第18話 泥沼ほいほい事件
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僕は6年間校則の厳しい男子校にいた。
そこでは頭髪も徹底的に管理され、僕は常に短髪だった。
そしてその反動で大学では髪を伸ばしていた。
髪も染め、お洒落にも目覚めた。
まぁ見た目にも気を遣い、自信に溢れ、口は悪いが気さくでフットワークが軽い。
そしてなんだかんだで優しい。
女性から好意を向けられるにはまぁ納得できるかなと思えるような接し方をしていた。
そして僕は友達の場合、女性の容姿について、いや、男性もだが、容姿についてはほとんどと言っていいほど気にしない性分だった。
別に深い関係になるつもりはないし、その人の容姿が優れているか否かなど関係がなかったからだ。
だが深い関係になりたいと思った場合は容姿も判断材料として当然含まれる。
よくある問で、容姿と性格どちらが重要かの比率を問うものがあるが、僕は本心で1:9で性格を重視していた。
だが、必ず付け加えるのが、「最低限の容姿がある場合」だ。
とても話す気になれないほど清潔感のない人は流石の僕も声をかけない。
話を戻すが、要は僕は容姿による対応の違いがなかったのだ。
一般的に優れていると捉えられやすい女性も、そうでない女性にも、僕は僕として接していた。
そしてそれは、優れていると捉えられやすい女性からすると安心して「友達」になれるそうだった。
また、そうでないと自己評価している女性からすると好意を持ちやすくなるようだった。
そしてこの頃の僕は一般的には優れていると捉えられやすい容姿をしていた。
僕にモテキがやってきたのだった。
だが僕は女性とお付き合いをする気になれなかった。
初めての恋人にはこっぴどく捨てられ、性的な欲求に関しても、経験を伴った上での嫌悪から相手を必要としていなかった。
そして僕は倫理観は正常なので、恋人ができたら今のように色んな人と淡い関係を作り続けることができなくなると理解していた。僕にはそれが面白くなかったのだ。
この頃の僕は自分の欲求に忠実だった。
やりたいことをやり、やりたくないことはやらない。自分で決める。それが楽しかった。
そして煩わしいことは面白くないから嫌いだった。
そのため、僕に好意をぶつけてくれた女性にはハッキリと拒絶を示した。
それでも偏執的な変質者もいて、ストーカーに遭ったこともあった。
想いの強さが凄まじく、僕は一身に強力な呪いを受けてしまった。
不幸の檻の中にいた時とは違う方向の精神的苦痛ではあったのだが、精神攻撃への耐性は十分ついていたので、僕は徹底的に無視をした。
そうしてしばらくを過ごしているうちに、僕にも好きだと思える女性ができた。
僕は色んな人と満遍なく話をしていたのだが、ある日、その女性がいるであろう場所へ行き、その女性を探していることに気が付いた。そこからは「あぁ、僕はこの人が好きなんだな」と自分の気持ちを理解した。
そして僕は自分の気持ちを確認するためにその女性との時間を増やし、想いを確信した。
確信まで至る時間、その女性もきっと僕のことが好きなのだろうと感じ、僕は成功を確信しつつタイミングを作り始めていた。
そしてタイミングを作り出した僕はその女性に告白をした。
すっかり天狗になっていた僕は、答えはイエスに決まっていると思っていたのだが、その女性は現在8人程の男性から求愛されていること明かしてくれた。
僕と同じく軽音楽部の男性陣のようだった。その女性も軽音楽部の女性である。
これはすごく泥沼の様相を呈してきたなと思いつつ、「返事は待ってほしい」と言われ、僕は返事を待つことにした。
およそ1か月ほどだったか、待っていたのだが、いつの間にかその女性は僕ではない軽音楽部の男性とお付き合いを始めていた。
僕は返事を何ももらっていなかった。
僕は言葉通りに1か月間ただ「待って」いた。
他の8人はその間に猛アプローチしており、部が泥沼と化していたそうなのだが、僕はその女性の気持ちを尊重するべきだと思い、待っている間は距離を置いた。部活にもあまり行かなかったので泥沼化していることも知らなかったぐらいだった。
他の部員から付き合ったらしいことを聞き、僕は僕が恋を失ったことに気が付いた。
そして7人は部活を去り、当事者10人の内、当事者カップルと僕だけが部に残ったのだった。
ちなみに、泥沼劇に参加していなかった僕がその女性に告白していたことを知っているのは、その女性と僕だけのようだった。
そうして泥沼ほいほい事件は、敗者多数の内僕だけ残して終幕したのであった。
後日談なのだが、その女性が僕に話してきたことがある。
あの1か月の間、僕からのアプローチがなかったので僕は本気ではないと思ったらしい。
そして、仮に僕がアプローチしていたのなら、その女性は僕を選んだらしい。
それを聞いた僕は吐き気がした。
今その女性が付き合っている男性は、彼女が真摯に想いを受け止め、能動的に選び取ったのでなく、彼女に受動的に飛び込んできた9つの運から消去法で選び取った結果に過ぎなかったと知ったからだ。
そして僕はその内の1つだった。
僕の恋心は能動的で、自分の気持ちを僕なりに確認し、確信し、伝えた。
だがその女性に取っての僕の真摯な気持ちは降って湧いた「幸」運に過ぎなかったようだ。
彼女の話を真に受けるのなら、僕は9つの運の中でも「幸」運の部類だったのだろう。
SSRなのかURなのか、どんな割合で存在したのかは知らないし知りたいとも思わないのだが。
そして僕は自らにとって、彼女が僕の彼女とならなかった「URの幸」運を嚙み締めたのだった。




