第14話 春休み、修行パート
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正直なところ僕は女性が苦手だった。
男子校に6年間いたということもあったし、初めてできた恋人には学歴で振られるという早すぎる現実を突きつけられたことも起因しているだろう。
バンド活動で女性と話すこともあったが、PRESONとはペルソナであり、仮面なのだ。
人間は仮面を被る生き物だ。つまり僕はバンドではバンドの仮面を被っているのでやっていけているのであって、まぁ、無理をしていたのだ。
そして僕は危機感を覚えていた。
「大学に入っても女性と話せないままだと、不味い。」
早い話、僕も青春を謳歌したかったのだ。
やっとの共学。
人生で、最も楽しいと言われている大学生活。
楽しまないわけにはいかなかった。
そして僕は、高校生の頃にうちに加入したバンドのボーカルに師事した。
彼は女性にモテた。ナンパもよくしていた。
僕はそんな彼に女性と話す方法を学んだのだった。
平たく言えばナンパした。
大学1年の秋に恋人ができるのだが、それまでに僕は一生分のナンパをした。
高校卒業までの僕は女性に声をかけることなどできなかった。
だが、劇的な春休みを経た僕は、
「話すだけならタダ」という価値観に変わっていた。
それは僕が女性と話したい、大学生活を、青春を謳歌したいと願ったことに起因する結果だった。
結果的にそれは目的に対する手段として功を奏することになるので正解ではあったといえるだろう。
そして僕がナンパに抵抗がなくなったのにはちゃんとした普遍的な理由がある。
それは初動が良かったことだ。
僕はボーカルと共に有名なナンパスポットに行き、修行を行った。
バトルものだとここからの話は修行パートであり、主人公である僕がパワーアップする必要なプロセスだと思ってほしい。まぁ冗談なのだが。
そしてある意味この出来事も僕の価値観を作り上げているのだと思うので、僕は名前も知らない(覚えていないだけではあるが)彼女たちに感謝しなければならないのかもしれない。
僕が初めて声をかけたのは、田舎から観光にやってきた女性二人組だった。
僕はこれから半年間ほぼ毎日誰かしらに声をかけまくるやばい人になっていくのだが、その経験上わかったことがある。
無視されるのが一番つらい。罵倒されても相手にされてるだけまし。ナンパに限っての話ではあるが。
そして、僕の初めてのナンパは結果的には成功と言えるものだった。
彼女たちは僕の言葉に応えてくれたのだ。
一般的には失敗と言えるだろう。いや成功に持っていけたのだが、僕の経験のなさからそうはならなかったのだ。
楽しくお喋りをし、彼女たちにとって有益な情報を与え、さよならしたのだ。
連絡先の交換や、その後お茶をしばくといった発想は初心な僕にはなかったのだ。
だが僕は満足していた。
だって見ず知らずの女性と楽しく話せたのだから。
僕にとっての目的は達成されていたのだ。
その瞬間に僕の中での、「話すだけならタダ」という価値観が形成されたのだった。
この経験は僕のナンパの矜持を決めた。
「自分からは連絡先を聞かない。不純異性交遊を前提としない」
そうすることでナンパへのハードルがぐっと下がり、女性と話す経験値を積むツールとしてのナンパが出来上がったのだった。
ちなみにボーカルにはそれはナンパではないのだと教えてもらったが、僕はその言葉とはさようならしたのだった。




