東からの来訪者
レオノーラさんとボロボロの外套を纏った男と共に、ジャックの部屋に訪れる。
「失礼します。」
「おう………ん、お前は!トムス!トムスじゃねぇか!」
「久しぶりだな、ジャック………。」
「随分ボロボロだな。それにお前らは東の方に避難してたんじゃねぇのか?向こうはこっちと違って大々的に反抗してるって訳でもねぇのに、なんでわざわざこっちまで………」
「あっちもあっちできな臭くってな………。」
部屋の中で書類仕事をしていたジャックはこちらを向くと、ボロボロの外套を纏った男に反応する。
男の名前はトムスと言い、王国の東側に避難していた『差し伸べる手』の仲間のようだ。
何故こちら側に来たのかをジャックが問いかけると、彼は静かに語り始めた。
「べリア平原の方じゃ反体制派の連中が連行されて強制労働区域になってるし………、ヤパン諸島の方じゃ変な奴が戦争を起こす準備をしている………。プペンに至っては情報を仕入れる事すらままならない………。今のところは身を隠しているが、いつ火が着いてもおかしくはないんだ………。」
「それを伝えるためにこっちに来たって訳か。」
トムスはコクリと頷く。
どこもかしこも聞いた事のない地名だが、話の流れ的にウラッセア王国の東側にある地域だろう。
そして東側に避難していた仲間たちも安全ではない、と言う事らしい。
「東はヤバい………。かと言ってオレたち全員がこっちに避難するのは難しい………。ジャック、お前貴族の部下に仲が良い奴がいたよな………?こっちの方で何らかの手を打つことは出来ないか………?」
「フリードか。確かにあいつは抵抗軍の指揮官だが………、取り敢えず相談してみるぜ。」
トムスはジャックに助けを求め、彼は顎に手を当てて僅かに思案する。
ちょうどトリア公を説得する事に成功した訳だし、共和国をどうにかするのはフリードの目的と一致するはずだから、恐らく拒絶はされないだろう。
「それと、これを………。」
「手紙?誰からだ?」
「『第四鉱山組合』って名乗ってた………。こっちに来る道中で少しばかり手助けしてもらったんだ………。」
「『第四鉱山組合』?聞いた事がねぇなぁ。これは後で目を通しておくから、おめぇは休んでおけ。」
「あぁ………、そうさせて貰う………。」
ジャックは困惑の表情を浮かべながら、聞き覚えのない組織からの手紙を受け取る。
そしてトムスに休むように促し、彼もそれに従って俺とレオノーラさんと共に部屋から出て行った。