補佐の仕事
ジャックに仕事を押し付けられた翌日。
無視する訳にもいかないので鍛錬を終え、朝食を食べた後に彼の部屋へと向かう。
部屋に入ると、そこで彼は椅子に座り、腕を組んで待っていた。
「よし、それじゃあよろしく頼むぜ。」
「よろしく頼むって言われても、そもそも何をすればいいんだよ?」
「基本的にオレは書類に目を通して問題が無いか確認する。問題が無ければ確認済みのサインをする。だからお前は書類の計算間違いが無いかを確認してくれ。確認が終わったら収入と支出、うちの情報収集担当の報告書、他の支部からの報告書をそれぞれ種類別に分けておいてくれ。」
ジャックに仕事の話を聞くが、気になる点があった。
それは……
「ジャックが確認するなら俺が計算間違いが無いか確認する必要あるのか?」
そう、計算込みで確認するのがジャックの仕事ではないだろうか。
確かに現代の会社とかだったらミスが無いように色々な人が確認をするんだろうけど、ジャックがそこまでキッチリした人間には見えないのだ。
しかし彼は胸を張ってそれに答える。
「ある!お前が確認してくれれば、後はオレが目を通してサインをするだけだからな!」
「楽したいだけって事かよ……。」
「それにオレだって出来るってだけで、そんなに計算は得意じゃねぇんだよ。それなら得意な奴に任せる方が良いだろ?」
「それは、そうだけどさ……。」
言わんとする事は分からないでもないが、効率化も大事だとは思うし、適材適所も大事だけど、それでもジャックが楽をしたいだけにしか思えない。
半分納得、半分呆れを感じている中、彼は仕事の話を続ける。
「それと入口の横に箱があるだろ?」
「あぁ、それとポストみたいな穴が壁に空いてるな。」
「ポスト?がなんだか知らねぇが、その穴は部屋に入らなくても廊下から書類を入れられるようにするための穴だ。で、確認するその箱に入る事になってるから、誰かが書類を提出したら箱から出して確認してくれ。」
「ここに書類を入れて提出するのか。それなら……」
ジャックは部屋の入口の横まで行き、箱をポンポンと叩いて説明をする。
確かにその仕組みならわざわざ入室して書類を提出する必要はないが、ここまでするならそもそも…………
「じゃ、オレはリョータが書類の確認と分別が終わるまで視察に行ってくるから。」
「は?」
「後は任せたぜ。」
「ジャック!?」
考え事をしていると、ジャックはそのまま部屋の扉に手を掛ける。
そして呆気に取られているうちに彼は部屋を出て行ってしまった。
「レオノーラさんが苦労する訳だ……。」
溜め息を吐いて肩をガックリとさせ、仕事を始める。
しかし、すぐに手持ち無沙汰になったので先ほど考えていた案を実行に移すのであった。