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異世界転生後輩  作者: 一之三頼
第一章 ウラッセア王国騒乱
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授業と必要性

「それじゃあ早速授業を始めるぞ。まずは計算の初歩的な所からだけど…………」


先程感じた頭痛は既に無く、授業に取り掛かる。

誰がどの程度、計算を理解しているかは分からないが、そもそも教師経験などあるはずも無いので、家庭教師のように個人個人に合わせた授業よりも、学校の先生がやっていたような一対多の形式で授業を進めていく。




「頭が痛くなってきそうだ………。そもそもこんな計算、どう役に立つんだ?普段料理を作る時に計算なんてしないぞ………。」

「あー、確かになー。畑弄ってる時に計算とかしないしなー。」

「うーん、でもいつか役に立つ時が来るかも知れませんよ?」


授業を進め、休憩時間に入ると仲間たちは各々雑談に興じる。

その中で計算が何の役に立つのか、と疑問を呈する声が聞こえて来た。

確かに俺も元居た世界では勉強はあまり好きじゃないし、得意でもなかったが、この世界に来て知識の、勉強の、成長する事の重要性を痛感させられた。


「例えばさ、ジャックが忙しくて手が回らない仕事があったとするだろ?その時、自分以外に誰も動ける奴がいなかったら困るだろうし、ジャックの手助けが出来たら感謝されて、感謝されると嬉しいだろ?」

「それもそうだなー。」

「ジャックの奴、たまに無理したりするし、そういう時はオレたちが支えてやんないといけないからな。」


二人の勉強に対する抵抗感を和らげる為に、例え話で興味を惹く。

知識を得る事で、何らかの利に繋がる事が分かれば、多少は抵抗感も和らぐだろう。


「それに料理をするときだって食材が必要になるだろ?」

「そりゃそうだ。何も使わないで料理なんて作れやしないぞ。」

「1日にどの食材どれくらいが必要か分かれば、食材補充の買い出しの時に多く買い過ぎたり、逆に買って来てから足りなかったって事が無くなるだろうから楽が出来るぞ。」

「そりゃ良いな。そう考えるとちっとはやる気が出るぞ。」


厨房担当のリックには自身の仕事に繋がるように伝えることで勉強に対する抵抗を減らし、


「畑だって面積、広さに対してどれだけ収穫出来るか分かれば、ジャックに報告する時に楽が出来るはずだ。」

「あー、なるほどなー。楽が出来るのは良いなー。」


畑仕事を担当しているノーランにも仕事と結び付く利を説いて納得させる。

二人とも俺の話を聞いて理解を示してくれたようで、嬉しい限りだ。


「それにちょっと難しい話をすると、誰かと話したり、情報交換をしたり、交渉したりする時に、共通の認識だったり前提となる知識があった方が騙されたりする可能性が減るし、スムーズに話が進みやすいんだ。俺はこの世界に来てすぐの、何も知らなかった時、騙されて身ぐるみ剥がれてさ。」

「酷い奴もいたもんだ。」

「他人を騙すことは悪徳ですが、騙さなくては生きていけない世の中であることは悲しいですね………。」

「でもよく無事にジャックに拾われたなー。」


俺の話を聞いたリックは憤り、アニエスは悲しげな表情を浮かべ、ノーランは感心している。

まぁ実際、あの時の商人にまた出会う事があったら文句の一つでも言ってやりたいが、それが巡り巡って不幸中の幸いに繋がったと言う事実も否めない。


「その後もこの世界の事を教えてくれる人がいなかったから、どこに行っても煙たがられて、タガミ先輩って言う、この世界の知識がある人に助けてもらわなかったらマジで野垂れ死んでたか、誰かに利用されるだけされて死んでたかも知れないんだ。もしかしたら、俺みたいにこの世界について学ぶことが出来なくて、誰にも助けてもらえずに死んじゃった奴もいるかも知れない。だから誰かに助けてもらうにしても、誰かを助けるにしても、知識があるに越したことはないんじゃないか?」

「ま、ジャックにもしっかり勉強しろって言われてるし、リョータの話を聞いて手を抜こうとは思わないぞ。」

「そーだなー。騙されるのも身ぐるみ剥がれるのも嫌だし、頑張るかー。」


知識の必要性を説くことに成功し、やる気に陰りが見えていた仲間は気力を取り戻したようだ。

やる気が無い状態では頭に入る物も入らないだろうし、この調子で上手い事この状態を維持して授業を進めていきたいな。


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