プライベートを削るのが嫌だったからだ。
そして僕は勤務中にいろんな人にいろんなところに連れて行ってもらった。
それはもちろん僕の人間性もあるのだが、大前提として結果を出していることが大きかった。
僕に任せれば結果が出る。そして人間的にも面白みがある。
だから社長たちは僕のために時間と法人カードを使ってくれたのだった。
僕は思ったことを言う人間だった。
今もそうなのだが。
それ故に合わない人は僕と仕事をしなかったが、社長にモノを言う社員など稀有であり、ずけずけと思ったことを言う僕が新鮮で面白かったのかもしれない。
ありがたいことに引き抜きの話もいくつかいただいていたのだが、そのどれもを僕は断った。
僕には明確なビジョンがあったからだ。
そしてそのブレない姿勢も好感を抱かせるポイントであったらしい。
入社半年もすると、僕の所属するチームのリーダーよりも僕の方が成果を出すようになっていた。
リーダーは浅く広く付き合うタイプだった。
僕は深く狭くで、自分の手の届く範囲でしか仕事をしなかった。
徐々に範囲を広げていったのだが、いろいろな業界に対する知識はリーダーの方が圧倒的に持っていた。
そのため僕はリーダーに業界に対する知識などを教えてもらっていた。
そこには確かに僕にとってのリーダーの価値があった。
だがリーダーはプライドを引き裂かれていた。
新人の僕の方が高単価の仕事をいくつも取ってきており、紹介ももらい、独自のルートを作っていたからである。
リーダーは未だに数打って当たらせる動きをしていた。
僕は悠々と働いているが、リーダーは必死に働いている。
僕は部下であり、社歴も浅いので平気で質問できるが、リーダーはプライドが邪魔して僕に聞けなかった。
その程度の器だったのである。
結局僕は所属するチームが変わり、担当するエリアが変わってしまった。
恐らくそれはリーダーの打診によるものだろう。
エリアが変わってしまったので僕は引継ぎをすることになった。
取引先に後任であるリーダーと一緒に行き、引継ぎを済ませた。
事実彼は僕の上司であり、社歴も僕よりずっと長かったし経験も豊富だった。
その事実を伝え、安心してくださいと言って引継ぎを終えた。
だが1か月もしないうちに僕の社用携帯に社長から電話がかかってきた。
要件は担当を僕に戻してほしいといったことだった。
理由を尋ねると、僕はその会社のためになる話をしていたと感じたが、彼は自社の利益を考えていると感じるとのことだった。
本音を言うと僕はどちらも考えていなかった。
自社の利益などどうてもいい。取引先の利益もどうでもいい。
が、僕は僕の責任を果たすことを考えていた。
今の僕の仕事は正社員を採用させることであり、正社員であるからには離職率も低くする必要がある。
そのためその会社のことを知り、人を知る必要があった。
だから社長とも付き合いを続けていたし、僕は僕の責任に忠実なだけで自社や取引先の利益には興味がなかった。
だがそれは僕が思うに本質的にな部分であり、それは相手にとっては自社を慮り、会社にとっては利益を出し続ける優秀な社員となっていたのだろう。
僕のプライドは責任にある。
自分の責任においてやっていることに対して横やりを入れられることが許せない。
今はもうその社長との仕事は僕の責任ではなくなった。
そのため僕は怒りは覚えなかったのだが、元上司に落胆し、失望したのだった。
結果もう僕は他の案件をたくさん抱えていたので一緒に仕事はできなかったのだが、何度か元上司と一緒に伺い、元上司にアドバイスをして良い関係性を築くまでフォローしたのだった。
上司が無能で苦労すると嘆いている人がいるが、それは先が見えていないのだろう。
無能であれば自分が輝くチャンスなのだ。
仕事は増えるしストレスも増える。
だが、真っ当な会社であればその過程や結果を評価してくれるだろう。
結果、自分の昇進が早まる機会が訪れるのだ。
僕は1年も経たないうちにチームリーダーの打診を受けた。




