第26話 卒業、そして社会へ
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大学の卒業式の日、僕と親友は式に出席しなかった。
卒業証書だけをゼミの教授のところに取りに行った。
大学に通っていた思い出としての証明は欲しかったので卒業アルバムを購入していたのだが、そのページの一部に、ゼミ単位でスーツや袴姿の男女が映っていたのだが、僕と親友が所属していたゼミには当たり前がが僕らの姿はなかった。
過ぎてみれば僕にとっての大学は将来へ向けたただの通過点となっており、楽しい学校生活の場とはならなかった。
それは入学前の春に期待していた未来ではなかった。
だが後悔しているかと言われればしてはいるのだが、やり直したいかと言われるとそこまでではなかった。
だがいざやり直せるとなったら気持ちは揺らいだ。
部活にちゃんといって後輩もでき、ずっと楽しんでいく未来。
大学にちゃんといき、ゼミにも出席し、大学の友達とも仲良くしていく未来。
今の僕にはそのどちらも手に入れることができた。
だが選ばなかった。
一度目の僕の行動の結果が、愛すべき家族の元へと僕を導いた。
それは僕にとってどんな後悔をなくすことよりも価値があった。
そして僕はこの後、また大きな後悔をすることになるのだが、それも甘んじて受け入れる覚悟を決めたのだった。
僕は関西にいたのだが、就職先からの辞令は長野での勤務だった。
会社の寮へ引っ越し、生活の基盤を整える必要があったため、4月1日からの勤務だったのだが3日ほど前から長野へと向かった。
そしてそれまでは家族と過ごし、別れを惜しんだ。
母は僕の引っ越し作業を手伝うために僕の運転する車に乗って、一緒に長野まで来ることになった。
長野までの道中はまるで旅行にでも行っているかのようで、楽しく進んでいった。
サービスエリアで休憩の際に買い食いをしたり、普段見ない景色に話が弾んでいた。
そして寮に着き、車に積んでいた荷物を出し終えると、生活必需品を買うために町へと繰り出した。
家電量販店で家電を買いそろえ、もろもろを準備する3日間が始まった。
その間は僕は母に生活の知恵を学びながら、一緒に買い物をしていた。
僕は母とは関係が悪くなることはなかったので、それなりに一緒にはいたのだが、こんなにもずっと一緒にいたのは物心ついてから初めてだったのではないだろうか。
そして最終日、母は新幹線に乗って帰る。
僕は母を駅まで送っていき、新幹線を待つ間、一緒に信濃そばを食べていた。
母はずっと涙を堪えて、堪え切れずに泣いていた。
僕は後悔した。
なぜ実家からこんなに遠く離れた地で働くことにしたのだろう。
なぜ父や母にこんなにも寂しい思いをさせてしまったのだろう。
僕は精神的にも一人でいることに慣れていたので平気だったのだが、目の前の母の姿を見てとても寂しくなった。
時刻が来て、母が新幹線に乗り、見送った後僕はしばらく動けなかった。
これから始まる社会人としての生活、本当の意味で自分の力で生きていく未来に胸が躍っていたのだが、この時の僕の胸には罪悪感の塊が重くのしかかっていた。
これから年に2回ほどは2.3日実家に帰る機会ができるのだが、その都度こっちに戻ってくるときに母は泣いていた。
その都度僕は胸が張り裂けそうになっていた。
そして僕は今、楽しそうにしながらも悲しさを隠し切れない母と共に長野へ向かう車を運転している。
僕はまた、後悔と共存して生きていく。




