ジャックVSニコライ 中編
仲間が倒され、頭に血が昇りかけたところでジャックは大きく息を吐き、精神を落ち着かせる。
「ふぅーーー……。」
「おや、観念したのか?そうならば首を垂れよ。すぐにその知能の無さそうな頭を刎ねてやる。」
「んな訳ねぇだろバーカ!どっせえぇい!」
ブレーキ役のリョータを先に行かせた以上、ここで暴走して負ける訳には行かない。
ここで負ければリョータもゲーランも殺され、外にいるフリードたちも窮地に陥るだろう。
今すぐにニコライを叩き斬りたいと言う感情に支配されそうになったものの、その事実が彼に自身をコントロールさせた。
ニコライの挑発を蹴飛ばして彼は剣を振り上げ、
「ふん、どこを狙っているんだ?そこは地面だぞ?」
「まだまだぁ!」
「ただ暴れるだけとは……まるで子供の癇癪だな。」
床を斬りつけた。
ニコライは呆れた様子でそれを眺め、挑発の意を込める事すらなく感想を述べた。
しかしジャックはそれすらも気にする素振りは無い。
そしてしばらく床を斬り続けたかと思うと、床に手を伸ばす。
「これでも喰らいやがれ!」
「小癪、なっ!?」
そして彼は砕けた床の破片をニコライに投げつけた。
ニコライは難なく飛来した破片を弾き飛ばすが、その一瞬でジャックは距離を詰め切りかかる。
咄嗟の出来事にニコライは回避しきれず、辛うじてナイフで身を守った。
「この、馬鹿力め!」
「そいつぁどうも!」
ニコライはジャックの攻撃で痺れた腕を庇いながらバックステップで距離を取り、ジャックは先程と同様に床を切り砕きながら攻勢を続ける。
ジャックはニコライと距離が離れると再度、床の破片を投げつけるが、
「おらよ!」
「同じ手を喰らうとでも思ったか!」
ニコライも決して愚かではない。
二度は喰らわんと破片を弾きつつ、バックステップでジャックの追撃を躱そうとする。
しかしジャックの狙いはニコライでは無かった。
「思っちゃ、いねぇ、よ!」
「がっ!」
「ぐぁっ!」
「野蛮人風情が、猿真似か!」
彼はニコライに追撃を仕掛けず、近くで戦闘中のURP隊員に向かって投石した。
一人は頭に直撃し、昏倒。
一人は身体に当たり、バランスを崩す。
そして王国軍の兵士はバランスを崩した隙を見逃さずに攻撃を仕掛け、眼前の敵を撃破した。
ジャックにしてやられた事にニコライは眉をひそめ、声を荒げる。
「おいおい、さっきまでの余裕綽々って面はどうした?」
「言うじゃないか、野蛮人!」
一時はニコライに傾いた天秤は、次いでジャックに傾き、戦況はゆらゆらと揺れ動く。
ジャックは勢いを味方に付けた勝気な笑みを浮かべ、ニコライは獲物を見る蛇のような目でジャックを睨んだ。