クヌミン制圧
馬に揺られ、道を行くと、
「おっ、あれがクヌミンの街かな?」
「大きいですね!それに……」
クヌミンの街が見えてきた。
そこには街中の大通りを塞ぐようにバリケードが設置されていたり、赤い鎧を身に纏った共和国軍の兵士が盾を構えて防衛体制を築いていた。
対するこちらは街を包囲するように布陣していく。
その様子を見て、直接戦う訳では無いが緊張せずにはいられない。
「あぁ、こんな光景初めて見るよ。」
「遂に戦いが、始まるんですね……!」
俺とアニエスは固唾を飲んでその時を待つのであった。
そして間もなく、本格的な戦いが始まる。
『攻撃を開始せよ!』
号令と共に王国軍の兵士たちは盾を構えてクヌミンへと近づくと、共和国軍の兵士たちは弓矢を用いて迎撃を行う。
空を駆る矢は盾に防がれながらも、王国軍に少なからぬ出血を強いる。
されど彼らを止めるには至らなかった。
王国軍は街へと近接し、遂に市街へと侵入したのだ。
双方が槍を交わし、怒号と悲鳴が飛び交い、街は血に濡れる。
守備隊は数の不利を街の地形を以て補い、数的有利を誇る王国軍は部隊に対して狭い道によって有効に戦力を展開出来ず、思うように進めない。
戦況は膠着したかに思われた。
しかし…………
『ゲハハハハハ!敵将、捕らえたぜ!』
突如、ゲーランの叫び声が戦場に響き渡る。
それは共和国軍の指揮官を捕縛したとの旨だった。
捕らわれた指揮官を目視し、守備隊は次々と武器を下げ、降伏する。
開戦から僅か二時間で王国軍は勝鬨を上げたのであった。
戦闘終了後、王国軍の本陣にて。
「ゲーラン、相変わらず見事な戦働きだね。」
「おうよ!」
「敵からすれば恐ろしい事だろうが、味方にすれば頼もしい事この上ないよ。」
「ゲハハハハハ!そうだろうそうだろう!もっと称えろ!」
ゲーランがドカドカと大股で歩き、凱旋を果たす。
フリード達はそんな彼を出迎え、称賛する。
彼はその称賛に謙遜をする事無く、呵呵大笑とした。
「んで、こいつはどうすんだ?尋問か?」
「そうだね。誰か、こいつをクヌミンの牢屋に詰めておいてくれ!」
「はっ!」
フリードはゲーランの意見に肯定し、兵士を呼んで共和国軍の指揮官を連行させる。
縄で縛られた指揮官は青い顔をしながら、そのまま本陣の外へと姿を消した。
「それと、降伏して来た連中の中で隊長格もそれぞれ別の牢屋に入れて尋問しておこうか。ハンス、クヌミンの防衛と共によろしく頼む。ガレットとネレフは彼の補佐を。防衛策に関しては進軍前の軍議で策定した通りにやってくれ。明日、進軍を再開する。ゲーランは兵士たちを休ませておいてほしい。」
「委細、承知しました。」
「「はっ!」」
「あぁ、分かったぜ。」
数人の将官にクヌミンの防衛を任せ、フリードは次なる戦いに備えるのであった。