軍議‐王都へ向けて
軍議を行う陣幕に入ると、そこには数人の将官らしき人物が中央にある机を囲む形で座っており、その中には見知った顔があった。
「おっ、リョータじゃねぇか!久しぶりだな!ゲハハハハハ!」
「ゲーラン将軍、久しぶり。」
「ジャックはついこの間、フリードの所に来た時に会ったぶりだぜ!」
「おう、そうだな!」
「ほら、ぼーっと突っ立ってねぇで、ここに座んな!」
俺とジャックの顔を見たゲーランは親しげに片手を上げて挨拶する。
彼は開いていた両隣の席をバンバンと叩き、着席を促す。
一応軍議に参加こそしているが、場違いなので立って話を聞いていようと思ったのだが……。
本当に良いのだろうかと思い、周囲の将官を見渡すが誰も彼を咎めたりする様子は無い。
それを見た俺はお言葉に甘えてゲーランの隣に着席する。
ちなみにジャックは促された時に一切の躊躇いなく席に座っていた。
少しは周りを気にしろよ……。
「皆、揃っているようだね。それでは早速軍議を始めさせてもらうよ。」
フリードが上座に座り、周囲を見渡して頷く。
そして彼は軍議の開始を宣言した。
「知っての通り、今回の我々の進軍における最終目標は王都マスカ。その地に居座るジョセフを除く事だ。」
彼は幕舎の中央にある机の上に置かれた地図を使い、目標を説明する。
地図の上には青色と赤色の凸型の駒が置かれており、ワシャールに青の駒、マスカとその周辺には赤の駒が配置されていた。
恐らく駒は軍を、青は味方である事を、赤は敵である事を表しているのだろう。
「第一段階としてワシャールから東進し、クヌミンを攻略する。あの街には城壁等の防衛設備は無いから攻略においては問題ないだろう。」
フリードはクワのような形をした棒を使い、クヌミンと地図上に書かれた地点に青い駒を移動させ、赤い駒を退かす。
「しかし、反面クヌミンを奪取した後の防衛が困難である事を意味している。よってここで軍を二つに分ける。クヌミンを防衛する為の軍は塹壕を掘り、補給物資の集積拠点を築く。」
将官の一人がもう一つ青い駒をクヌミンの上に置き、軍を二分した事を表す。
更に別の将官が地図に二重丸を追記し、拠点を築く事を明記した。
「そしてもう一方の軍はモーレンスを経由してマスカを目指す。マスカには城壁があり、力押しで攻略するのは困難だろう。」
フリードは片方の駒をモーレンスと書かれた地点に移動させ、更にマスカへと移動させる。
マスカは城壁を表すであろう凸凹線で囲まれているように描かれていた。
「かと言って攻城兵器を連れて行っては進軍に時間が掛かる。時間が掛かれば近隣から敵増援が来る確率が高くなる。」
マスカの周辺に配置されていた赤い駒を動かし、青い駒を包囲させるフリード。
実際に包囲されたとあれば、敗北は免れないだろう。
「ではどうやってマスカを攻略するか。それは……」
それに対し、彼はある策を打ち出す。