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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第一章 ウラッセア王国騒乱
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昔々から始まる話で

「はい?」

「だから、何か面白い話をしてちょうだい!」


聞き間違いではなかった。

聞き間違いであってほしかった。

唐突な無茶振り。

いきなりそんな事を言われても難しいぞ。


「リョータ。ルセロア公は我々の大事なパトロンでね。もし不興を買って支援を打ち切られたら、『差し伸べる手』への援助も難しくなる。それにこの戦争への影響も甚大なものとなるだろうね。」

「ちょ、ちょっと待ってくれ!いきなり面白い話なんて言われても何を話せばいいんだよ!?」

「僕たちのいた世界の物語を話してあげれば喜ぶと思うよ。重ねて言うけれど、彼女は大事なパトロンだ。頼んだよ。」


頼んだよって………。

でもやるしかない。

これも自分たちの安全を守るために出来ることだし、フリードたちが戦争に負けたらタガミ先輩を探すどころではなくなってしまう。

物語と言っても、漫画やアニメみたいな作品だと伝わらないだろうし、幼い少女にも分かる物語と言えば………。


「昔々あるところに………。」


日本に生まれ育ったのなら誰もが聞いたことのある、昔々から始まる物語だ。

町並みは石造りで、ヨーロッパにありそうな建造物。

人々は多様な人種がいるが、それでも日本人のような見た目の人物は現地人では見かけない。

それならば、きっと昔話にも目新しさを、面白さを感じてくれるだろう。

半ば願望のような思いを込めて昔話を語る。

そして………


「めでたしめでたし。以上になります。」

「…………。」

「ルセロア公?」


語り終えるが反応がない。

もしかして気に入らなかったのだろうか。

それなら他の話を………


「すごい!すごいのだわ!こんなお話、初めて聞いたのだわ!」


と思ったが、どうやら杞憂だったようだ。

ルセロア公は目を輝かせ、感激している。

どうやら昔話をチョイスしたのは正解だったようだ。


「このお話のお礼はどうしようかしら………。お金はフリードたちにあげてるからこれ以上はダメだし、センソーの場所は遠いからお手伝いも遅れないのだわ………。」

「それでしたら一つお願いがあります。」

「何かしら?言ってみてちょうだい。」


ルセロア公が謝礼に何を渡すか悩んでいると、フリードは『お願いがある』と言う。

話をしたのは俺なんだけど………。

そんな俺の思いを知らずに、知っていたとしても気にしないであろう、フリードは要望を伝える。


「エウリア大陸の交易圏。その一部を貸与していただきたいのです。もしこの条件を了承頂けるのであれば、今後もリョータを連れてきて話をさせましょう。」

「え?」

「エウリアで交易がしたいのね?いいわよ!コーショーセーリツね!」

「え?」


いつの間にか俺の権利が切り売りされていた。

確かに助けになるのはジャックとの取り決めで決まっていることだけど、それにしたって事前に伝えてくれてもいいんじゃないか?

俺をこの会議に連れてきた真の意味は今回の交渉にあったんじゃないだろうか。

やはりフリードはくせ者だ。

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