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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第一章 ウラッセア王国騒乱
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トリア領

馬車はトリア領を進み、村や町を通過する。

この世界に来る前に想像していた、いかにも異世界と言った雰囲気の景色が広がる。

木造建築の質素な村では家畜を飼い馴らす子供や畑仕事をする村人が牧歌的な空気を醸し出す。

レンガ造りの建物が並ぶ街では路肩で商人が食べ物や雑貨を売り、街の住人は多種多様な装いで歩いている。


「なんて言うか、平和だな。」

「そうだね。前線から離れているから、当然と言えば当然だけれど。」


道行く人々の表情は穏やかで、巡回している兵士こそいるが剣呑さは無い。

俺たちがいたワシャールの街は戦いの前線と言うこともあって、人々もどこか緊迫した雰囲気を醸し出している。


「それと豊かだな。経済的にって意味でもあるけど、街の人が着てる服のバリエーション的に色々な文化を取り入れてるように見える。」

「そうだね。恐らくトリア領はウラッセア王国でもトップクラスの豊かさだと思うよ。もっとも、ジョセフが反乱なんて起こさなければ王都マスカが一番だったんだけどね。そこも今では焼け野原、とまではいかなくとも荒廃しているらしいよ。」


街の人々は普通の洋服だけでなく、アジア圏や中東の人が着ていそうな服まで身に着けており、文化的にも豊かな感じがする。

トリア公がこの豊かな領地を守りたいと思う気持ちは理解出来たが、だからこそエウリア大陸の交易権は交渉材料にはならないのではないかと思う。

考えれば考えるほど、フリードの考えていることが分からなくなる。

そうして俺が頭をひねっているとフリードがおもむろに助言をする。


「ヒントは、そうだね。彼はあくまでも自領を、ひいては領民を大切にしているだけなのさ。」

「確かに財産を独り占めしないで領内を豊かにしている良い領主なんだろうけど、だからこそ自領の兵士を戦争に参加させるのを拒むんじゃないのか?」

「派兵に見合うメリットが無ければ、当然そうだろうね。」

「結局、俺には交易権がそのメリットになる理由が見えてこないんだよな………。」


これだけ領土を発展させて、領民を豊かにして………


「………エウリア大陸の交易品を民間に流通させる事がメリットになるって事か?」


街の人々の装いは各地との繋がりがあってこそだろう。

その繋がりが発展を支え、同時に領民の幸福度を高めている。

服飾品以外でも食料や雑貨なども多様な品を取り揃えていると考えると、エウリア大陸の品も自由に流通させられる事は民衆のメリットに成り得る。

そしてその民衆のメリットこそ、トリア公にとってもメリット足り得るのではないだろうか。


「その通り!よく答えまで辿り着けたね。」

「とは言ってもヒント無しじゃ答えまで辿り着けずに堂々巡りだったけどな。」

「それでも、だよ。これで安心して交渉に連れて行けるね。」

「は?」


フリードに褒められ、喜ばしい気持ちになったのもつかの間。

喜び以上に驚愕する考えを告げられたのだった。

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