会議の始まり
会議室に入るとそこには………
「ぶふぅ、久しいな。フリード。」
「えぇ、お久しぶりです。ハルゲンベン公。」
太り気味で禿かかった頭の四十代程度の男。
「随分と遅いご登場で。ホーエンゼレル公の名代として自覚が欠けているのでは?」
「これはこれは、アストン殿。ラディウム公はご壮健で?」
「主は今日に至るまで無病息災、何一つとして貴方に心配されるような問題ない。」
「それは何より。しかし後方でティータイムを楽しんでいるのならともかく、前線での指揮を執っていると多忙な物でして、あまり軽々と離れるべきでは無いのですよ。」
「……………。」
ヒョロっとした体形、七三分けのような髪型でメガネをかけた三十代程の男。
「そんな事より退屈だわ!いつになったらカイギが始まるの!」
見たところ十歳になっているかどうかも怪しい少女。
「ほっほっほ。もうすぐ始まるじゃろう。」
「それはさっきも聞いたのだわ!」
「ほっほ、そうじゃったかのぉ。」
白髪と長い白髭を蓄えた六十歳は超えていそうな男。
空席の具合から見るに、この後にも参加者が来場しそうだが、今現在この会議室にはこの面々だ。
誰も彼も、見るからに一癖も二癖もありそうだ。
ハルゲンベン公と呼ばれた男と白髪の老人はいかにも貴族と言った風貌だが、メガネの男と少女に関しては場違いと言った雰囲気を感じる。
特に後者に至っては会議に参加したとしても話の内容に付いてこられるようには見えない。
前者はまだ、会議に参加していても違和感はない。
恐らくはフリードと同じ名代なのだろうか。
「レアン公とルセロア公におかれましてはご機嫌麗しゅうございます。」
「うむ。君も元気そうじゃな。」
「えぇ、ご機嫌様。」
レアン公と呼ばれた老貴族とルセロア公と呼ばれた少女に恭しくお辞儀をするフリード。
とりあえず従者役である以上、俺もボーっと突っ立ってる訳にはいかないのでフリードに続いて頭を下げる。
先に会議室にいた面々との挨拶が終わり、しばらく待っていると五人の貴族が続々と入室して来る。
そして最後に入って来た貴族は上座に座り、
「皆、よく集まってくれた。リィン・ロズ・トリアの名の下に、第六回諸侯会議の開催をここに宣言する。」
一部の席が空いたまま、会議の開始を宣言した。
「おぉ、本日も威厳溢れる宣言ですな。」
「まさしく。トリア領を繁栄の象徴とした英傑の言葉は重みがある。」
「然り、然り。」
早速何の話をするのかと思えば、議長と思しき貴族を持て囃す話だった。
フリードよりも先に会議室にいたハルゲンベン公とレアン公はそれを静観し、アストンは苦々しい表情を、ルセロア公は退屈そうな表情をしていた。
一方で太鼓持ちをしているのは、主に後から入って来た貴族たちだった。
「良いかい、リョータ。この会議の有様をよく見ておいて欲しいんだ。」
「え?わ、分かった。」
貴族たちの無意味なやり取りを尻目に、フリードは小さな声で俺に話しかける。
正直な所、俺が連れて来られた真意がまだ分からないが、それでも会議の話はしっかりと聞いておくとしよう。