第30話 非常な別れ
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運目の出会いもあれば運命の別れもある。
僕は千葉へと異動となったのだが、その前に大切絆を永遠に失うことになる。
僕はいつも通り仕事をしていた。
すると実家から連絡があり、実家の犬が危篤とのことだった。
僕は控室に行って泣いた。
その日の仕事終わり、僕は寮に帰って家族とテレビ電話をした。
僕が壮絶ないじめに遭っていた時、僕の心の支えとなってくれた子だった。
僕にとっては欠け替えのない家族だった。
僕の病める時も健やかなる時も一緒にいてくれた、僕を理解して支えてくれた、愛に溢れた子だった。
僕は長野にいる。
なぜ僕はここにいる?
なぜ僕はあの子の傍にいない?
あの子の目はもうほとんど見えていない。
電話越しの僕の声が聞こえているのかもわからない。
僕はあの子に触ることもできない。
あんなに僕を助けてくれたのに、僕はあの子が苦しく、つらく、不安で、怖くて、もう終わってしまうという時に、
傍にいない。
あの子は息をひきとり、僕は絶望した。
家族はあの子のお葬式をしたのだが、僕は列席もできない。
あの子の骨と毛と爪が入ったカプセルを帰省した時にもらった。
それが僕にとってあの子のすべてとなった。
今でも僕はお墓参りに行くと泣いてしまう。
この後悔を思い出して辛いのだ。
僕だけが、恐らく家族で一番あの子に助けられ、愛していた僕だけが、
傍にいなかった。
その罪悪感とどうしようもない後悔がずっと僕を苦しめるのだった。
次に帰省した時、家族は新しい犬を飼うと決めていたようだった。
そして僕がいるときにみんなでどの子にするか決めようとしていた。
僕はあの子の詰まったカプセルを握りしめながら、複雑な思いでついていった。
当然かわいいのだが、僕は前向きになれなかった。
あの子の居場所だ。
僕の家族に愛されていたのはあの子で、
僕にとってはそれは変えてはならないものだった。
だが僕だけが悲しんでいるわけではなかった。
家族も皆苦しんでいる。
そして僕はまたすぐ長野に帰る。
いない僕より触れる犬の方が癒していくれる。
動物に救われることを僕は身をもってわかっている。
そのため反対はしなかった。
そして我が家に新しい犬がやってきた。
といってもすぐには連れて帰れなかったので、僕は長野に戻り、次に帰省した時に子犬だった彼女はもうすっかり面影のない立派な犬になっていた。
そして僕にはその間の歴史がない。皆は家族として接している。
そのため、やはり僕にとって彼女はあの子の場所を取った子として認識されてしまっていた。
動物は人の感情に敏感だと思う。
僕は彼女に嫌われてしまった。
数年後、僕は実家に戻ることになるのだが、そこから一緒に過ごし、僕も家族として認識するようになるのだが、まだ先のことである。
もうじき僕は再びあの子を遠くで失うことになる。
耐えがたい苦痛だ。
中高のいじめなどどうでもいい。
あの子の喪失に比べたら世の中のほとんどのことはどうでもよかった。
愛している。
ただ愛している。
どうか逝かないで欲しい。
僕の元にいてほしい。
せめて僕の手の中で、実感を持たせてほしい。
逝ってしまうなら、止められないなら、僕に実感という証を残してほしい。
ずっと愛しているよ。




