食堂で
拠点の入り口からジャックさんに引き連れられて食堂へと向かう。
「お、ジャック。遅かったな。」
「先に食ってたぞ。」
「おう、ちょっとな。」
「それよりも今朝畑で採れた野菜を使ってるんだ。食ってみてくれ。」
「なぁ、リエフでの土産話とかは無いのか?」
「あ、フリード!ジャガイモはもう十分だから、今回は受け取らないよ!」
「そうだね。芽が出たジャガイモをワーズギーが捨てている所に出くわしてね。非常に残念だけれど。」
「し、仕方ねぇだろ?それにやっぱり毎食蒸かし芋は食う気が無くなるんだよ。」
食堂へ到着すると、それに気付いた仲間たちがジャックを歓迎する。
相変わらずの人気ぶりだ。
それにこの世界の出身ではない事や協力している事もあり、フリードも仲間たちに受け入れられているようだ。
「よう、新入り。ボーっと突っ立ってねぇで、ほら。座れよ。」
その様子を見ていると俺も仲間に話しかけられる。
「あぁ、分かった。俺はユウキリョウタ。よろしく。」
「おう、オレはソーオウ。よろしくな。ジャックやレオノーラから聞いてるぜ。」
「何を?」
「ここの連中は基本的に学がねぇからな。お前、読み書き計算が出来るんだよな?つまりは教える事がここでのお前の役割って事だ。」
「役割………。」
「働かねぇ奴に出す飯はねぇってこった。他に何か得意な事とかあんのか?」
ソーオウと名乗った男は俺の事をジャックとレオノーラから話を聞いていると語る。
その話の内容とは俺が基本的な教育を受けている事だった。
確かにかつて聞いた話では『差し伸べる手』の仲間たちは読み書きや計算が出来ない人員が多いらしい。
そうなると俺の役割は教育係と言われても納得が出来る。
でも特技と言えるような特技なんて無いし、強いて言うなら………。
「得意という訳じゃないけど、ジャガイモを蒸かす以外で食べる方法を知ってる、くらいか。」
「はは、なんだそれ。まぁ飽きる程に食ってるし、ある意味ありがてぇっちゃありがてぇけどな。」
「新入り!飯は食ってるか?」
「リョータ!お前、シンディと同じところから来たんだって?いいなぁ、オレも同じ村の奴と会えねぇかなぁ。」
「それよりリョータが育った所ってどんな所なの?シンディの話は難しくってアタシには訳わかんなくてさ!」
「おいおい、リック、ボルン、マーヤ。そんなに話しかけてたらユーキが飯を食べられないだろう。」
「ははは、賑やかなんだな。」
ソーオウと話をしていると、仲間たちから次々と話しかけられる。
とは言え、聖徳太子でもないので全てを聞き取ることは難しい。
ソーオウは仲間たちを嗜め、落ち着かせる。
何と言うか、どんな人がいるのか少し不安だったが、和気あいあいとした雰囲気で安心できる。
「おぉ、なんたって今日はジャックが戻って来たからな。」
「今日は少しくらい贅沢したって良いだろって事で普段よりも飯も豪華なんだよ。」
なるほど、確かにリーダーが戻って来たなら祝いたくなる気持ちもあるだろう。
こんな世界だからこそ、生きて帰って来れる事を喜ぶのも納得できる。
そう言えば先程からアニエスの姿を見ないが、どうしたのだろうか。
流石に部外者と言う事もあり、端の方でジッとしていたりするのだろうか。
そう思い、食堂を見渡すと………。
「どうだ?美味いか、アニー?」
「はい!とっても!」
「そうかそうか!良い食いっぷりだ!よしよし、もっと食えよ!」
「ありがとうございます!あ、リョータさん!それ、食べないなら貰っても良いですか?」
「………あぁ、うん。良いよ。」
「ありがとうございます!」
普通に馴染んでいた。
なんなら俺の手元にある料理まで要求してきた。
教会の一件もあり、大丈夫かと僅かながらも心配していたが、その必要はなかったようだ。
そう呆れながら、俺は手元の料理を差し出すのであった。