第20話 性の価値観 ※卑猥な表現が含まれています
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僕はすっかり忙しくなってしまい、部活に今までほど顔を出さなくなってしまった。
僕が所属していた軽音は、発表の場が決まっており、そこに向けて都度組む方式で固定ではなかった。
そのため忙しくなった僕はバンドを組まず、ただ部に在籍だけし、暇なときに顔を出す程度になっていた。
そしてそんな時に恋人もできてしまったものなので、部員からは「恋人ができたから来なくなった」と認識されるようになってしまった。
まぁ間違いではないのだ。
限られた時間を部活ではなく恋人に使っていたのだから。
僕は言い訳が嫌いなので、釈明の余地はあったのだが、恋人狂いの男という烙印を受け入れた。
最初に恋人ができたことを部内で話していると、誰だ誰だと犯人捜しのようなものが始まった。
だが僕の恋人は部内でも学内でもなかった。そのためすぐに鎮火し、後に僕が烙印を押されて終わる形となった。
そして僕は軽音から興味をなくし、資格試験の勉強と恋人との生活に傾倒していった。
それは僕の後悔でもあるのだ。
大学生活を楽しむと決めて入学したのだが、僕が大学生活を楽しめたのは終わってみれば軽音で活動していたこの1年弱だけだった。
あとの3年は資格試験のための勉強がほとんどで、その他の時間はバイトか恋人だった。
2年生になると後輩ができるはずだったのだが、僕には後輩らしい後輩はいなかった。
幽霊部員になっていたし、誰彼構わず話しかけることもなくなっていたからだ。
そして僕は大学では親友と、学外では彼女とのみ接点を持つ、今迄からは考えられないぐらい狭い範囲で日々を完結させていくようになっていた。
3年生になって一度部に戻ることになるのだが、休部していた間の部費を払って戻ったものの、そこにもはや僕の居場所はなくなっており、居心地が悪くて辞めてしまうのだった。
恋人は女子大に通う女子大生だった。
彼女は寮に住んでおり、デートの度に僕は迎えに行き、送って帰っていた。
そしてだいたいそのいつも寮にいる彼女の友達が男性見たさで門までついてくるのだった。
僕は見世物にされている気がして嫌だったのだが、彼女の立場が悪くならないようにいつも笑顔で接していた。そして寮内での僕のお株は上がっていったらしい。
彼女は電話をする時によく、談話室という公共のスペースを使用していた。
その時に必ずと言っていいほど友達や先輩が電話を奪い、僕と、というより男性と話す機会を奪っていった。
僕は彼女と付き合うようになって不特定多数の女性に声をかけることはしなくなったのだが、結果的に同じようなことになっていた。
そして僕には不特定多数の女性と話していた経験があるので、はじめましての女性の対応が恐らく上手かったのだろう。僕との電話は寮生のちょっとした楽しみになっていたようだ。
恐らく僕がスパッと女性に声をかけなくなれたのは、彼女に対する誠意ももちろんだが、こういった話せている事実があったことも大きかったのだろう。
そうして僕は徐々に他人に声をかけるという行為を忘れていった。
あまり進んでしたい話ではないのだが、この恋人とのお付き合いにおいて、僕は性的な話をしなければならない。
経験を伴った嫌悪感から僕はセックスが苦手だった。
当然彼女にもそのことを伝えていた。
だが、若い男女が交際していて、全くプラトニックでいられるかというと大抵はそうではないのだ。
僕は家族を大事にする。そして僕にとって彼女も家族という認識だった。
当然大事にする。それは気持ちを慮ることでもある。
そのため、彼女が肉体的な繋がりを求めていることも感じていた。
僕は意を決して彼女とセックスすることにした。
できるだけ自然に、僕が本心からそうしたいと思って行えるように演出した。
そしていよいよ僕の嫌いな挿入が行われようとしていた。
僕は嫌な気持ちを持ちつつ一切の期待なく彼女と繋がった。
すると世界が変わったのだ。
すごく気持ちがよかったのだ。
相性の問題もあったのかもしれないが、僕は期待値の違いだと結論付けた。
僕はセックスに失望していた。期待などこれっぽっちもしていなかった。
ハードルが下がりに下がって、ザルになっていたのだ。
行為の後、僕は満たされていた。
こんなにも素晴らしいものなのか、と。
そして彼女にもその想いを伝え、僕らは健全なカップルとなった。
ここで終われば良い話だったかもしれないのだが、問題はここからだった。
僕もセックスが好きになり、彼女とたくさんした。
だが、彼女は我慢してくれていただけで、本来は性欲がすごく強い女性だった。
最初は僕も覚えたての猿のような状態だったので良かったのだが、慣れてきたころに僕はまた苦痛を感じるようになったのだ。
やりたくもない時にやらされる苦痛。
愛ではなく快楽を貪るためだけの行為。
3年生になると彼女は寮を出て一人暮らしをするのだが、そうなってからはひどかった。
四六時中したがるのだ。僕は搾取されすぎてしんどく、家から出られないぐらいに疲弊しきることもしばしばだった。
そして僕は彼女にとって、そういった性的な問題を突きつけられるのはとてもつらいことだと理解していた。そのため行為を受け入れたし、嫌がっていると伝えられなかった。
そしてその価値観の違いから僕らは別れることになるのだが、僕は性的なことが原因だと思わせないために嫌われるための努力をすることにしたのだった。




