王城へ
ゲーランと連絡役の男が出て行き、俺たちは空き家に取り残された。
指示を出すゲーランがいない今、俺たちはどうすれば良いのか。
思わず困惑と焦燥が口から漏れ出てしまう。
「ど、どうするんだ?」
「どうするって、何がだよ?」
「ゲーランは行っちゃったけど、このまま王城に向かう方が良いのか?それともゲーランの手助けに行った方が良いのか?」
「んなもん決まってんだろ。」
ジャックは俺の呟きを耳にし、声を掛けた。
それに対し、俺は縋るように迷いを打ち明けるが、彼は一切の躊躇なく答えを告げる。
「王城に行くぞ。」
「迷い無さ過ぎだろう。」
「だってあいつは王城に向かえって言ってただろ?だったらあっちは問題ないだろ。」
「でもジャックはゲーランの護衛として来てるんだぞ。」
「つってもなぁ、オレには付いて来いなんて言ってなかったぜ?それなら王城に行った方が良いだろ。」
ジャックは王城に向かうつもりだ。
しかしゲーランは大丈夫なのだろうか。
もしかしたら過去の経験から、恐怖からURPを過大評価しているのかも知れない。
自分の思い過ごしなのかも知れない。
しかし、それでもゲーランを心配せずにはいられない。
やはり彼の手助けに行った方が良いのではないだろうか。
「我々は将軍の意に従う。君たちも来るのであれば止めはしない。特にジャックの力量はかつて王国軍の訓練に参加した際に把握しているし、フリード様も高く評価しているのは知っている。将軍も必要であれば付いてくるように言っていただろう。もし共に来てくれると言うのであれば、喜んで受け入れよう。」
「な?こいつらもこう言ってるし、オレは王城に向かうぜ。」
俺の心配を他所に、ジャックと兵士たちはゲーランに対する信頼を以て選択をする。
その様子を見て俺も落ち着きを取り戻し、彼を信じる事を選んだ。
不安が消えたわけでは無いが、誰かがジョセフを捕まえなくてはならないのだ。
それならば戦闘力的に考えてジャックを王国に向かわせるのも間違ってはいないだろう。
「分かった。それなら王城に行こう。」
「よっし!そうと決まりゃあジョセフの野郎をふん捕まえてやろうぜ!今すぐ突撃だ!」
「待て待て待て!攻め入るのは騒ぎが起こってからって話だろ!」
「その通りだ。このまま待機予定地点に行って機を窺うぞ。」
俺も王城に向かう事に賛成すると、ジャックはすぐさま駈け出そうとする。
慌ててそれを止めるが、別の意味で不安を感じてきた。
うん、ゲーランが指揮で手一杯になる事を考えるとジャックは王城に向かわせる方を選択したのは正解だったかも知れない。
とにかくジャックから目を離さないようにしなくては。
そんな事を考えながら、兵士たちと共に王城の近くで潜伏し様子を窺う。
しばらくすると王城の方で慌ただしく共和国の兵士たちが駆け回り、市街へと向かっていった。
「急げ!増援に向かえ!」
「なんだ!?敵の攻撃か!?」
「反乱軍が攻め寄せて来た!市街にも敵が侵入して門を狙っているそうだ!」
「本当か!俺も寝ている連中を叩き起こしてすぐに向かう!」
「頼んだぞ!それと城の守備兵も最低限残して連れて来てくれ!突破されたら一大事だ!」
「分かった!」
どうやらゲーランが上手くやってくれたようだし、外ではフリードたちも行動を開始しているようだ。
今が好機だと判断し、俺たちは裏口から王城内に侵入する。