違和感
朝の訓練が終わり、皆で食事を摂る。
しかしジャックは仕事から抜け出して見に来ていたのがバレ、
『ジャック、ここにいたんですか。まだ書類が残っていますよ。』
『げ、レオノーラ!いや、息抜きだよ、息抜き!リョータの調子がどんなもんか見に来てただけだ!』
『そうですか。ではそろそろ仕事に戻って下さい。』
『え、そろそろ飯の時間だぜ?』
『仕事の片手間で食べられる料理を持って行くので、食べながら仕事の続きを。』
『いや少しくらい良いじゃねぇか………。』
『ジャック?』
『わぁってるよ!』
レオノーラに連行された。
さっきまで良い話をしていた分、雰囲気がぶち壊しだし、なんとも締まらない姿だな。
また、一緒に俺の様子を見ていたアニエスにも、レオノーラは『仕事をしていないのでは?』と言いたげな視線と共に問い詰めるが、
『それにアニエス。貴方には洗濯を任せていたはずですよね?まさか………。』
『それならさっき終わりましたよ!教会でも毎日やっていたので慣れてますから!』
『そうでしたか………。それなら良いんです。』
どうやらこちらは問題なかったようだ。
居候はしっかり仕事をこなして、リーダーは仕事をサボっていたと考えると………。
うん、まぁ、深く考える必要は無いか。
ジャックは見た目的にも、本人の自覚的にも、机に向き合って仕事をするのは向いていないみたいだし。
「さぁて、飯も食った事だし、これからは仕事の時間だ。」
「確か俺は他のメンバーに勉強を教えれば良いんだよな?」
「あぁ、こっちの部屋で頼む。基本的な読み書きや計算を教えてやってくれ。」
ソーオウに案内されて、教室として扱われている部屋に連れて行かれる。
今まで他人に勉強を教えるなんて事をした記憶は無いから、若干不安があるが、出来る限り頑張ろう。
そう思って教室の扉を開けると、
「新入りが教えてくれるのか。」
「よろしくー。」
「よろしくお願いします!」
「………アニー?」
部屋の中にいた数人に声を掛けられ、最後に聞き覚えのある声で元気良く挨拶される。
何でいるんだよ。
「教会にいた事は聖典に載ってる文字の読み方は教えてもらいましたけど、それ以外はさっぱりです!だから私にも勉強を教えて下さい!」
「そういう事だったのか、分かった。それじゃあ早速………」
待てよ、教えると言っても読み書き計算で文字を書いて教える時、どうやって教える?
俺が教えられるのは日本語だし、何故か日本語で喋っても話が通じる。
ジャガイモって言う言葉だって日本語なのに、フリードたちは違和感なく受け入れている。
何かおかしくないか?
そもそも、どうして今までそんな単純な事に気が付かなかったんだ?
「っ!」
「リョータさん?どうかしましたか?」
「いや、何でもない…………。」
一瞬、頭痛が走る。
今、一体何を考えていたんだ?
思い出せない…………。
まぁ、思い出せない程度の事なら、別に大したことじゃないだろう。
そんな事よりも、気を取り直して授業を始めるとしよう。