お前も手伝え
トムスが合流してから早半月。
鍛錬と授業を行う日々を過ごしていた。
そんなある日の夕食時、食堂にて。
「それにしてもリョータも結構体力がついてきたな。」
「なんだかんだ鍛え始めてから一カ月くらいは経ったからな。」
「若いってのは良いなぁ。オレはここ最近疲れが抜けねぇぜ…………。」
ソーオウとジャックと共に食事を摂り、雑談を楽しむ。
ソーオウが俺の体力について言及し、成長を実感する。
最初は素振りをこなす事さえ困難だったが、今ではそれに加えて筋力のトレーニングもやれるほどだ。
それに対してジャックは愚痴を溢すが、すかさずソーオウのツッコミが炸裂する。
「レオノーラがいないからだろ。」
「そうなんだよ。フリードの野郎!オレは確かに『手伝える事はなんでも言ってくれ』たぁ言ったが、レオノーラを派遣させるのは酷ぇだろ!今までオレを補佐してくれてたから書類仕事をこなせてたってのに!」
「これを機に自力で頑張れ。」
「ジャックの場合、レオノーラさんが補佐って言うか、レオノーラの補佐って言った方が正しいレベルで仕事を任せてたよな。」
そう、仕事の手伝いをレオノーラさんに依存していたツケが回ってきたのだ。
それもどちらが手伝いだか分からなくなるようなレベルで。
そしてジャックの仕事を手伝っていたレオノーラさんは、反攻作戦の準備の為にフリードの所に出向している。
しかし俺の発言にジャックは反論をする。
「レオノーラ以外にも補佐を任せてたっての!」
「でもその任せてた連中も手伝いに行ってるんだよな。」
「おかげで手が足りねぇんだよ!」
なお、反論の内容はジャックがいかに書類仕事が苦手かを表すだけの物だった。
そしてその書類仕事を手伝っていた人員も、フリードの所に行っているとソーオウが語る。
バンバンと机を叩いて愚痴るジャックに、レオノーラさんたちの苦労が偲ばれる。
「そうだ!リョータ、お前も手伝え!」
「は!?無茶言うな!」
「うちのバカ共も最低限の読み書きや計算が出来る程度には育ってきてるだろ?商売組の売り上げ報告や厨房組の支出報告の書類がきちんと上がって来てるから分かるんだよ。」
確かの教育の進捗は問題無いが、これまでレオノーラさんたちが行っていた手伝いを俺が出来るとは思えない。
どうにか断らなくては、と考える。
「だったらお前にはオレの補佐をさせた方が良いって判断だ。そんな訳で明日からよろしく頼むぜ。それじゃごちそーさん。」
しかしジャックはすぐさま決定し、食事を終えて食堂を出て行ってしまった。
「ちょ、まっ、ジャック!?」
「ま、案外どうにかなるだろ。頑張りな。」
「どうすれば良いんだよ…………。」
隣に座っていたソーオウにポンと肩を叩かれて雑な激励を受けつつ、途方に暮れるのであった。